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離婚時の年金分割制度②~合意分割

前回の投稿から時間が経ってしまいましたが、前回に引き続き離婚時の年金分割制度について書いて行きたいと思います。

前回は例示的に、
「ダンナさんが正社員として働いていて、その間、奥さんが専業主婦としてダンナさんの扶養になっていた場合」
(国民年金の第3号被保険者と言います)
その場合における離婚時の分割制度である「3号分割」について書いてきました。

今回は奥さん側も働いていた場合、
つまり婚姻期間のうちの何年間か、もしくはその全ての期間において会社員などとして働き、自らも厚生年金に加入していた場合の分割制度についてのお話になります。

1.合意分割制度

まず、話を分かりやすくするために、ここでの設定を整理しておきます。

①ダンナさん、奥さん共に、厚生年金の加入者として働いていた期間がある

②ダンナさんの方が奥さんよりその期間中の給料(及び厚生年金保険料が)
多かった

との設定で話を進めます。

当然、男女が逆であればこれから言う話も逆に捉えて下さい。

で、この場合の厚生年金の分割はどのようにして行われるか、と言う話です。

まず、前回の「3号分割」の場合では、ダンナさん側が支払ってきた厚生年金保険料の実績を自動的に1/2に分割して、奥さん側にその1/2を与える、と言うモノでした。
この場合、ダンナさん側の同意は必要ありませんでした。

で、今回お話する、お互いが加入していた場合の分割については、結論から言いますと、お互いの合意によってその分割割合を決めるコトになります。
これを俗に「合意分割制度」と呼んでいます。

詳しい内容に入ります。

まず、婚姻期間中の厚生年金保険納付実績の少ない方から多い方への分割になります。

これは奥さん側からはもちろん、ダンナさん側からも改定を請求できます。
相手のコトを思って分割しようか、と言うパターンですね。

当然、中にはどちらかがその改定請求(改定の割合)に応じてくれない場合もあります。

そのような場合には家庭裁判所がその按分割合を定めるコトになります。

2.請求割合の上限

ここで請求できる按分限度は、分割後の保険料実績の合計がダンナさんの額と同じ額になるまでが上限となります。

つまり、算数の話になりますが、
ダンナさんが婚姻期間中に積み立てた総額が600万円、
奥さんが積み立てた総額が400万円、
とすると計1,000万円ですよね.

分割割合は、元々奥さんが所有していた40%から、お互いが同金額となる500万円である50%までの間、
つまり40%を超え50%以下の範囲で決める、
と言う形になります。

少し言葉だけではわかりずらいでしょうか。

簡単に言うと、二人の合計額の半分まで分割が可能であって、ダンナさんの方が少なくなるまでは分割できない、と言うコトになります。

3.対象期間

次にこの合意分割制度の対象となる婚姻期間ですが、
期間的には全ての婚姻期間が対象になります。

但し、「平成19年4月以降に成立した離婚」が対象となります。

ややこしいのですが、違った言い方をすれば「平成19年4月以降に成立」した離婚であれば、それ以前の婚姻期間も対象になると言うことなんです。

これが二つ目の分割方法「合意分割」と呼ばれる制度になります。

このように離婚時には請求によって、厚生年金の記録を夫婦内で分割する二つの方法、前回紹介した「3号分割」と今回取り上げた「合意分割」の二つの制度があると言うことになります。

4.年金上は不利なことも多い

誤解しないで聞いて欲しいのですが、もしかしたらこれまででの話を聞いて
「じゃあ離婚しても半分はもらえるなら少しは安心か」とか、
「別れるなら損をしないように絶対半分は取ってやろう!」と言う考えも理論上は成り立つのかもしれません。

ただ、あくまで「年金のコトだけ」考えた場合には、離婚されるとお互いに不利なことも多いです。

たとえばダンナさんの方が年上だった場合、奥さんが65歳になるまで支給される「加給年金」や「特別加算」といった年金がもらえなくなりますし、
奥さん側からしても、もしダンナさんに先立たれた場合の「遺族年金」などがもらえなくなるなど、様々な給付が受けられなくなります。

まあ、離婚についてはもちろん、私が口をはさむべき問題ではありませんし、お金の問題ではないのでしょうが、一応、法律的にはこうなっている、と言う話をさせてもらいました。

以上、2回にわたって離婚時の厚生年金の分割制度についてお話させていただきました。

何かの参考になれば幸いです。


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