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同じ釜の飯を食う

パンと日用品の店「わざわざ」にはちょっぴり変わった賄い制度があります。それは飲食店では珍しくもない賄いというシステムを、そのまま会社に流用して、わざわざで働いている人には毎日福利厚生として昼ごはんを一食提供するというシステムです。

大きな会社になると社食というものがあって、その中で格安でご飯を食べられるということになると思いますが、わざわざでは、全て無料全員一緒に昼ごはんを食べることを9年間続けています。会社になった現在、スタッフへの昼食の福利厚生の上限額というものが決まっているので、出社日数によって上限額を超えてしまう人には、一度お金を支給して徴収するという面倒なこともしていますが、そうやって会社法的にもクリアになっている制度がわざわざの賄い制度です。

せめて賄いではおいしいものを

自分たちで畑で野菜も栽培して、賄いを作っています

わざわざでは休息の時間=賄いの時間です。1日に1時間ほどこの賄いの時間が設けられているのですが、店の営業外の日は事務所の食堂に、店の営業日は店の厨房に、多い日で13人のスタッフが集まってきます。

開業してから数年はほぼ一人で店をやっていたので、一人でただ立ってあるものをかき込むような感じで、賄いは忙しい時間に適度にエネルギーを補給できるものという認識でしかありませんでした。ですが、正規のスタッフを雇用するようになってからは、あるものでは味気ないので、私が昼ごはんを作ってみんなで食べるという時間になっていきました。当初はできるだけ簡単なものを作って食べるという形でしたが、段々と食事を楽しむという方向になっていきました。

それは、一人暮らしのスタッフに食生活の話を聞いてみると、魚を食べていないとか、野菜があまり食べられていないとか、色々心配になってきたからです。お母さんみたいな気持ちです。せめて仕事に来た日くらいおいしくて健康的なものを。いつしか、賄いはスタッフの健康を守ったり、コミュニケーションを繋ぐ大切な時間となっていったのです。

自分らしくいられること

賄いの時間で大事なこと。それはコミュニケーション。わざわざの賄いは賑やかです。笑いで溢れていて、時にはお腹をよじって笑い転げて涙を流すこともあるくらい、盛り上がるのが日常です。

時には真剣に問題を話し合うこともあるし、馬鹿げた話も真面目な話も日常の話も、話題は時によって様々です。でも、一言も喋らない人もいるし、黙々と食べてる人もいるし、結構みんな自由です。だけど、その場所にいる人が誰も窮屈そうにはしていません。まるで家族と一緒にご飯を食べているような、とても自然な雰囲気です。

最初からそういうわけではなかった

会社内がうまくいっていない時、賄いの時間が苦痛になることがありました。人間関係がうまくいってなくても、ご飯を一緒に食べなくてはならない時間は苦痛そのもの。ゴトウさん(勤続6年目の店長です)と一緒に賄いの時間をどうにかうまく盛り上げて、モチベーションをあげようと必死に笑いを取りにいったり、賄い時間を迎えるだけでドッと疲れた日もありました。

それから試行錯誤していくうちに、同じご飯を食べる喜びを共有できることが、採用のポイントであると気がついたのです。ご飯が一緒に楽しく食べられない人は、わざわざの価値観にフィットしていないという根本的なことに気がつきました。面接時に1日しごと体験で賄いも体験してもらうことによって、この人と一緒にご飯を食べると楽しいな、自然だなという人を採用するようになってから、どんどん賄いは楽しい時間になっていったのです。

全部、平田が作ります

当番制で作っているんですか?と聞かれますが、私が毎日一人で全部作っています。出張の時は申し訳ないのですが、お弁当持参でお願いしていますが殆どそういう日はありません。自分で作る理由は、自分がおいしいと思うものを食べてもらいたいのと、自分がおいしいものを食べたいからという極めて自分勝手な理由です。要は「ねぇねぇこれ、おいしいでしょー!」ってやりたいだけです。だけど、時々ヘマをします。毎日おいしく作れるわけではなくて、失敗してごめんごめん、塩足してねとひたすら謝る日もあります。だから、多分、本当にお母さんの気持ちで作ってます。

それから、全部わざわざ取り扱いの調味料を使って仕上げています。だからお客様に聞かれた時に、みんなナチュラルに使い方を説明できるようになります。みんなの健康を考えた上で、できるだけ色々なものを。それから、外のレストランで食べておいしかった料理を再現したりすることもあります。新しい食との出会いの場を作りたいし、自分自身の原点が食であるので、みんなに文化として伝えたいという気持ちもちょっとだけあります。

料理はいつだってクリエイティブ

大体、1週間に2回ほど、直売所とスーパーでドカンと買い物をしてきます。パンの焼いている営業日はパンとスープ、サラダのような食事が中心で、それ以外は中華、イタリアン、和食、なんでも作ります。その時の旬だけ意識して作っています。特に長野に移住してきた若い人たちには、山菜やその土地の食べ物を食べさせてあげたいので、旬を大事に作っています。

春から始まるわざわざの畑50坪ほどに、30種類くらいの野菜を植えています。採れるのは6月くらいから10月いっぱいまで。この季節はトマトやズッキーニ、大根など全て自家栽培の無農薬野菜で調理します。畑から1分ほどで食卓にあがるわけで、この上ない贅沢な時間です。

わざわざには、はたけ部というのがあって、業務時間に勝手に畑に行って作業していい制度があります。やりたい人だけ参加していて、社内の2/3くらいのメンバーが集まって野菜作りを楽しんでいます。(この時間もお給料が出ています)ここはまだ未成熟でやりきれていない部分なので、もっとうまく野菜作りができるようになりたいです。

わざわざの賄い20連発

去年の夏、そうめんや冷やしうどんをみんなでつつく

畑で大量の人参を収穫してそのまま外でランチ

瀬戸の出張でお土産に焼きそばを買ってきた

冬はスープがメイン。肉団子にはわざわざのパンがつなぎに

豪快にオーブンでグラタン。小林牧場の搾りたて牛乳でベシャメルソース

おにぎりと漬物、お味噌汁の日

羽釜でパエリアを炊いてみたら失敗したけど皆おいしいって言ってくれた

野菜いっぱい入れてパスタ

クスクスにパクチーを刻んで。嫌いな人のはちゃんと抜く

沖縄出張の土産でマンゴーとドラゴンフルーツ買ってきた

夏はとにかく野菜がたくさん。これ全部畑で採れたの

新玉ねぎの胡麻和えがメインで、スープも

パンとオムレツ、スープは冬の定番

ピンクペッパーを食べたことないって言ったから、甘夏と合わせて

買い物に行くの面倒で何にもないからリゾットでいい?

昨日のうちに鶏ハム仕込んでおきました

たまご10個で卵焼き作ってみた

ゲストが来る日はちょっとだけ豪華

昨日はピンクペッパーだったけど、今日はクミンシード

今日はパンケーキ食べ放題

と、いうことで、今日の賄いもおいしかったです。みんなにおいしいと言われた時が一番嬉しいし、おいしいものを食べると元気になるし、モチベーションも上がります。料理が趣味のようなものなので、将来、経営を引退したら、賄いおばさんと草取りおばさんになって、わざわざで働きたいと思います。

ではではみなさん。また次回。

わざわざはパンと日用品の店。
http://waza2.com/
オンラインストアでも色々と販売しています。



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