最近の記事
『アナロジア AIの次に来るもの』 ジョージ・ダイソン(著)服部桂(監修)橋本大也(翻訳) 著者の個人史・家族史語りがそのまま「オッペンハイマー」や「三体」からIT革命につながるびっくり本でした。でもアナログの話は??でした。
『アナロジア AIの次に来るもの』 2023/5/20ジョージ・ダイソン (著), George Dyson (著), 服部 桂 (監修), 橋本 大也 (翻訳) Amazon内容紹介 ここから僕の感想 僕にデヴィッド・グレーバーを教えてくれた広告業界きっての教養人、月村さんがFacebook投稿で紹介していた本。「かなり変わった本だけれど、原さんがどう読むか感想を聞きたい」というような形で薦められた本である。月村さんは僕より一回りくらい若いと思う。 本当に変わった内
将棋の名人戦七番勝負第一戦、藤井聡太名人対豊島將之九段。ひさびさに炸裂した藤井名人の神の一手。それをAbeme解説、佐藤康光九段・元将棋連盟会長・SMAAAASH級の会心の解説。さすが怪鳥。
将棋の名人戦七番勝負第一戦、藤井聡太名人対豊島將之九段。 いや新年度早々、すさまじいドラマチックな名局。 ひさびさに炸裂した、藤井名人の神の一手。(ここのところの藤井名人、強すぎていつの間にか寄りきって勝っていることが多くて、劇的な神の一手、というのが無かった気がする。というか、神の一手誕生には解説やリアクション聞き手の方の絶妙の貢献もないと、私のような初級者視聴者には「神の一手」として認識されにくいのである。そういうドラマからしばらくご無沙汰だったのである。)それをA
マガジン
記事
『オリヴィエ・ベカイユの死/呪われた家~ゾラ傑作短篇集』~ (光文社古典新訳文庫) 自然主義の自然は、ほんとは「自然科学」のことで、ゾラの場合特に「遺伝学」にもとづいて、生物学的に決定されちゃう人間を描くものなんだそうだ。知らなかったな。
オリヴィエ・ベカイユの死/呪われた家~ゾラ傑作短篇集~ (光文社古典新訳文庫) Kindle版ゾラ (著), 國分 俊宏 (翻訳) Amazon内容紹介本を読んだ経緯 ゾラについては「ゾラ=居酒屋=自然主義」くらいの受験用文学史知識しかなくて、全く読んだこともなかったし、興味も無かったのである。 話は大脱線するが、僕にとって「ゾラ」といえば、20年前くらいのサッカー、ロンドンの強豪チェルシーにいた背の小さいイタリア人の名手のことだし(当時はイタリアセリエAが世界一のリ
『死の講義』橋爪 大三郎 (著) 宗教について死について「中学生にも分かるように」しかし根源的網羅的に知識を整理しつつ、「自分の死」についてどう考えたらいいのか「自分で決める」ためのガイドをしてくれるものすごい本でした。国民的必読書だぞ。
『死の講義』 2020/9/30 橋爪 大三郎 (著) Amazon内容紹介Amazonにはいろんな人の推薦文もあるけど、僕もそう思ったのだけ引用する。 この人、本の帯では〈語彙が消失するほどよかった。〉とも書いているが、同感である。 ここから僕の感想 というか読んだきっかけというのが。先日、さとなおくん (佐藤 尚之くん 広告業界関係じゃない読者の方に紹介すると、 『ファンベース』などコミュニケーション論で有名なコミュニケーション・ディレクターで、そのほかにも若い頃か
『【改訂完全版】アウシュヴィッツは終わらない これが人間か』 (朝日選書) プリーモ・レーヴィ (著)ふ 「アウシュヴィッツは終わらない」という副題は、つまり、どういうことなのかについて考えた。
【改訂完全版】アウシュヴィッツは終わらない 『これが人間か』 (朝日選書) 2017/10/10プリーモ・レーヴィ (著) Amazon内容紹介ここから僕の感想 先日感想を書いたレーヴィの短編集『周期律』は、強制収容所体験についてはごく一部だった。今回読んだのは、収容所体験そのものを書いた、レーヴィの代表作、出世作である。 以前、いろいろなnoteで繰り返し書いてきたが、基本的に僕はホロコーストものの本や映画が基本的に苦手である。究極の絶対悪が存在するときに、それと対
「光る君へ (12) 思いの果て」について「純文学は性的表現の最後の砦」視点から感想文を書いてみる。なぜか村上春樹『ノルウェイの森』と、トルコのノーベル賞作家オルハン・パムクについて論じています。
小説はまだ書く準備は整わないが、とりあえず、性的なことを「お下劣」とか「不適切」とか言うのはやめることにする。そうではない。性的表現に真正面から取り組むのが純文学の大切な役割なのである。その点で今季の大河ドラマ『光る君へ』と、TBS金曜ドラマ『不適切にもほどがある』は実に純文学的な傑作ドラマなのである。 僕の性的表現に関するスタンスを「純文学は性的表現の最後の砦」と呼ぶことにした。という決意表明文でもある。 とはいえ、真面目ばかりが純文学ではないのである。性欲の前に
『不適切にもほどがある』と『光る君へ』の感想を書いているうちに、noteに性的テーマで(有料で)小説を書こうかな、と思いついた。そう考えた経緯。(Facebook投稿転載に、一部追記)
突然ですが、noteに小説を書くことにしました。うん。しようかなあ。しようと思う。 今までnoteは無料公開だけで書いてきましたが、小説は有料にすることにしようと思います。 いや、自分の書くものに有料の価値があると思っているからではありません。価値もないだろうし、書くものは実は小説でもなんでもなく、ただ、内容が「性」に深く踏み込んたものになるので、「これは小説で、有料であえて読もうというひとだけ読んでね」という構えにした方がいいなあ、と思ったということなんですね。きっと
『周期律』プリーモ・レーヴィ (著), 竹山 博英 (翻訳) 枕詞として「アウシュビッツ収容所の体験を書いた」と言われるレーヴィですが、本作では化学を志し学んだ学生時代から化学者として様々な仕事をして戦中、戦後を生き抜いたその半生を、元素名をタイトルとした21の短編で多角的に描いたもの。それもありだがそれだけじゃない。
『周期律』 2017/10/19 プリーモ レーヴィ (著), 竹山 博英 (翻訳) Amazon内容紹介本の帯 ここから僕の感想「ホロコースト、アウシュビッツ収容所を生き残った、その体験を書いた」というのがプリモ・レーヴィの枕詞のように使われちゃうので、全篇、そういう本なのか、と身構えると全然そうではありません。一部、そのことは人生の一部として書かれていますが、それ以外、それ以上の、人生の全体が表現されています。 元素名をタイトルとする21の短編連作、全体として時系
『不適切にもほどがある』キヨシの心の叫びと、大河ドラマ『光る君へ』吉高と柄本佑のラブシーン、いろいろ考えながら、スカパーで昔のテレビドラマを見たという話。Facebook投稿から転載。
年齢とともにバカになりつつあるということを昨日、呟いたのですが、「バカになっちゃうよ」というふりをして不適切な投稿をこれから書きます。不適切な文章は読みたくない人はここで読むのをやめましょう。やめてください。読んでから怒らないでください。読んでから「不適切投稿」としてFacebook当局に通報したりしないでください。やめてくださいよ。本当にお願いします。純粋に知的興味から調べ物をした、という投稿ですから。R18ほどではないにしろ、R15くらいの感じの投稿です。っていう投稿っ
『歴史のなかの大地動乱――奈良・平安の地震と天皇』 (岩波新書 2012/8/22 保立 道久 (著) 岩波新書さーん、版元品切れぽいですよ。名著なので増刷お願いします。311のこの日に、ぜひ。
『歴史のなかの大地動乱――奈良・平安の地震と天皇』 (岩波新書) 新書 – 2012/8/22 保立 道久 (著) Amazon内容紹介ここから僕の感想 東北でとても大きな地震と津波で大変大きな被害と犠牲が出た後に当時の天皇が出した詔勅の後半部分。現代語訳。 「この責任はもっぱら私にある」という部分だけ、現代人には分かりにくいですが、それ以外の部分は、現代の首相が大地震と津波の直後に出した声明だ、と言われても、全く違和感なく納得できる内容だと感じました。 これ、平安
『ガザとは何か~パレスチナを知るための緊急講義』 岡 真理 (著)を、NHK「映像の世紀バタフライエフェクト イスラエル」への批判をきっかけに読んで考えたこと。
『ガザとは何か~パレスチナを知るための緊急講義』 単行本– 2023/12/24 岡 真理 (著) Amazon内容紹介ここから僕の感想 というか、読んだきっかけは、今週月曜(2024年3月4日)のNHK「映像の世紀バタフライエフェクト イスラエル」を観た後、ツイッター上に「イスラエル寄りのプロパガンダだ。NHKに抗議した」という怒りの声を上げる投稿がけっこう見られ、(僕がそうは思わなかった、ということは後で詳しく論じていく)、そうした、番組に対して怒っている人たちが複数、
『死なないための暴力論 』森 元斎 (著) アナキストにしてデヴィッド・グレーバー大好きな著者による「アナキズムと暴力」論でした。グレーバー著作背後に常に感じられるアナキズムをどう考えるか、その補助線を頭の中に引くのに役に立ちました、僕にとっては
『死なないための暴力論 』(インターナショナル新書) 2024/2/7 森 元斎 (著) Amazon内容紹介ここから僕の感想。 ちょっと関係ない話からスタート。映画「スターウォーズ」の世界ではジェダイの騎士たちが使う力は「フォース」っていうじゃん。あれ、暴力「バイオレンス」とは違って、正義の力だっていうことなんだと、映画製作者は主張したいんだなと理解していたのだな、僕。 ジェダイは銀河共和国の平和維持者で、その力はフォース何だと。「フォース」は暴力じゃあないと。そういえば
『有閑階級の理論』ソースタイン・ヴェブレン (著)村井章子(訳)ポストモダンな消費論の先駆けの本かと思ってまあいいかと読んでいなかったのだが全然違った。デヴィッド・グレーバー的アプローチの100年先駆けであり、平安貴族大河『光る君へ』理解にも有益な凄い本でした。
『有閑階級の理論』[新版] (ちくま学芸文庫 ウ 9-2) 文庫 – 2016/11/9 ソースタイン・ヴェブレン (著), 村井 章子 (翻訳) Amazon内容紹介このちくま学芸文庫版のAmazonページには内容紹介がないので、講談社学術文庫版 長いけれど正確な要約なので。 ここから僕の感想 タイトルと装丁写真からは、なんかポストモダン消費論を先駆けたような、ブランドとかなんとかそういうことと関係ありそうな、「みせびらかし消費」みたいなことを先駆的に書いた、そういう