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Sonic Youthについて語ってみるよ②

 前回、Sonic Youthの活動期間を下記の6つに分けてみた。

①黎明期:1st EPから『Bad Moon Rising』
②確立期:Steve Shelley加入から『Daydream Nation』
③オルタナティブ期:メジャー移籍、オルタナブーム
④メジャーでの実験期
⑤Jim O'Rourke参加、加入による転換期
⑥Jim O'Rourke脱退~Matador移籍~活動停止

 前回は①の初期3作品について触れてみたんだけど、今回は②の期間に発表されたアルバム4作品を取り上げていこうと思う。この時期の作品はどれも代表作と言えるものばかり。


EVOL

 1986年リリース作品。本作よりSteve Shelleyが加入し、この4人でのラインナップが15年程続くことになる。Steveの加入がバンドに大きな変化を齎したことは間違いなく、本作から非常に聴きやすいナンバーも増えていく。1曲目『Tom Violence』はTelevisionのTom Verlaineをもじったもので、ライブでもよく演奏されていた。Televisionの曲とは似ても似つかない、ギターが特徴的な少しヘヴィな曲。続く2曲目『Shadow of a Doubt』もよくライブで演奏されていた、Kimによる静かな曲。そして3曲目『Starpower』もKimによるヴォーカル曲であるが、非常にポップな曲に仕上がっている。全体的に言えるのは、前作『Bad Moon Rising』と比較して非常に聴きやすくなっていること。SSTに移籍したことも関係しているのか、音も非常に良くなっている。特にギターの音がはっきりしていることで、硬質な印象を与えてくる。本作で特に有名な曲は『Expressway to Yr. Skull』かな。何でもNeil Youngもお気に入りというこの曲は7分強もあり、凄くドラマチックな展開をする曲。演奏も静かな立ち上がりとThurstonの穏やかなヴォーカルから中盤の混沌としたパート、そこから繊細なパートへと移行していく。この静から動への流れはその後のMogwaiなど、ポストロックバンドへも非常に大きな影響を与えたのではないかと思う。そういった意味でも必聴の1曲。

Sister

 1987年リリース作品。前作同様SSTからのリリース。前作『EVOL』をさらに聴きやすくした、と言えるような内容。ポストパンク、ノー・ウェイブ要素は『EVOL』よりも薄くなり、今で言うオルタナティブロックに近くなっていく。と言うよりも、ポストパンク、ノー・ウェイブ的な要素とロックの要素が上手く融合している。『Schizophrenia』は序盤は穏やかだけど、途中からノイジーな展開へと変化していく。『(I Got A) Catholic Block』はこれまでになかったような疾走感溢れる激しい曲で、ギターリフが非常にかっこいい。ライブでもよく演奏されていた。『Stereo Sanctity』やLeeのヴォーカル曲『Pipeline / Kill Time』などもストレートなロックナンバーと言える曲で、勿論Sonic Youthなのでそれだけに留まらない要素を含んでいるけど、やはりこの頃からバンドサウンドが固まってきたのかな、と感じる。変則チューニングによる不協和音と、ロックサウンドの融合。一曲の中で色んな表情を見せるようになっているし、収録曲もバラエティに富んでいる。終盤の『Kotton Crown』もまた代表曲であり、ノイジーなギターが聴かせながらも優しさを感じる。最後の曲『White Kross』もまたヘヴィで速い曲。非常にかっこいい。ちなみにこの曲は近年になってNapalm Deathにカヴァーされるという、信じられないことが起きました。本家より演奏が上手いとか言われてました(笑)。

The Whitey Album

 1988年リリース作品。このアルバムはCiccone Youth名義でのリリース。CicconeはMadonnaの本名であり、ジャケットもMadonnaのアップ写真が使われている。変名でのリリースということで、Sonic Youthとは違った曲を聴くことが出来る。Mike WattやJ Mascisも参加。インダストリアルな1曲目『Needle-Gun』に始まり、2曲目『(Silence)』は約1分の無音の曲。これはJohn Cageを意識したものとか。Throbbing Gristleを思い浮かべるような曲もある。他にもそれこそMadonnaのカヴァー曲だったり、『Making the Nature Scene』をラップ調に歌ったりと、普段なら出来ないことを自由にやっている感じがして、聴いていてとても面白い。これを『Daydream Nation』を同年にリリースするというところも凄い。遊び心も溢れていて、おすすめ出来ます。

Daydream Nation

 1988年リリース。Sonic Youthの一番の代表作として挙げられるだけでなく、80年代の全ての作品の中でも上位に挙げられる作品。実際にPitchforkの2002年版「the 100 greatest albums of the 1980s」の1位になっている。それほどに評価の高い1枚。ジャケットも現代最高峰の画家に数えられるゲルハルト・リヒターの油絵『Kerze(Candle)』が使用されている。ちなみにこの絵は2008年に1500万ドルで落札されているという……。個人的にも一番好きなアルバムです。

 約70分、LP2枚組の大作で、当時出来ること全てを注ぎ込んだアルバムと言える。これまでの実験的要素を各曲に埋め込みながら、曲そのものは非常にポップで聴きやすい。曲順もしっかり練られたのだろう、完璧な流れ。Thurstonが歌う『Teen Age Riot』や『Silver Rocket』は代表曲で間違いないんだけど、個人的には『Eric's Trip』も外せない。『Eric's Trip』はライブでも頻繁に演奏されていたし、Leeのヴォーカル曲はThurstonやKimに比べると少ないんだけど、以降のアルバムではキーとなることも多く、独特の存在感がある。変則チューニングであるため、音自体はどこか不穏なものがありつつ、でもそれをポップに聴かせてしまう手腕。間奏でのノイズや各楽器の渾然一体となった演奏も不快感など一切なく自然に聴けてしまう。これを普通に出来てしまうことの凄さ。実験性と大衆性を融合させた、まさにこれまでの集大成と言えるアルバム。ただ、最初に聴くアルバムとしては長尺なので、次作以降の『Goo』や『Dirty』の方がおすすめかな。ただ、このアルバムがやはり最高傑作なのは間違いないと思う。

 というわけで、インディー期を取り上げてきました。次回はメジャーデビュー以降を取り上げていこうと思います。


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