写経

 小さな部屋に満たされた炭の香りと、湖山先生の穏やかな印象が、カチコチに固まっていた水彩画のイメージをボロボロと打ち壊していくのが分かった。
 父と母が亡くなって以来、誰かとこんふうに長い時間穏やかな気持ちで向き合ったことがなかったのだと僕は気づいた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?