ニンジャスレイヤーTRPG ソロアドベンチャー2 レッド・ブラック・ブッダエンジェル

ニンジャ名:サンドバックメーカー
【カラテ】:5
【ニューロン】:1
【ワザマエ】:3
【ジツ】:3
【体力】:5
【精神力】:1
【脚力】:3
装備など:
カナシバリジツ
ZBRアドレナリン注射器
戦闘用バイオサイバネ

敵にカナシバリジツを仕掛けてサンドバックめいて攻撃する、極めて強力な戦法を得意とするが、
肝心のカナシバリジツが1日1回しか使えない。
所詮、弱者をいたぶるしか能のないサンシタである。

 サンドバックメーカーはビルの屋上から、コンクリートジャングルの中でひっそりと佇むテンプルを見下ろした。警備は極めて厳重。しかしそれはモータルの基準からみたらの話だ。
 ニンジャからしてみれば無いも同然。ザルな警備に過ぎない。忍び込む手段はいくつもある。

 警備システムをハッキングする? バカバカしいとサンドバックメーカーは鼻で笑う。自分はニンジャだ。小細工など使わなくても、忍び込むのはベイビーサブミッション。

ダイスロール >>> ワザマエ 4,5,2 成功

「イヤーッ……!」

 ボンズに聞かれぬよう小さく発したカラテシャウトと共に、サンドバックメーカーはビル屋上から本堂の屋根へと音なく跳び移る。
 
「イヤーッ……!」

 ボンズに聞かれぬよう小さく発したカラテシャウトと共に、サンドバックメーカーは屋根から境内の茂みの中へ音なく跳び移る。
 
「イヤーッ……!」

 ボンズに聞かれぬよう小さく発したカラテシャウトと共に、サンドバックメーカーは茂みの中から本堂内へ音なく……ナムサン!
 着地地点に細い糸。ナルコトラップだ。
 
「イヤーッ……!」

 サンドバックメーカーは強引に体を捻って、かろうじてナルコトラップの糸を回避する。
 とっさのことで大声でカラテシャウトしてしまったが、幸いにも距離があったのでボンズには聞こえなかったようだ。
 
「間抜けなボンズめ」

 サンドバックメーカーは己のウカツを棚に上げてボンズを嘲笑った。

「ドーモ、サンドバックメーカーです」

 サンドバックメーカーは邪悪な笑みを浮かべた。これだからニンジャはやめられない。アイサツだけで弱者たちがみっともなく怯え、泣き叫ぶ姿はどうしようもなく滑稽で痛快だった。

ダイスロール >>> 【ジツ】+【ニューロン】 6,6,5,1
精神力 1 → 0

「イヤーッ!」

 サンドバックメーカーがカラテシャウトとともにジツを行使すると、住職の体が硬直! 一日一回しか使えないものの、こうして相手の動きを封じ、サンドバックめいて一方的にいたぶることが出来るのだ。

「マキモノはどこだ?」
「ま、マキモノ? なんのことです?」
「イヤーッ!」

 サンドバックメーカーはカナシバリで動けぬ住職の指を折った。
 
「アイエエエエエエエエ!!」
「とぼけるんじゃない。ミヤモト・マサシの記した兵法書のフラグメントがここにあるのは調べがついている。どこにある? 言え。言わなければ次の指を折るぞ」
「い、言えません」
「そうか……イヤーッ!」

 サンドバックメーカーはカナシバリで動けぬ再び住職の指を折った。

「アイエエエエエエエエ!!」
「言え! マキモノはどこだ!」
「言えません!」

 3本目の指を折ろうとするサンドバックメーカーはだが、そこでもっと良いアイデアを思いついた。
 
「だったらそこのミコーに聞いてやる。よく見ればなかなか好みの顔だ。俺専属のオイランにしてやろう」
「アイエエエー! 住職=サン、タスケテ!」

 サンドバックメーカーがミコーに下劣な視線を向けると、彼女はさらなる恐怖で肌が白くなるほど青ざめた。

「そ、その子にだけは手を出さないでください。今は亡き親友の娘なのです!」
「だったら、わかっているな?」
「……仏壇の中です」

 住職はマキモノの在り処を答えた。その目からは血の涙が流れている。邪悪なニンジャに屈した罪悪感によるものだが、サンドバックメーカーにとっては関係ないことだ。
 サンドバックメーカーは乱暴に仏壇の扉を開くと、たしかにそこには目的のマキモノがあった。

「ちょうどいい。そろそろサイバネ手術のローンの返済期限が来る頃だったんだ」

「ワハハハハ! なんだ、結構溜め込んでるじゃないか!」

 サンドバックメーカーは降って湧いた幸運に思わず笑い出す。
 
「さて、マキモノは手に入ったし。ボーナスもゲットした。あとはミコーを俺のアジトに連れ帰るだけだな」
 
「アイエエエエ!! マキモノの場所は言ったではないですか! 話が違う!」

 住職が叫ぶ。
 
「なにを勘違いしている。俺はニンジャだ。いちいちモータルとの約束なんて守る義務など無い」

 ブッダよ、あなたは寝ておられるのですか!? このまま敬虔なミコー・プリエステスがニンジャの毒牙にかけられてしまうのを良しとするのですか!?
 
 否!

(ニンジャスレイヤー!? あれはサンシタたちがケジメのがれに流した根も葉もない噂のはず!?)

 架空と思い込んでいたニンジャスレイヤーが、物理存在を持って自分の前に現れた衝撃に、サンドバックメーカーは状況判断が0コンマ1秒遅れた。
 そして、それはニンジャ同士のイクサでは致命である。

ダイスロール >>> 回避(カラテ5)
3,1 回避失敗 ダメージ1
2,1 回避失敗 ダメージ1
2   回避失敗 ダメージ1
体力 5 → 2

「イヤーッ!」「グワーッ!」

 サンドバックメーカーはノーガードでニンジャスレイヤーの一撃を受けてしまう。
 一撃? 違う! 三度だ! 尋常ならざる速度でニンジャスレイヤーは一瞬のうちに三度の攻撃を放っていた。あまりの速さに、サンシタであるサンドバックメーカーはそれを一撃と誤認したのだ。

 『たった』と言えてしまえる程度の僅かな攻防。しかし、サンドバックメーカーの心は木っ端微塵に粉砕されていた。
 カラテ・アンド・ゼン・イチニョ。ショウリンテンプルカラテと呼ばれる流派において、カラテとゼンは共に鍛えなければ意味がないとされる。サンドバックメーカーはそれなりのカラテを有しているが、弱者をいたぶることばかりに夢中となってゼンを鍛えるのを怠った。
 
「アイエエエエエ……」

 その結果がこれだ。サンドバックメーカーはニンジャにあるまじき情けない声を上げる。もし彼がカラテとゼンを共に鍛えているのならば、この程度で心が折れることはなかっただろう。
 サンドバックメーカーはニンジャスレイヤーを見る。狂気の殺忍者の背後には、オニめいた怒りの表情を浮かべるブッダ像があった。

『お前は悪しき行いを繰り返した。その報いを受けよ。死ね! サンドバックメーカー=サン、死ね!』

 聞こえるはずのない声がブッダ像から聞こえてきた。それは幻聴であったが、サンドバックメーカーは本物のブッダの声であると思った。
 
「嫌だ……死にたくない」

 サンドバックメーカーは失禁した。しかし、それをブザマと感じられるほどの心の余裕もない。それほどの恐怖が彼を支配していた。

ダイスロール >>> ワザマエ 5,4,3 成功

「アイエエエエエエ!! アイエエエエエエ!!」

 サンドバックメーカーは泣き叫びながらニンジャスレイヤーから逃げた。
 無我夢中だった。気がつけば、いつのまにかアジトに戻っていて、フートンの中で震えている自分がいた。どうやって逃げたのか全く覚えていない。だが、逃げ切れたのは確かだ。

 翌日、サンドバックメーカーは任務成功の報告を行った。

「ところで、貴様。あのニンジャスレイヤーと遭遇したそうだな? 聞けば、やつを倒さずにおめおめと逃げてきたとか?」

 ラオモトの目がギラリと光る。それは、あの夜の怒れるブッダ像を連想させる。
 
「余計なイクサをして、任務に失敗するわけには行きません。マキモノをラオモト=サンに届けるためならば、負け犬と蔑まれてもソンケイを失っても構いません」

 サンドバックメーカーは失禁しそうになるのをこらえながら、奥ゆかしく答えた。
 任務のためというのは方便に過ぎないが、しかし負け犬と蔑まれても構わないというのは本心であった。あれは戦ってはいけない相手だ。絶対に……絶対にだ。死ねばソンケイもなにもない。

「ありがたき幸せ」

 サンドバックメーカーはドゲザ姿勢で万札を受け取る。
 あの寺院で賽銭箱から金を奪い取ったときの高揚感はすでに無い。金が自分をニンジャスレイヤーから守ってくれるわけがない。サンドバックメーカーは金よりも、自分が生きていられるという保証が欲しかった。
 しかし、そんな保証は決して得られないだろうとサンドバックメーカーは理解していた。なぜなら、ブッダが自分の死を望んでいるからだ。
 きっとニンジャスレイヤーとは、ブッダが悪しきニンジャを滅ぼすために遣わした断罪のブッダエンジェルに違いない。
 自分がニンジャスレイヤーに殺されるのは必定の未来。
 もはや安らかに眠れる夜は、サンドバックメーカーに訪れなかった。彼は毎夜のごとに、ニンジャスレイヤーに殺される悪夢にうなされ続けた。

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