vol.6 40歳になるワタルさんへ 【出戸 康貴】

「お前に新しい世界を見せてやる」

ワタルさんと知り合ってすぐぐらいに言われた記憶があります。近くに数軒しか家がない地方の田舎で育ち、高校まで勉強と部活ばかりの真面目にしてきた僕は、ワタルさんには相当な田舎者で世間知らずだったのでしょう。東京にいると聞いていたIT系のベンチャー企業の経営者で、広い家に住み美味しいものを食べわいわい盛り上がる、というイメージ通りだったワタルさん。人生で初めて食べた神楽坂のフォアグラ、後楽園のお家で食べたスキヤキやステーキは確かに新しい世界でした。ワタルさんにもらった服はまだ着ていますが、一番評判がいいです。またください。

同時に、「お前にこの世の汚いところも見せてやる」とも言われました。ワタルさんとの飲み会は記憶に残らないものが多いですが、酔ったワタルさんがプロレス技でおとなしくさせられる姿も見ましたし、渋谷で追いかけっこもしましたね。そのせいか、同期が他人の家の壁に穴を開ける姿や、他チームもいる宿舎で深夜まで大声で騒いでいるのを笑って見るようになってしまいました。酔って体温が下がったことも、血まで吐いて大事な練習休んだことも新しい世界でした。

ワタルさんとはあまり真面目な話はしなかった気がします。それは、僕の考え方が短絡的で、慎重で内省的なワタルさんとはあまりに対照的だったからかもしれません。1年生の時にラクロスのフォームを教えられた時も、ボールがそっちに飛んでればいいでしょう、くらいに思ってました。その後、学年が進んで真面目な場に参加する機会が増えても、僕の思考回路はあまり進化しませんでした。そういう場でのワタルさんを見て、ほんと話が上手いなぁと思ってました。大学を卒業してから、言語化能力という言葉を知り、ワタルさんの言語化能力の高さに改めて感心し、言語化能力の高い人が一流なんだろなとも考えるようになりました。僕は短絡的で言語化能力が低かったため、文字通りお話にならなかったのだと思いますが、髪を切ってもらいながらいろいろな話しをしたのはいい時間でした。ワタルさんにはよくツーブロックにしてもらっていましたが、僕はあまり気に入ってはいませんでした。ただ、評判は良かったです。

綺麗であろうとなかろうとワタルさんが見せてくれた世界や、いろいろな姿を見たけどワタルさんと過ごした時間から得た何かが、今後の人生でヒントをくれることがあるんだろうと思ってます。


数年前に、Dropboxの創業者がMITの卒業式でしたスピーチを見ました。そこでは、「自分が卒業式で聞きたかった」という人生を楽しむ3つのコツが語られていました。「テニスボール」「サークル」「30,000」の3つです。犬がテニスボールを追いかけるように、無我夢中で追いかけられる自分にとってのテニスボールを見つけよう。自分に刺激を与えてくれる人を自分のサークルに含め、自分の周りの5人の平均値が自分である。人の人生は大体30,000日しかないのだから、準備や練習をしている暇なんかない。

大学時代にワタルさんと出会えたことで、Dropboxの創業者よりも早く人生を楽しむコツを知ることができたのかもしれません。ワタルさんなら、そこら辺の泥からもテニスボールを作り出しそうですが、残りの15,000日、どんなテニスボールを追いかけどんなサークルを率いるのか、お話を聞くのを楽しみにしています。


最後に、元気で健康にいることがワタルさんの義務であると思っています。不健康に突き進む姿をたまに見ますが、悲しくなります。スーパーマンだった自分の祖父の老化を感じる時と同じ感覚です。会う度に「今、自分史上最高の身体してる」と報告してきますが、それは人間ドッグの結果ですか?でも、何年か前のデブの走り方をしていた時よりはいいと思います。ワタル家に行くと、お土産でもらったという強いお酒やショットグラスが並んでいますが、僕は絶対にアルコール関連のお土産は持っていきません。少なくとも、一緒にご飯を食べるときは禁煙です。おタバコお預かり致します。

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出戸康貴/Yasutaka Deto

・プロフィール
東大ラクロス部 26期 #26

・ワタルさんとの初めての出会い
2010年のB練。蛍光色の左利き。

・ワタルさんとの一番の思い出
ワタルさん家でご飯を食べて、髪を切ってもらいながらいろいろお話しした時間

・ワタルさんに一言
いつまでもスーパーマンでいてください。

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