2015年頃の短歌
詩をくれた君に常套句(クリシェ)を返すしかできないことが悔しくて今
風に薫る言葉を摘んで花束にして君に捧げる愛の歌
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風の筆が雲の模様を描き出す空のキャンバスどこまでも青
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ネット炎上。
正しさを求め続ける蟲たちが集う電脳異端審問
オクターブ声を落として話したい 正義について語るときには
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溜め息がきこえる距離でそれぞれの宇宙に繋がる液晶の窓
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滾る血を星の冷気で包みこみ戦いに発つ冬のオリオン
近づいては離れ決して交わらないふたり二重連星のシリウス
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真っ白なお皿の上に絡まった思考を一つまた一つ置く
強力な磁石が支配する都市は避難所(アジール)なしでは息もできない
高周波の恋をしていた恍惚と絶望が弧を描いて墜ちる
君がくれた言葉にひそむ柔らかな棘の痛みを決して忘れない
冬の陽の光が斬りつけた傷をぬばたまの夜はやさしく包む
群青(インディゴ)の夜に降る雨 遠くから星と赦しの歌がきこえる
青く固い壁の向こうに君はいた 君を通して世界が視えた
みぎひだり、上と下とに分かたれた地球はもっと丸くなるべき
昨日まで君が座っていた場所に残る爪痕 星のない空
粉雪は祝福のしるし ぼくたちが進む未来を照らしてくれる
さよならの言葉は空に 君からの手紙は星のポストに還す
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ひたすら生春巻を包む 雨に散る花は一度も見なかった春
ブレーキをかけて路傍のたんぽぽが送る周波に耳を合わせて
近ごろは極彩色の夢ばかり見ているせいか日はモノクローム
ウイルスに微量の狂気混入中パンデミックは赫いカーニヴァル
遠ざかるほど鮮やかによみがえる記憶の種を愛と呼びたい
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