ビー玉

【連作短歌】神の箱庭

好きだった歌のたそがれ音符ごと黒板消しで消したい夏だ

敵意よりやさしく嫉妬よりぬるいトマトはすこし熟れすぎている

駆けのぼるほど腐ってゆく人間もかつて信じた夢の果実も

売文屋、かなりや殺しの罪隠し吹けば飛ぶよな言の葉の檻

生き延びろ。闇に愛された徴(しるし)は前髪で匿して駆け抜けろ

誰もみな目を合わさずにビー玉を弾いて跳ばす神の箱庭

なまなまと爪痕いまも癒えぬまま黒塗りにされてゆく文字列(テクスト)

水没の刹那ひそかに愛された記憶を抱いて眠れ、鉄塔


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