「退職後2000万円不足」騒動で老後が怖くなったあなたへ~高校生でもわかる!

年金の問題が怖いです・・・

高校生 不安なことがありまして……。老後というか、まだまだ先のことなんですけど。

先生 ひょっとして「年金」のことかな?

高校生 そうです! 年金制度はもう危ないって聞いたことがあって、これからコツコツ払っていっても無駄になるのかなって。高齢化が進んでお年寄りばっかりになったら、国に年金を払う余裕なんてなくなるんじゃないですか?

先生 確かに、メディアが長い間「年金が危ない」とあおってきたし、心配になるのも無理はないね。だけど、「日本の年金は破綻寸前」という見方は、大きな誤りなんだよ。

現状の制度をきちんと運用すれば、「破綻だ」などと大げさに悲観する必要はないんだ。

高校生 そうは言っても、そもそも年金の話って難しくてよくわからないんですよね・・・。

先生 そういう風に「年金は難しい」と思い込んで、知識を持つことをあきらめてしまう人も多いだろうね。でも実際、年金の仕組みはそれほど難しいものじゃないんだ。複雑化していることは事実だけど、基本はきわめてシンプルな仕組みなんだよ。むしろ、ポイントさえ押さえておけば、誰でも理解できるはずだ。

高校生 そうなんですか! ぜひわかりやすく教えてください!

先生 では、早速ここから年金の基本的な仕組みを解説していくとしよう。より分かりやすくするために、細かい部分はできるだけ省いて、根幹の部分だけを話すことにするよ。

高校生 はい!よろしくお願いします! 

※ 本記事は、書籍『日本の老後の正体』からの抜粋記事です。

日本の年金制度の基本的枠組み

先生 まず、年金の全体像について説明しよう。大ざっぱに分けると、次の図のような最大3階建ての構造になっているんだ。

【年金は最大「3階建て」】
1階 国民年金──公的年金保険
2階 厚生年金保険(共済年金も統合された)──公的年金保険
3階 企業年金、確定拠出年金など──私的年金保険

1階部分は、全国民が加入する「国民年金」。すべての国民は、強制的にこの国民年金制度に加入することになっていて、給付される年金は「老齢基礎年金」と呼ばれているよ。

この老齢基礎年金は、40年間保険料を納めた人には満額が支給される。2016年度の例でいえば、支給される年金額の満額は、年間78万100円。1カ月当たり約6万5000円になっている。

所得の高い人も低い人も、保険料を納めた期間によって基礎年金額は一律なんだ。

自営業者や農業者(第1号被保険者)、そして会社員・公務員等に扶養されている配偶者(第3号被保険者)は、この1階部分の基礎年金のみが老後にもらえる仕組みになっているよ。

高校生 国民年金って、自営業者か、会社員や公務員等に扶養されている配偶者がもらえる年金なんですね。

先生 一方の2階部分の「厚生年金保険」は、サラリーマン(民間企業職員)や公務員が、国民年金の上乗せとして報酬比例の形でもらえる年金だよ。

以前はこの「厚生年金保険」は、サラリーマンの場合は「厚生年金」、公務員と私学教職員は「共済年金」とされていたけれど、2015年10月以降、共済年金は厚生年金保険に一元化されたんだ。この厚生年金に加入している人は、「第2号被保険者」と呼ばれている。

つまり、会社員・公務員等は、1階部分の基礎年金と、この2階部分の厚生年金保険を受け取ることができるというわけだ。

1階部分は保険料を納めた期間に応じて金額は一律だったけど、この2階部分は報酬比例になるので、所得が多く保険料をたくさん納めた人ほど、年金を多く受け取ることができるようになっているよ。

ここまでが「公的年金保険」と呼ばれていて、1階部分の国民年金も、2階部分の厚生年金も、該当者は必ず入らなければいけない、強制加入型の年金だよ。

高校生 でも今の話だと、自営業者の人って、会社勤めの人に比べてもらうお金がかなり少なくなる気がするんですけど。

先生 そういう不安を解消するために、公的年金保険に上乗せできる任意の年金制度も用意されているんだよ。

例えば、国民年金に入っている人は、「付加年金」という制度があって、毎月の国民年金保険料に400円プラスして納めると、40年の満額で支給される時、基礎年金額に年間9万6000円上乗せされるからおすすめだよ。

また自営業者の人は、基本的に国民年金のみの1階建てだけど、入りたい人だけ入れる私的年金として「国民年金基金」がある。つまり、国民年金に国民年金基金を上乗せして、「2階建て」にすることもできる。

ほかには、会社員や公務員の人でも、1階部分は国民年金、2階部分は厚生年金という2階建てが基本だけど、会社によっては3階部分になる別の年金に入れるところもあるんだ。

ちなみに、かつては「厚生年金基金」という制度もあったんだけど、問題点が多くて解散が相次ぎ、今は「確定給付企業年金」や「企業型確定拠出年金」に移行している。ほかにも、個人で入れる「個人型確定拠出年金」(iDeCo(イデコ))というのもあるよ。

「賦課方式」と「積立方式」

先生 このように、年金にはいろいろな種類があるんだけど、まとめると国民年金と厚生年金は「公的年金」であり、それ以外の「国民年金基金」「確定給付企業年金」「企業型確定拠出年金」「個人型確定拠出年金」などは、任意で入れる「私的年金」というわけだ。

高校生 「公的年金」は加入が義務づけられているけど、それ以外は「将来もっと多くの年金が欲しい人は自由に入れる年金」ということですね。絶対に入らないといけない公的年金と、入りたい人だけ入れる私的年金……この2種類があるっていうことも、初めて知りました。

先生 公的年金と私的年金の違いは、義務化されているかどうかというのもあるけど、最大の違いは、支給される仕組みの違いにあるよ。

具体的には、公的年金は「賦(ふ)課(か)方式」といって、現役世代から集めた保険料を老齢世代の年金給付に充てている。つまり、自分が支払ったお金は今の高齢者にあげて、自分が高齢者になった時には、その時の現役世代の保険料から年金をもらうシステムだね。

日本をはじめ、主要先進国の公的年金はだいたいこの方式だ。
 
それに対して、私的年金は「積立方式」。自分の納めた保険料を積み立てておいて、それを株式や債券などで運用して増やし、将来、年金として自分で受け取る仕組みなんだ。

高校生 私的年金は、自分で積み立てたお金を将来の自分に渡すってことですね。それなら、義務じゃないのは納得ですね。

先生 その通り。でもね、賦課方式の場合でも、自分が払ったお金は高齢者の給付に充てられて消えてしまうイメージがあるかもしれないけど、言うまでもなく、自分が高齢者になった時、逆に現役世代のお金で支払ってもらえるんだ。

だから、長い目で見ると、ちゃんとお金が戻ってくるようになっているんだよ。

年金はどのくらい戻ってくる?

高校生 ちゃんとお金が戻ってくるのは分かりましたけど、それでも、毎月払い続けるほうが損ってことはないんですか?

先生 多くの人が一番知りたいのは、そこだろうね。
 
実は、公的年金も私的年金も、全体で「集めた保険料」と「給付する年金」が一致するように、「年金数理」で計算されているんだよ。年金数理とは、長期的な視野に立って、年金制度の財政計画を立てる時の計算方法の総称のことだ。
 
つまり、「その人が納めた保険料」=「その人が将来もらえる給付額」になるようになっている。
 
例えば平均寿命80歳として、公的年金を20歳から60歳までの40年間納めて、60歳から80歳くらいまでの20年間受け取るようなことになっているんだ。
 
これをザックリ言うと、40年間納めた保険料の総額と、20年間でもらう年金額が同じになっているということだ。もちろん、厳密に知るには、現在価値を計算するなど細かい数字を出す必要があるけれど、ものすごく単純化した公的年金の数式は次のようになる。

「その人が40年間納めた保険料の総額」=「その人が20年間で受け取る年金の総額」

だから、長生きする人はお得になって、若死にする人は損という仕組みだ。平均的な寿命なら得にも損にもならない。このように答えない人の話を聞いたらダメだよ。

国民年金は10年もらえば元が取れる?


先生 より具体的には……、全国民が入る国民年金(老齢基礎年金)については「もらえる金額が少ない」など不満を持つ人も多いけど、平均寿命をもとに計算すると、わりとお得な年金だということが分かるはずだよ。

2016年度の1カ月当たりの国民年金保険料は、1万6260円(2017年4月からは1万6900円)。年間にすると19万5120円。40年間では780万4800円となる。
 
一方の、受け取る国民年金の満額は、年78万100円、10年間で780万1000円。
 
つまり、10年もらえば大体元が取れるという計算になるんだ。
 
平均寿命は男性が約81歳、女性が約87歳。65歳から年金を受け取るとしても、男性は平均16年間、女性は平均22年間受け取ることができる。

〈基礎年金(現在価値に直さない単純計算)〉
40年間の保険料=約780万円
10年間の受給額=約780万円

高校生 ということは、40年間に納めた保険料と、10年間でもらえる年金の額がほぼ同じなので、平均寿命で見ると、男女ともに年金を10年間以上もらえるから、そのぶん、長生きすればするほどお得になっていくということですね!

先生 その通り!

厚生年金として受け取るのは月給の4割

先生 同じことを厚生年金の場合で考えてみよう。厚生年金の保険料率は段階的に上がってきているけど、2017年9月以降は標準報酬の18・3%。おおざっぱにいえば、月給の2割を厚生年金に納めていることになる。ちなみに、会社員や公務員の場合は労使折半になるので、このうち半分は会社、または政府が払ってくれていることになるよ。
 
結局、納めている年金保険料は月給の2割くらいで、年金額はその2倍くらいなので、2割×2=4割。つまり、月給の4割ぐらいが定年後に年金として支払われると見ておけばいいんだ。

毎月の年金額=月給の約4割

この計算でいくと、月給20万円の人が将来もらえる金額は月8万円程度。月給30万円の人は月12万円程度。月給40万円の人は月16万円程度ということになるね。

高校生 なるほど! 分かりやすいですね。

先生 ただ、ここで気をつけておきたいのは、厚生年金の年金額を考える時、「生涯を通じての平均給与額」が基準になるということだ。

日本の会社員の場合、若い頃は給料が安く、年を重ねるにつれて給料が増えていく人が多いよね。とすると、退職間際の給料で計算すると、「年金支給額が思っていたより低い」という感覚になってしまう。

それに、現在価値に直す計算も必要だし、年金支給開始年齢も変わってきているので、あくまでも目安として「生涯を通しての平均月給の4割ぐらいを、定年後に年金としてもらえる」と思っていて欲しい。

例えば、銀行の預金金利が1%だとしても、40年も預金していたら元本は大体1・5倍になる。つまり、40年先の100万円といっても、今の価値は、1・5で割って67万円の価値しかない。これで、国民年金はお得なんて断言したら、私もだましたと言われかねないからね(笑)。

「ねんきん定期便」を見ればすべて分かる

先生 そんな計算をしなくても、一番てっとり早く年金の受給額を知る方法が、「ねんきん定期便」を見ることだよ。

高校生 ねんきん定期便って、何ですか?

先生 誕生月に日本年金機構から送られてくるもので、「国は、あなたから、これだけの金額を受け取りました」という領収書のようなものだよ。つまり、これを見れば今までいくら納めたかはっきり分かるようになっている。年金をもらう人にとって、大切な証明書でもあるんだ。
 
それに、現時点での年金の見込額も記載されていて、自分が受け取る年金額の目安が分かるようになっている。この数字を見て「生活費として足りない」と思う人は、早めに貯蓄や民間の年金保険などで準備することができるということだ。

高校生 それなら、無駄に心配する必要はないですね。

先生 だから、ねんきん定期便が届いた時にはちゃんと確認するべきで、見ないで捨てたりしないようにね。
 
もしも、誕生月になってもねんきん定期便が届かなかったら、何か不備がある可能性もあるので、すぐに年金事務所に問い合わせたほうがいい。

高校生 ねんきん定期便には、ほかにどんなことが書かれているんですか?

会社が年金保険料をズルしてないかも分かる

先生 まず、「これまでの保険料納付額」という欄があって、累計の納付額が記されている。これが国からの領収書に相当するんだ。
 
厚生年金の場合、労使折半で会社が半額を負担しているから、国はこの欄に書かれた数字の倍の金額を受け取っていることになるんだよ。

「最近の月別状況です」と書かれた部分には、標準報酬月額「月給」、標準賞与額「ボーナス」とともに、保険料納付額が記入されている。この額を見て、自分がもらった月給、ボーナスの額と大きく違っていないか確認することが大事なんだ。あまりにも低い数字が書かれていたら、会社が数字をごまかして、低い保険料しか納付していない可能性があるからね。
 
標準報酬月額、標準賞与額は、報酬の額を等級で分けていて少し数字が丸められた金額になるので完全には一致しないはずだけど、おおよその額は分かるはずだ。
 
ちなみに国民年金の場合は数字ではなく、「納付済」と記載されるよ。
 
一番大事なのは、「照会番号」(以前は基礎年金番号)の記載だ。この番号があれば、インターネット上で日本年金機構が開設しているサイト「ねんきんネット」を通して、詳細な年金記録を見ることができるんだ。

高校生 サイトでさらに詳しく確認できるんですね! それなら安心です。

先生 あと忘れちゃいけないのが、「これまでの年金加入期間」の確認だ。未納の時期があると、もらう金額も少なくなってしまうからね。
 
不審に思うことがあったら、「ねんきんネット」で過去を遡って記録を確認しておこう。

高校生 未納してる時期が長すぎると、年金がもらえなくなってしまうんですよね……?

先生 以前は、加入しても25年以上保険料を納めていない時期があれば、年金を受給できないシステムだったけど、2016年の法改正で、10年以上納めていれば、受給できるようになったんだ。

高校生 25年から10年に! そう聞くと、年金制度って意外と親切な気がしますね。

先生 ただ、保険料負担額が少ないと、当然年金給付額も少なくなってしまうよ。
 
よく公的年金について「こんなに年金が少ないのか。これでは生活していけない。国は何をやっているんだ」と批判する人もいるけど、単純にそれはその人が納めた保険料が少ないということにすぎないんだ。
 
もしも老後にもっと年金が必要だとなったら、その時は、個々人でさらに年金を上乗せできる私的年金への加入を検討すればいいだけのことだよ。

年金は破綻しないように設計されている

高校生 大体の年金の仕組みは分かったんですけど、そもそも将来、年金制度自体、なくなってしまうってことはないんですか?
先生 結論から言うと、日本の公的年金制度は破綻しない。今後、よほど酷い制度改悪がない限り、まず大丈夫だよ。

高校生 でも、大丈夫とは言い切れないんじゃ……。

先生 どうして大丈夫かというと、年金というのは「保険」だからだよ。
 
保険は生きていく上でリスクをカバーするためにあるよね。たとえ長生きできても、体調の問題や肉体の衰えで、働けなくなったら生活費を稼ぐことができなくなる。そうなったら、死ぬしかないのか? そんな社会であったら、長生きすることは「リスク」でしかなくなる。
 
そういうリスクがないようにするのが保険であり、中でも長生きした時に備えておくための保険が年金なんだ。リスクをカバーするはずの「保険」が、簡単になくなってしまってはいけないよね?
 
実際どういう仕組みになっているかと言えば、「早くに亡くなってしまった人」に支払われるはずだった保険料を、「長生きした人」に渡すというものだ。つまり、年金保険加入者のどのぐらいの人がどのぐらいの年齢で亡くなるかを数理計算して作られているのが年金保険なんだよ。
 
年金保険に限らず、すべての保険は、数理で計算されて成り立っている。それをよく知らない人は破綻すると思ってしまいがちだけど、保険は、割り切っていえば「数学」の世界なんだ。厳密な計算をして「保険料」と「給付額」が出されていて、全体として「保険料」=「給付額」となるように、額が決められる。もちろん、社会の環境に合わせて計算し直し、調整が行われることはあるけど、最初から破綻しないように設計されているんだよ。

高校生 うーん、具体的にはどういう調整が行われているんですか?

先生 例えば2004年の改正で、保険料をその時点から2017年まで段階的に引き上げて、そこで固定することが決められたんだよ。今は厚生年金は標準報酬の18・3%で、国民年金は月額1万6900円だよね。また、2009年度までに基礎年金の国庫負担割合を2分の1にすることも決められた。
 
その一方で、給付される年金額については、「マクロ経済スライド」が導入されたんだ。

高校生 マクロ経済スライドというのは、何ですか?

先生 「マクロ経済スライド」とは、公的年金財政の収入の範囲内で、末永く、きちんと年金の給付を実行できるようにするため、その時々の現役世代の人口の増減や平均寿命の増減などマクロの社会情勢の変化にあわせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みのことだよ。つまり、「年金をちゃんと払えるように、きちんと保険数理で計算しながら給付額を決めています」ということだ。しっかりマクロ経済スライドで調整していけば、年金が制度的に破綻する可能性はない、ということになるんだよ。

高校生 じゃあ、もらうお金は、ちゃんと守られているってことですね!

先生 そうだね。保険数理で計算して、年金制度が破綻しないように運営している以上、支払う保険料も、もらえる給付額も、劇的に変動することはないと言えるんだ。

20年後は「1.5人で一人の高齢者を支える」は本当か


先生 社会保障の議論の中で、必ず出てくるのが「現役世代何人で一人の高齢者を支えるか」という考え方だ。
 
内閣府が発表している「高齢社会白書」平成28年版によれば、今後、65歳以上の高齢者一人を15~64歳の現役世代が何人で支えるかについて、次のようなデータが書かれているんだ。

2015年は一人を2・3人で
2020年は一人を2・0人で
2030年は一人を1・8人で
2040年は一人を1・5人で
2050年は一人を1・3人で支える

データでは「現役世代」を、15歳以上65歳未満の生産年齢人口としているけど、15歳から働く人は少ないので、実際にはもう少し厳しいデータになるはずだね。

高校生 現役世代がどんどん減っているってことですよね? 2040年は高齢者一人を1・5人で支えるなんて大変じゃないですか!

先生 確かに、この数字だけを見ると、そう思う人が多いだろうね。

もちろん決して楽な状況とは言えないけど、でも逆を言えば、政府がこの数字を出しているということは、年金数理の計算にも、厳しい少子高齢化の状況が、完全にとまでは言わないまでも、きちんと織り込まれているということだ。

それに、「1・X人で一人の高齢者を支えなくてはいけない」というロジックには間違いがあるので、これにだまされないようにして欲しい。

年金制度は「支払う人数」ではなく「金額」の問題

高校生 ロジックに間違いがあるんですか? 現役世代の人数が足りない、ということは一目瞭然ですけど……。

先生 「人数」だけで計算しているところが、このロジックの間違いだよ。
 
年金について正しく議論をするには、「人数」に「所得」をかけた「金額」を使う必要がある。年金は「人数」の問題ではなく、「金額」の問題だからね。
 
例えば、昔は高齢者一人の生活を、現役世代6~7人で支えていたことになるけど、その現役世代一人ひとりの給料は今よりも少なかった。今は、その当時より給料が上がってきているからね。給料が2倍になれば、昔の人の2人分になるよね?
 
年金財政の観点では、頭数より、一人ひとりがどのくらい稼いでいるかが重要なんだ。
 
つまり、人口が減少しても、それを上回るだけ所得が伸びていれば、大きな問題ではないということだ。

高校生 年金は金額の問題……なるほど。そうすると、お給料をなるべく増やしたほうが安心ですね。

先生 そう、重要なことは、「所得を増やすこと」なんだよ。経済を成長させて、所得を増やしていく。それが年金制度を安定させる一番のポイントなんだ。現在、その「安定的な経済成長」を日本で最も脅かしているのが、「消費増税の問題」だ。それに関してはこちらの記事で詳しくお話ししているので、そちらで確認してほしい。
 
それと、さっき「年金をもらえる額は、生涯を通じての平均給与額の4割」と言ったけど、例えば若かった頃の平均月給が10万円だったとしたら、その人の「生涯の平均給与額」はその10万円時代の分も計算に含まれる。

一方、もし経済成長の結果、現在の平均月給がかつての3倍の30万円になったとしたら、納められる保険料も3倍になることになる。そしてそこから高齢者にお金が分配される。
 
このように、賃金が上がると、それに連動して金額が調整され、経済が成長すればするほど、制度が破綻しづらくなると言えるんだよ。

「経済成長は不要だ」などと主張する人がいるけど、この年金の問題一つとっても、その発想は間違いと言える。さらにはデフレを放置、あるいは助長するような経済政策など、どれほど罪深いかが分かるよね。

高校生 じゃあ少子化問題も、年金にはそれほど関係ないって思っていいんですか?

先生 子どもの数が少なくなっても、その子たちが成長した時、完全雇用状態になり、今よりも稼ぎがいい人が増えれば、それほど問題ないよ。あと、女性の所得が増えてきていることにも注目して欲しい。働く女性は、以前と比べてかなり増えたよね。
 
そもそも現役世代の減少について、みんなオーバーに捉える傾向がある。1年で現役世代が2割も減るような話なら年金制度への影響は大きいけど、40年で2割減る程度なのであれば、影響はそれほど大きくない。単純平均すれば、1年でわずか0・5%の減少になるので、その分、経済成長できればカバーできるんだよ。
 
戦争や自然災害が起こって、一気に現役世代の人口が減った時は大きな影響が出るかもしれないけど、毎年少しずつ減っていくのであれば、大した変化は見られないんだ。
 
それと、人口減少というのは、かなり予測可能な話。実際、2002年に行った人口推計は今でもほとんど間違っていない。今は予測通りに人口が減少しているから、年金の将来もかなり予測できる。だから、あまり心配はいらないんだ。
 
台風でも進路が予測できれば被害を少なくできる。まして、人口減少はすごく先の話まで分かっているんだから、年金が破綻するようなことになるはずがないんだ。

高校生 なんだか、ちょっとだけホッとしました……。

先生 ここまで見てきたように、世間に浸透している「年金破綻説」は、大体間違っていると言える。年金の制度そのものについては、かなり持続可能性の高い制度になっているので、それほど心配する必要はないんだよ。
 
ただ、本当に公的年金が危なくなるとすれば、それは「日本が長きにわたって経済成長をしなくなった時」だ。この場合、残念ながら年金だけでなく、すべての社会保障が危機に瀕するだろう。そういう意味では、年金のために国がやるべき一番重要なことは、まさに経済政策だ。
 
これまでの記事で取り上げてきた「日銀による誤った金融政策」や「財務省による誤った消費増税政策」といった誤った政策は、今後は絶対に避けたいところだ。

高校生 結論として、やっぱり年金には入っておくべきですね。

先生 答えはイエスだね。単純に計算すれば、平均寿命くらいまで生きた人は大体得をするにもかかわらず、未納や滞納の人がいるのは、非常にもったいないことなんだ。マスコミなどによってあおられ、「どうせもらえないから、保険料を納めたくない」という若い人もいるけど、それが間違った解釈であることは、これまで説明してきた通りだ。

そもそも払った分をもらえないというのは、若死にする場合。誰にも自分の寿命が正確には分からないということを考えれば、「年金をもらえない」とする意見が、奇妙な意見だということがよく分かるだろう。
 
本来、公的年金は任意のものではなく、強制徴収の対象になっている。だから年金不安をあおる言説にだまされることなく、まずは保険料を納めて、公的年金を老後資金のベースにすることが大切なんだ。所得が少なくて、どうしても納められない時には、保険料免除の申請をしたらいいよ。

高校生 保険料が免除されるケースがあるんですか?

先生 そう、日本の場合、所得が低くて保険料を納めることができない人には、保険料免除の制度があるんだ。また第3号被保険者も、保険料を納める必要がない。

高校生 第3号被保険者……?

先生 日本の国民年金では、加入者は3種類に分けられているんだ。日本年金機構の用語解説に従えば、次のような定義になっているよ。

・第1号被保険者:20歳以上60歳未満の自営業者・農業者とその家族、学生、無職の人等、第2号被保険者、第3号被保険者でない者

・第2号被保険者:民間会社員や公務員など厚生年金の加入者(この人たちは、厚生年金の加入者であると同時に、国民年金の加入者にもなる)

・第3号被保険者:厚生年金に加入している第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者(年収が一定金額未満の人)

つまり、第3号被保険者とは、簡単に言えば「サラリーマンや公務員の配偶者で、年収が一定金額未満の人」、分かりやすい例が専業主婦・主夫ということだ。
 
なぜ、この人たちは年金を免除されるかというと、日本政府が、「低所得者や専業主婦・主夫は、社会全体として支えるべき存在である」という認識を持つからだ。その考え方に基づき、第3号被保険者の分の国民年金の保険料は、その他の第1号被保険者や第2号被保険者が肩代わりしたり、国庫から負担金を出すことによって支えているんだよ。

高校生 公的年金って、ほとほと手厚い作りになってるんですね。

先生 中には「年金の保険料を納めずに、いざという時は生活保護をもらえばいい」と考えている人もいるかもしれない。
 
実際、基礎年金の金額よりも、生活保護の金額のほうが多いから、得だと思うんだろうね。
 
でも生活保護を受ける人が、豊かな生活をできるわけではないんだ。生活保護を受けるには財産を調べられ、財産を持っていれば「そのお金で生活しなさい」と言われて、終わり。
 
仮に受けられるとしたら、ほとんど財産がない状態というわけで、そんな老後を迎えるのは、かなりのリスクと言える。
 
それよりも公的年金保険料をきちんと支払って、年金受給権を得ておいたほうが、ずっと安心できるはずだよ。

※では「老後の資金を安全に貯めるためには、公的年金以外には何がいいのか?」については、書籍『日本の老後の正体』の中に詳しく書いたので、参照のこと。

※本記事は、『日本の老後の正体』からの抜粋です。


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編集集団WawW! Publishingの公式note。現在、高橋洋一著『日本の「老後」の正体』(幻冬舎新書)の記事を無料公開中。

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コメント1件

年金の問題として大きく分けると
・世代間格差があること
・積立金が想定より早く無くなり所得代替率が急激に下がる可能性があること
ではないでしょうか??勉強し始めたばかりなので間違ってることがあったらすいません!

根本の問題はマクロ経済スライドです。
確かにマクロ経済スライドがまともに機能すれば破綻はしません。
ですが現実としてほとんど機能していません。なぜならデフレだからです。
もうすぐ消費税があがりますのでより厳しくなるでしょう。
この調子ですと所得代替率が下がりきらず世代間格差が広がるだけでなく、最悪破綻するのではないでしょうか?。
破綻と言うのは積立金が想定より早く無くなり強制的に所得代替率を下げざるを得なくなることです。(30%台もありえます)
もちろんそうなれば生きていけませんし、年金払い損となりますので、そのときは保険料や国庫負担率があがるのでしょうが、そうすれば十分な貯金もできません。
そしてこの最悪のケースに今向かっていると思ってます。
いかがでしょうか?よろしくお願いします!
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