vol.14 人生を楽しむうえで大切なことはすべてわたるさんが教えてくれた 【深谷 周平】

わたるさんとの思い出は数え切れないほどあるのだけれど、いつが最初だったか、いざ思い出してみるとなかなか難しい。僕の記憶が間違っていなければ、わたるさんと最初に交流と呼べる交流を持ったのは、おそらく2012年、僕の2年生シーズンが終わった直後のわたるさんちでのクリスマスパーティー。「楽しいイベントはなるべく多いほうがお得だよね」ということでクリスマスパーティーと忘年会をあえて一緒にせず、年の瀬に2週連続でどんちゃん騒ぎしていた時代。今となっては少し懐かしいですね。

「わたるさんっていう面白いOBの家でクリスマスパーティーやるから一緒に行こう。途中プレゼント交換もあるから、1500円ぐらいで準備しといてー。」というざっくりとした招待状をもらい、いわゆる大学生がよくやる"クリパ"的な何かを想像しながら、当時はまだ富坂上にあったわたるさんの家に向かった僕を待っていたのは、それとは似ても似つかぬザ・カオスな宴だった。ビールも苦くて飲めなかった当時の僕は、そこで人生初めてのテキーラを飲み、人生で初めてお酒で吐き、人生で初めて記憶を失った。周りにも似たような人が何人かいたけど、その場にいる人たちがとても異様なものにみえ、それでもその輪の中にいることがとても楽しかったことは覚えている。新たな世界との邂逅だった。

そのパーティーでわたるさんから最初にもらった指令は、「このパーティーに参加する人たちは、みんなValueを発揮している。お前も何かしらのValueを自分で考えて発揮すること」。要は「Welcome、全力で楽しめ」というメッセージをわたるさんお得意の哲学的手法を通じて伝えてくれていたのだ、というのは今であれば理解できるのだけれど、文字通りにそれを受け取った当時の僕は、キッチンのお手伝いをしてみたり、食べ終わった皿を片付けて洗い物をしようとしてみたり、とまるで明後日の方向に進み、その度わたるさんには「違う、お前がValueを発揮する場所はここではない」とリビングの輪の中に呼び戻されたのが懐かしい。以降、Valueを出せ、という言葉をわたるさんから何回聞いたことか。

それ以降、わたるさんには事あるごとにいろいろな集まりに呼んでもらった。忘年会、TOKYO TOWER、ラクロス談義、お花見、etc. おいしいカルボナーラの作り方も、ステーキ肉の焼き方も、お酒の飲み方も、全部わたるさんに教えてもらった。さらに、そんな場を通じたOBや先輩の方々との繋がりは、僕のBluebulletsでの4年間、そしてそれ以降のBBコミュニティでの日々を最高のものにしてくれた。当時はわたるさんが東大ラクロス部GMの職を離れてBluebulletsとの接点がだんだん少なくなっていた時期だったから、わたるさんとの交流が増えるたびに、わたるさんをよく知らない同期や後輩からは、なんかよくわかんないOBと仲良くしているやつ、という目で見られていたような気がする。よくよく考えてみれば、それまでの僕の交友関係から考えるとわたるさんは完全に紅一点なのだけれど、ここまで仲良くさせてもらっているのは、ひとえにわたるさんの懐の深さというか人を惹きつける力ゆえなのではないかと思う。


そんな僕とわたるさんとの関係は、大学卒業後1年半ほどした時の「今度シェアハウスに空きが出るんだけど、一緒に住まない?」というお誘いから、第二章を迎えた。1階のリビングの奥の方の一角を居住スペースとして”見習い”からスタートし、途中2階に個室を授かり、最後僕が海外赴任でシェアハウスを出るまでの約2年間、わたるさんとは男4-6人、メンバーを時折入れ替えながら、片岡屋で一つ屋根の下の共同生活を送った。

一緒に生活するようになって、わたるさんの生き方、考え方に触れる機会が多くなった。わたるさんのところにはいろんな人が集まる。部活の運営で悩む人、就活で悩む人、新しい仕事環境で悩む人、とりあえず単におしゃべりしたい人…。動機は人それぞれだけれど、各自わたるさんとの会話を通じて何かを整理し、何かを腹落ちさせ、来る前より少しすっきりとした表情で自分の住処へと帰っていく。さながら、クロスに不安を抱える試合前のラクロッサーが壁打ちで調整するかのように。わたるさんは、みんながもやっと心の中で思っていてもうまく説明できていないでいることを、「それってこういうことだよね」と言語化していく能力に卓越している。やっていることといえば、各自自分の中にあるもやっとした何かをわたるさんという壁にぶつけて具現化していくという作業なのだが、実際に話をしている側からするとそうは感じられず、何か天啓を授かったかのように感じられるから恐ろしい。

かくいう自分もたくさん壁打ちさせてもらった一人。片岡屋では、一時期、日付を回ったぐらいから、キャンドルライトの灯りの下、ロックウイスキー片手に語り合う(BGMは加藤登紀子の「時には昔の話を」)というイベントを週一ぐらいでやっているときがあった。ある日、少し酔っぱらった様子のわたるさんに、今日も一杯、と誘われ集合し、飲み進めるうちに次のように言われた。「深谷、世の中は持ちつ持たれつ、Give&Takeで回っているっていうだろ?でも、実際にはGive×10&Takeでちょうどいい、というかそれぐらいの気持ちで生きていかなきゃいけないと思うんだよね。」 続いて、「最近のお前を見ているとTakeを求めるのが早すぎる気がする。僕はこれをやる、だからあなたはこっちをやってください。正しいんだけど、その考え方だといつか絶対後悔する時が来るぞ」、と。 滅多に「こうしろ」とは言ってこないわたるさんの口調がかなり強めのトーンだったこと、また、”Give×10&Take”というのがまさにわたるさんの生き方を体現しているような感じがして、今でも強く印象に残っている。


あれから1年半ぐらい経過して、海外で暮らすようになって日本の友人との距離もできて、あの時も理解したつもりだったけれど、わたるさんの言っていたことを今改めて噛みしめている。”Give×10&Take”で生きる、というのは、人生をenjoyするうえでとても大切ですね。 ”Give×10&Take”でいられるほどまだできた人間ではないけれど、せめて”Give×5&Take”でいられたらいいなぁ、と思って日々を過ごしています。

わたるさんと出会って、もう直ぐ8年。これまではわたるさんから影響を受けてばっかりだったけれど、これからはわたるさんに対しても何かしらValueを提供できるような、そんな年の重ね方をしたいなぁ、と思う今日この頃です。出会った頃とは違って、わたるさんといえども重ねる年には抗えないのか、と思う場面も最後のほうは多かったように思うけれど、やはりそこはわたるさん、これからの40代、そしてその先も変わらず、わたるさんらしく駆け抜けてほしいと思います。


わたるさん、40歳の誕生日、おめでとうございます。
日本に戻ったら、もみじのわたるスペシャル、楽しみにしています。

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深谷周平/Shuhei Fukaya

・プロフィール
東大ラクロス部 27期 #44
Valentia (2015-2017) #25
現在は南米チリに駐在中

・ワタルさんとの初めての出会い
上記参照。でも一番最初は多分1年の時に参加したB練。

・ワタルさんとの一番の思い出
同じ釜の飯を喰らった2年間

・ワタルさんに一言
また電話しますね。

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