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ニコニコ動画はドワンゴ、延いては日本のIT社会にとって足枷にしかなっていない

つい先日、ニコニコ動画にてコメントサーバー・システムのリニューアルが行われ、それに伴う一部機能の終了が発表されました。

この中で特にポイントであるのは、一部機能の終了です。
終了するのは以下の機能です。
・過去ログ機能における過去のコメントの「完全再現」
・マイメモリーの終了
・削除動画の跡地の終了

特にマイメモリーと削除動画跡地の終了が大きな変更点と思われ、実際古参のニコ厨からはこの2点の終了について大きな批判が相次いでいます。

しかし、これらの機能終了は極めて当然の処置と考えられます。

今のニコニコ動画は新規ユーザー獲得のために新機能追加と既存機能改善に動いている状態なので、プログラム改修を行うためにはレガシー機能はコストや保守性の観点で考えた際、はっきりと言って邪魔でしかありません。

終了の理由にユーザーの機能利用率を引き合いに出していましたが、開発者からすると利用率くらいしか機能が無駄であるという理由を顧客に対して説明できないので、ああいった形の発表になったと思われます。
(マイメモリー利用率は全体の0.14%とのことで、10000人中14人しか使ってない計算になります)。

ですが、マイメモリーや削除跡地に馴染みがあり、日常的に利用していたユーザーにとっては迷惑ものですし、なにより、これら古くからの機能が消されてしまうことに"切り捨て感"を覚えてしまっているのではないでしょうか。

しかし、それはあくまで機能の存在を知る「一部のユーザー」に限定されることです。
ここ数年の間にニコ動ユーザーになった人達の中で、おそらく「マイメモリー」や「削除動画跡地」を日常的に利用してる人はそう多くはないのではないでしょうか。存在自体知らない人も多いと思われます。

要するに、ニコ動運営にとって、古くからの仕組みや機能はもう邪魔でしかないのです。

なぜなら、現在のニコニコ動画は提供されている機能のどれをとっても「時代錯誤」としか言いようがないものだからです。

ニコニコ動画というものは、所謂「閉じたコンテンツ」、通称「閉じコン」の一種であると言えます。
閉じコンとは、"一部の愛好者やマニアの間でのみ好まれているコンテンツ"のことです。決して「オワコン」ではないところが重要で、コンテンツとしては終わってないが、一部の人達にとっては有益な場所という捉えられ方をしています。

これが実のところ大問題なのです。古参ユーザーから「ニコ動はオワコンじゃない、俺達古くからのニコ厨にとっては有益なWebサービスだ」と思われてしまっている時点で、

ニコニコ動画の成長は完全に停止してしまっています


かつてニコ動は大規模な賑わいを見せていました。

しかし、今はどうでしょう。
ある特定分野内で小規模な流行のみが都度発生するだけで、新規ユーザーが参入しようと思えるような目新しいシステムもコンテンツもありません。

最早身内だけで盛り上がっている風潮さえ感じられ、今や一般化したゲーム実況さえもYouTubeにお株を奪われてしまっている状況です。
今のニコ動は既存のコンテンツ内で使い古された技術やノウハウ、文化を元に製作された動画で小規模な盛り上がりを見せているだけです。

これは全て、ニコ動とその利用者達が既存の仕組みや文化に胡坐をかき続けた結果、新しいコンテンツを生んだり、取り込んだりといったことをせずにいたからではないでしょうか。
数年後にはまたネット上で新しいコンテンツが生まれると思われますが、それはきっとニコニコ動画からではないと思います。

このまま閉じコン化が加速するようであれば、新規ユーザーの獲得は夢のまた夢です。

今でこそ改修を続け新規ユーザーの獲得に躍起になっているようにも見えますが、おそらく事業再生レベルの新規顧客引き込みは相当困難を極めると思います。

運営代表の栗田穣崇氏はよく「ニコ動はYouTubeに勝てなくても良い」と言っています。しかし、それは同時に「ニコ動は閉じコンで良い」という敗北宣言を行っていることに等しいです。YouTubeには勝てなくても良いが、新規ユーザーは増やしてニコ動を盛り上げたいという願いは矛盾しているのではないでしょうか。正直な話、YouTubeに勝つくらいの志を持って打ち出した施策がないと、新規ユーザーの獲得は最早不可能に近いです。

あるのなら明確なビジョンを語って欲しいのですが、どちらかというと週刊ニコニコインフォでは"ニコニコ動画の維持"に注力した発表がメインで行われており、目新しいと思えるような施策は今のところ発表されていません。


おそらくドワンゴにとって、
既にニコニコ動画は存在自体が負債に近いのではないでしょうか


YouTubeと違って新しいビジネスの仕組みやコンテンツを作ることができず、Twitterみたいにアクティブユーザーの維持にも失敗し、広告塔としての役割も果たせずにいる以上、閉じコン化は加速する一方で、サービスとしての価値が上がることもありません。
これ以上ニコ動存続のために人員コストや開発コストを掛け続けてしまうのは、企業としても今後の経営に響く問題に思われます。

なにより、「ITサービス事業として全く新しい取り組みができない」というのが大きいです。将来的に大した儲けを得られる可能性も低いので、やはりここ数年以内にニコニコ動画は事業としての活動を終えるという可能性は否定できないのではないでしょうか。

それに、ニコニコ動画が存在していることで、ドワンゴが新事業を展開し辛いということだけではなく、他の企業が動画ストリーミングサイト事業に乗り出し難いという実態もあります。

世界の動画ストリーミングサイトの代表はYouTubeですが、YouTubeはGoogleの莫大な資金源と最高峰の技術力を持って運営され、世界中にユーザーを持っているため、今後の技術革新やコンテンツの生成が期待できます。

しかし、ニコニコ動画は日本企業が運営しているサイトで、日本人がその利用者の大多数を占めています。また、技術に関しても日本はIT後進国であるため、ニコニコ動画に対してイノベーションは期待できず、前述の理由でコンテンツが新たに作られる可能性も著しく低いです。

こんな状態にも関わらず、日本における動画ストリーミングサイトの代表格はニコニコ動画だという先入観のみが存在しているため、他の企業がニコニコ動画以外の動画サービスを作り出せずにいるのではないでしょうか。

いっそ無くなってしまった方が、「じゃあウチで何か作ろう」という動きをする企業が出てくる可能性があるのではないでしょうか。

ドワンゴも、ニコニコ動画を完全に切り捨ててしまった方が、新しい事業開発に乗り出せるのではないでしょうか。


もうニコ動に開発・維持コストを掛けるより、完全新規サービスの検討を行ってみた方が良い段階に来てしまったことは、言うまでもありません。



あとがき

それにしても、マイメモリーと削除動画跡地の終了に対する古参ユーザーの反応見てると、「ホント老害だな」という感想しか出ません。

明確に不人気機能であるということを利用率という数字を出して、維持させるに値しない根拠を示しているのにも拘らず、「ニコニコらしらが~」とか「ユーザーのこと考えてない~」だとか宣っているのを見ると、自分本位な意見ばかりで運営の意図も裏側も意識せず、勝手なことばかり言っているように見えます。

そして今の運営は、そういう声だけ大きいユーザーの意見を鵜呑みにしてしまう傾向にあるので、非常に危険です。大々的に機能を終了させて開発者負担を減らすと言っているのに、叩かれたからやっぱ終了するのやめますとか言い出しやしないでしょうか。不安です。



ニコニコ動画を真に衰退させたのは「古参ニコ厨」である自分達だということを自覚するべきです。

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