完全保存版!やっぱり「日本の借金1000兆円」はウソでした(高橋洋一)


3月28日に書籍『日本の「老後」の正体』(幻冬舎新書)』を発売しました。以下に、本書の一部を公開します。(嘉悦大学教授・高橋洋一)

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財政破綻の危険性を測る方法

高校生 前々回の話(「日本の借金1000兆円」は経済を知らない人があおっているだけ)で日本の財政赤字の問題は誇張して語られすぎているということと、前回の話(なぜ「消費増税」が恐ろしいのか?簡単にまとめてみた)で、消費増税を止めるべき理由についてはよくわかりました。

両方とも日本の財政赤字の問題の話でしたが・・・、でも、そもそも巷で言われている「日本は財政破綻する」っていう話自体が何だかフワッとしてますよね? もしも、日本が財政破綻しそうになった場合、前もって分かる方法はないんですか?

先生 財政破綻の確率を知る格好の指標があるよ。それは、各国の国債の「クレジット・デフォルト・スワップ」、略して「CDS」のレート、つまり保証料率を見ればいい。

高校生 クレジット・デフォルト・スワップ? CDS?

先生 CDSとは金融派生商品の一種で、株や債券の発行体である企業が倒産した際の保険のようなものだ。

例えば、私がA社の社債を10万円分買ったとして、A社が倒産したら、その社債は紙くずになり、私に損失が出る。でもA社の社債を買うと同時にCDSを買って保証料を払っておけば、その損失を保証してくれるという仕組みなんだ。

このCDSのレートが低いほど、その発行体は倒産しないと見なされているということだ。例えばA社のレートが2%だったら、100年に2回ぐらいの倒産確率だろうと見られていることになるよ。

その時は、例えば私がA社の社債を100万円分持っていて、CDSも一緒に買うとしたら、2%のレート、すなわち年に2万円を支払えば、その保証を受けられることになる。

高校生 倒産する確率が、そのままレートなんですね。分かりやすい!

先生 CDSの売り手にとっては、倒産確率が高ければ高いほど、保証する確率が増えてリスクが高いため、そのリスクに見合ったレートになっているんだ。つまり倒産確率が上がれば上がるほど、レートも上がるという特性を持っている。

そしてこのCDSは、各国が発行する債券・国債に対しても売り出されている。これは金融機関と投資家が身銭を切って市場で取引しているものなので、より客観的な確率と言えるんだ。

高校生 それじゃあ、国債のCDSのレートを見れば、その国が財政破綻する確率が分かるんですね。

先生 その通り! ちなみに、最近のCDSレートの数字は、アメリカ0・21%、イギリス0・40%、ドイツ0・15%、日本0・23%、フランス0・40%、イタリア2・22%となっている。

世界から見る日本の国債の破綻確率は5年で1%程度だ。市場全体からしたら、日本国内で言われているほど危険とは見なされていないんだよ。

高校生 それを聞いたら、結構安心できますね。他の先進国と比べてもそれほど悪い数字ではないし……。

世界から日本はどう見えている?

高校生 でも、日本国内の危機感と世界から見た日本に、そんなに温度差があるのはどうしてなんですか?

先生 その原因は、世界の市場は日本と違って、「会計学的に正しい目で、日本の財政赤字問題を眺めているから」ということかな。

高校生 会計学的に正しい目、ですか?

先生 どういうことかというと、確かに日本の借金、すなわち政府の債務が約1000兆円あることは事実だ。だけどその見方って実は、企業の決算書におけるバランスシート・貸借対照表で言うところの、右側の負債の部分のみしか見ていない数字なんだよ。

高校生 バランスシートって、右に負債、左に資産が記入されているものでしたよね(バランスシートの詳しい説明はこちらを参照)。

先生 そう。企業の安全性を分析する時は、その左右のバランス、つまり「負債の額」を見ると同時に「資産の額」をチェックすることが一般的なんだ。右側の負債だけ見ていても、それは不安になって当然だよね。

例えば、ある企業が1億円のプロジェクトを受注し、その報酬を1年後に受け取るとしよう。会計処理上は、1億円がすぐに「売上」として計上されるけど、お金が手元に入ってくるのは1年後だから、それまでに企業の資金繰りが滞ると企業は倒産することになる。

でも、たとえ現金が不足していても、いつでもキャッシュに換えられる資産を持っていれば、さまざまな支払いに充てることが可能だから、その企業は倒産を免れやすくなる。

中でも換金しやすい資産を持っているほど、企業の安全度は高くなる。換金しやすい資産の代表格は有価証券などの金融資産で、こういった資産を会計学では「流動資産」と呼んでいるよ。

ちなみに、財務省が主張している約1000兆円の借金は、「粗債務」と呼ばれるものだ。民間企業で言えば、銀行などから受けている融資や取引先への原材料費の未払い金などの負債に当たる。この負債があっても、企業に預金や土地などの資産があれば、「粗債務」の数字がそのまま債務ということにはならない。

持っている資産を「粗債務」から差し引いた数字が、その企業の「真の債務」ということになり、これを「純債務」と言うんだ。当然、この「純債務」が小さいほど、その企業の財務状況は健全であると見なされる。

高校生 負債があっても、資産がたくさんあれば安心なんですね。そういう意味じゃ、日本が持っている資産って、多いほうなんですか?

先生 実は日本政府は莫大な負債だけでなく、膨大な資産も抱えているんだよ。だから日本は、純債務が極めて小さい国なんだ。

まずは財務省が公表しているバランスシートである、次の図36を見て欲しい。

左側の「資産」の項目を見ると、国の資産の総計は約986兆円になっている。一方の右側の「負債」は総計約1470兆円だ。

結局、粗債務から資産を差し引いた純債務がいくらになるかと言えば、「1470兆円-986兆円」で、約484兆円だ。

これをザックリ表すと次の図37のようになる。

つまり、日本の実質的な借金(純債務)は、ちまたで言われている1000兆円の半分以下ということになる。GDP比(純債務残高対GDP比)で見るとほぼ100%だ。

ちなみに、「国の借金」と呼ばれているものはこのバランスシートでは、右側の「負債」の中の「公債825兆円」+「政府短期証券85兆円」+「借入金36兆円」の計946兆円のことを指しているよ。

高校生 これを見れば、本当の意味で日本の財政の状態が分かるんですね。

先生 ただし、ここで財務省が言っているこの「連結」ベースには大きな欠陥がある。「日銀」が含まれていないんだ。

政府による日銀への出資比率は5割を超えていて、政府は日銀に対してさまざまな監督権限も持っているため、会計的には日銀は完璧な政府の子会社と言えるはずだが、なぜかそのやり取りは記載されていない。

経済学では、政府と日銀は一体のものとして分析することが常識であり、会計的な観点から言っても、連結対象から外す理由は見当たらない。

今から25年前の話だけど、私が旧大蔵省の役人の時は、日本ではじめて政府のバランスシートを作った。その時には、日銀は政府の関連会社(特殊法人や独立行政法人など)なので、民間でいうところのグループ決算と同じように、それらをすべて合算したバランスシートを作った。それは、25年前には公表されなかった。

それから10年経った頃、小泉政権の時から公表したけど、その時に財務省は政府関連会社の中で、日銀だけを外した。その理由は不明だが、日銀を連結対象として含めた場合のバランスシートを作成することは、間違いなくできるんだ。

2017年3月31日現在の日銀のバランスシートは次の図38の通りだよ。

中身を詳しく見ると、資産は総計約490兆円で、そのうち国債が約418兆円。負債も約490兆円で、そのうち発行銀行券が約100兆円、当座預金が約343兆円。

ここで、発行銀行券と当座預金は形式的には負債だが、基本的に無利子、無償還なので、経済的には負債といえない。

政府の債務超過額は約484兆円だったが、日銀は443兆円の資産超過。政府と日銀を一体として考えると(これは民間企業でのグループ決算に当たる)、債務超過額はたったの41兆円。

つまり、日銀も含めた連結ベースで国家財政を考えると、結局日本政府の純債務は約40兆円ということになる。

これをザックリ図示すれば、次の図39のようになる。

つまり、日本政府の純債務は、多くても40兆円程度なんだよ。会計学的に見れば、「国の借金1000兆円」と言っている財務省の発表が、いかに過大に喧伝されているかがよく分かるよね。

高校生 ここまで誤差が出るとは、正直驚きです……。

先生 また、2018年10月10日に国際通貨基金「IMF」から発表された「財政モニター報告書」を見ても同じことが確認できる。

このIMFレポートは、各国の財政状況について、負債だけではなく資産にも注目して分析したものだよ。

ここでは主に、「一般政府」と「公的部門」のバランスシートが分析されているんだ。一般政府とは中央政府、すなわち国と地方政府を併せた概念なんだ。一方の公的部門とは、中央銀行を含む公的機関を含めたもので、先ほど言った「日銀も含めた連結ベースでのバランスシート」は、この公的部門とほぼ同じ。

このレポートでは、比較可能な国の「公的部門貸借対照表」で純資産対GDP比が出ている。純資産対GDP比とは、日本では純債務残高対GDP比と呼ばれているものだよ。より具体的に表したのが次の図40だ。

これによれば、日本の公的部門の「純資産対GDP比」がほぼゼロであることが分かる。

もっと詳しく言うと、日本政府の負債額は国内総生産の283%に相当するが、半分以上を日銀や公的年金などの、いわば公的機関が保有していて、資産と差し引きした「純資産」はほぼプラスマイナスゼロとなっているよ。これは、私の主張と合致している。

そして、公的部門の「純資産対GDP比」において、世界の市場から見ると、日本の順位は世界の中で別段悪い位置にいるわけではないんだ。

日本国債のCDSのレートが低い理由は、このように、会計学的に正しい方法で日本の財政赤字の状況を眺めているからなんだよ。こんな知識があると、日本の財政破綻は滅多なことでは起こらないと分かるんだ。

高校生 うーん、日本が資産をたくさん持っているのは分かりましたけど、具体的にどんなものを持っているんですか?

先生 国の資産といえば、「土地建物の実物資産が多いから、そう簡単には売却できないのだろう」と思われがちだけど、実はそうでもない。政府資産の大半は、政府関係機関への出資金や貸付金などの金融資産であり、容易に売却可能なものばかりなんだよ。

より具体的には、日銀を含めた統合政府ベースのバランスシートで言えば、約1000兆円程度の資産のうち、実物資産(土地や建物などの有形固定資産)は270兆円弱しかない。つまり、国の資産のうちの多くが「売却可能な資産」なんだよ。

さらに、先に換金しやすい資産の代表格は有価証券などの金融資産だと言ったけど、日銀を含めた統合政府ベースのバランスシートの中の金融資産は、「現金・預金(129兆円)」+「有価証券(369兆円)」+「貸付金(158兆円)」+「出資金(19兆円)」の計675兆円にのぼっているよ。

高校生 えっ、じゃあ、どうして日本政府は、今まで資産があることを強調しなかったんですか?

先生 「政府資産は簡単には売れない」というのが、財務省の言い分だ。
でも、一般企業でも破綻寸前となれば、まずは子会社などの手持ち資産を売るのが常識だし、海外を例に見れば、破綻に直面した時には政府資産をどんどん売却している。だから「売れない」というより「あまり売りたくはない」というのが本音だろうね。

ただ、私が言いたいことは、「資産があるから、いざという時は売ればいい」という極論ではなく、次のような話だよ。

・政府の財政赤字の規模は会計学的に正しく見るべき
・会計学的に正しい見方というのは、統合政府(日銀も含めた連結ベース)のバランスシートで見た「純債務残高」のこと
・日本の統合政府のバランスシートでの「純債務残高」は約40兆円であり、これは決して危機的状況と言えるようなものではないので、必要以上に日本の借金を恐れる必要はない

高校生 こういう話、新聞やテレビでは一切されていないので驚きです・・・。

先生 いつの時代も、メディアというものは、極論を好むからね。かつて「ノストラダムスの大予言」が多くの小中学生の心をつかみ、恐怖のどん底に叩たたき落としたように、財政赤字からくる「予言」は、人々の恐怖心やそれに伴う「怖いもの見たさ」を刺激してくる。

人は根本的に、不安要素に惹ひきつけられてしまう傾向があるからだ。

高校生 そうですね・・・。

先生 多くの人々が経済危機説を信じるのは、実際にたくさんの人が、老後や将来に不安を抱いているからだろうと思う。しかし、マスコミによる根拠薄弱な極論を真に受けて、人生の将来設計や資産運用計画を立てるのは、あまりに危険な行動なんだ。それが、時に人生で後戻りできないほどの損害を生む可能性すらあるからね。

高校生 今回本当にそうだと思いました・・・。

先生 これらを心得て、「日本はもう経済成長できない」「国家が破綻する」「年金が破綻する」といった言説には、惑わされないようにして欲しいと思うよ。

このような見解が、精緻にデータを検証した結果、「誤り」あるいは「真っ赤な噓」だとしたら、今多くの人々が抱えている将来への漠然とした不安が、「大いなる杞憂」ということになるからね。たった一度きりの人生を、そんな根拠のない説に左右されて不安の中過ごすなんて、もったいなすぎるよね。

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・資産運用しないと老後破産するしかなくなる
・日本の年金制度は破綻寸前
・年金は払い損になるから払わないほうがいい
・国民年金の未納者4割超
・・・これらは、全部デタラメだった!!


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編集集団WawW! Publishingの公式note。現在、高橋洋一著『日本の「老後」の正体』(幻冬舎新書)の記事を無料公開中。

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コメント1件

「世界から見る日本の国債の破綻確率は5年で1%程度だ」

これはどういう計算でしょうか? 確率に年数そのまま掛け算するのはアウトですよ?
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