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Sonic Youthについて語ってみるよ③

 前々回、Sonic Youthの活動期間を下記の6つに分けてみた。

①黎明期:1st EPから『Bad Moon Rising』
②確立期:Steve Shelley加入から『Daydream Nation』
③オルタナティブ期:メジャー移籍、オルタナブーム
④メジャーでの実験期
⑤Jim O'Rourke参加、加入による転換期
⑥Jim O'Rourke脱退~Matador移籍~活動停止

 というわけで、今回は③の時期について。『Goo』と『Dirty』について語ってみます。この時期は『Daydream Nation』で高い評価を得たバンドがメジャーレーベルと契約し、作品をリリースしていくことになる。特に有名なエピソードとしては、Nirvanaがメジャーと契約する際にSonic Youthがいるという理由でGeffinを選んだことかな。また、Nirvana『Nevermind』のヒット以降、多くのインディバンドがメジャーと契約することになるが、それを間接的に牽引したのがSonic Youthと言えると思う。


Goo

 1990年リリース、初のメジャーからの作品。ジャケットはBlack Flagのジャケット絵を手掛けたRaymond Pettibonによるもの。このジャケットも非常に有名で、色々なところでオマージュ的に使用されていたりする。前作『Daydream Nation』からさらにポップになり、非常に聴きやすくなった。とは言え、Sonic Youthらしさは健在で、やはり変則チューニングを使用し、曲は聴きやすくも随所に実験的な要素を入れ込んでいる。冒頭の『Dirty Boots』から疾走感溢れる曲で、Sonic Youth独特のノイジーさも併せ持っている。『Tunic (Song for Karen)』はCarpentersのKaren Carpenterに捧げられた曲。ライブでもよく演奏されていた『Kool Thing』ではPublic EnemyのChuck Dが参加し、Kimのヴォーカルとともに曲を盛り上げている。個人的にこのアルバムで一番好きな曲が『Mote』。Leeのヴォーカル曲で、イントロから既にかっこいいという名曲。Leeの歌声のバックではギターが荒れ狂っていて、それをベースとドラムがしっかりと支えている。前半はLeeのヴォーカルがメインだけど、それが後半一気にノイジーなアンサンブルへと一変するという展開もまたかっこいい。今聴くと、このような音はEarthなどにも影響を与えていたのではないだろうか、とも思う。他にも『My Friend Goo』のどこかコミカルな感じのするKimのヴォーカルや『Mildred Pierce』の徐々に盛り上がって最後にThurstonの絶叫で終わったり、Kimのヴォーカルがかっこいい『Cinderella's Big Score』など、聴きどころもたくさんある。
 メジャーデビュー作としては完璧だったと思うけど、後にメンバーは『Goo』を気に入っていない、と語っていたらしい。今検索してもそういう記事は出て来ないので、実際はどうなのか分からないけど。でも、メジャーに行っても自分たちのスタンスを崩さなかったという点が後に大きな影響を与えることになったと思う。

Dirty

 1992年リリース作品。この時期は既にNirvanaのヒットでオルタナティブムーブメント真っ最中だったはず(リアルタイム世代ではないので、実際はどうだったか知りません……)。このアルバムでまず述べるべきことは、プロデューサーがButch Vig、ミックスを担当したのがAndy Wallaceという、Nirvana『Nevermind』と同じ人選だったということ。さらに、メジャー2作目で『Goo』に比べると余裕もあったのか、音そのもののクオリティも上がっていることが挙げられる。後にメンバーとなるJim O'Rourkeは『Dirty』を「最もスタジオを上手く使った作品」と評してるとか。
 冒頭の『100%』からいきなりノイジーなギターで始まるという、遠慮のなさ。続く『Swimsuit Issue』もイントロからヘヴィに各楽器が鳴り響き、吐き捨てるかのようにKimのヴォーカルが炸裂する。『Theresa's Sound-World』はちょっと落ち着くが、その後の『Drunken Butterfly』ではまたもやイントロから飛ばしまくる。Leeのヴォーカル曲『Wish Fulfillment』はまたもやかっこいい。『Sugar Kane』や『Youth Against Fascism』はシングル曲にもなっている。特に後者ではFugaziのIan MacKayeが参加しているのもポイントかな。ずっと同じリズム、そして「It's the song I hate」と繰り返し歌うThurstonのヴォーカルが印象的。また『Chapel Hill』はかなりストレートでポップな曲だったり。全ての曲を取り上げると長くなるのでしないけど、全体的にかなり音圧が強く、曲も当時のオルタナティブブームに沿った(と言っても勿論Sonic Youth流で、だけど)、かなり聴きやすいアルバムとなっている。演奏でノイズを聴かせたり、間奏でギターが荒れ狂ったり、これまでのSonic Youthの要素は勿論あるけど、ここまでリリースしたアルバムで一番メインストリームに寄り添ったものではないか、と思う。

 この『Goo』と『Dirty』は聴きやすいし、彼らの代表作でもあるので、最初に聴くならこの2枚のどちらかがおすすめかな。でも逆に、この2枚は彼らのアルバムの中では「異質」と言えるのかも。この2枚でこういうスタイルはもうやり尽くしたのか、次作では大きく方向転換する。それについてはまた次回。


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