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コンテクストデザイン

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コンテクストとデザインについて考えています。まだ途中ですが、これはその断片です。
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Message Soap, in timeの強い文脈、弱い文脈

Message Soap, in timeの強い文脈、弱い文脈

「強い文脈、弱い文脈」の枠組みを通して、前回は一冊だけの本屋、森岡書店のことを考えた。

文脈の強弱はあくまで相対的なものだ。次の例として、向田麻衣さんという人物の活動を取り上げ、その文脈の強弱を(私の解釈や想像も少し交えて)考える。なお別項にあるように、Takramは向田麻衣さん率いるLalitpurとともに「Message Soap, in time」というプロダクトを手がけている。石けんのな

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森岡書店の「強い文脈」、「弱い文脈」

森岡書店の「強い文脈」、「弱い文脈」

■森岡書店のこと

森岡書店 銀座店は、一冊だけの本を扱う、一室だけの小さな書店だ。店主は森岡督行さん。Takramもいろいろな形で関わっているが、お店のオープンにあたり、まずロゴデザインとブランドスローガンを制作した。

森岡書店は、一冊だけの書店です。
一冊だからこそ、解釈はより深く。
森岡書店は、一室の小さな書店です。
一室だからこそ、対話はより密に。
一冊、一室。
森岡書店。

森岡書店に

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コンテクストデザインとは

コンテクストデザインとは

コンテクストデザインとは、それに触れた一人ひとりからそれぞれの「ものがたり」が生まれるような「ものづくり」の取り組みや現象を指す。換言するならば、読み手の主体的な関わりと多義的な解釈が表出することを、書き手が意図した創作活動だ。

もともと現代的なデザインは産業革命以降の大量生産・大量消費を背景に成長してきた。それは、特定の使い手を一意に想定し、特定の問題を解決するためのものだ。

デザインはふつ

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強い文脈、弱い文脈

強い文脈、弱い文脈

ハムレットに登場する有名な台詞 "To be or not to be, that is the question.” は時代によって色々の訳され方をしている。

「世に在る、在らぬ、それが疑問じゃ」としたのは坪内逍遥、1909年。

「このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ」は小田島雄志の訳で、1972年。

「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」これは2003年の河合祥一郎訳。

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コンテント、コンテクスト

コンテント、コンテクスト

パブロ・ピカソの『盲人の朝食』という絵画がある。頬のこけた盲目の男性がテーブルにつき、パンと水だけを摂っている。部屋も男性もその服も、すべて青みがかった重い空気をまとう。この絵を見て、ある美術評論家は「青の時代に描かれた一作品」と解説し、ある小学生はそれを「ちょっと不気味だ、お隣の井上さんに似てる」と思うかもしれない。ある通りすがりの鑑賞者は例えば「画家が盲人を描くということは、絵画に伴う『見る』

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実体、接線(の彫刻)

実体、接線(の彫刻)

以下のテクストは、あるひとつの「もの」について記述している。これはなにか。

それは底面はもつけれど頂面をもたない一個の円筒状をしていることが多い。

それは直立している凹みである。重力の中心へと閉じている限定された空間である。

それはある一定量の液体を拡散させることなく地球の引力圏内に保持し得る。

その内部に空気のみが充満しているとは、我々はそれを空と呼ぶのだが、その場合でも

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文字、文字の影

文字、文字の影

銀河鉄道の夜宮沢賢治の童話『銀河鉄道の夜』。星祭の夜にジョバンニとカムパネルラが鉄道に乗り、いろいろの場所で空の星々を眺める。作中には、たくさんの地名、星座の名前が登場する。星々の南中時刻を組み合わせて分析すると、描かれているのはちょうど「8月13日」の夜であるとわかるそうだ。しかも8月13日の夜といえば、ペルセウス座大流星群。星降る夜、まさに星祭。

この童話の中には多くの星や星座が登場するが、

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