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頭金「ゼロ」はなぜ悪い?【第5回】

■頭金「ゼロ」は借り手にやさしい?それとも売り手にやさしい?

住宅販売会社のチラシで頭金「ゼロ」といううたい文句をよく見かけるようになりました。低金利を受けて、頭金ゼロで住宅ローンを組む人も珍しくはないご時世となりました。

一見すると、これから家を買おうとしている方にとって朗報と思われるかもしれませんが、果たして本当にそうでしょうか?

手元資金もなく、現状の家計収支が変わらないまま安易に組んだ頭金「ゼロ」の家賃並みの35年住宅ローン。その正体は、世帯主の給与ダウンや単身赴任による生活費負担増など、家計変化ですぐ爆発する“時限爆弾”にほかなりません。住宅ローンが返せない最悪の事態に住宅売却代金でローン残債がまかなえればいいのですが、後述するように、頭金「ゼロ」の場合、住宅ローンだけが残ってしまう可能性が高いのです。

ローン返済が順調でも、安心はできません。
住宅資金を貯めるのに四苦八苦だったご家庭が、住宅購入後貯蓄できるとは到底思えません。貯蓄できないまま時を重ね、教育費が負担できずお子様の進路が狭められたり、大切な退職金を住宅ローン残債返済に充て、定年後の暮らしが支えられないことが十分考えられます。

■家の価値よりローン残債が大きいと借り換えや売却時に絶対困ります!

車でも家でも“本体の価値”は買った瞬間からどんどん下がっていきます。特に新築マンションは、物件価格に販売会社の販促費用や利益が上乗せされています。購入後中古物件として売却する場合は、本来の建物・土地価格で取引されることに。購入価格と売却価格が1,000万円以上乖離することもそう珍しくはありません。

住宅ローンを元利均等方式で組んだ当初は、返済額の大部分が利息に充てられ、元金はほとんど減りません。土地価格は変わらないとしても、頭金を相当入れておかない限り、購入10年以内の売却ではローン残債が残ると考えた方がよいでしょう。頭金「ゼロ」であればなおさらです。

「家を買う前から売却のことを考えるなんて…」と思う気持ちは分かりますが、何千万円もの借金をして購入する買い物に失敗は許されません。

住宅の売り手である住宅販売会社や工務店は、購入代金を貰った後のあなたの住宅ローンに責任をとってはくれません。「最後まで住宅ローンを払い切れるかどうか」、「万一払えなくなっても対処が可能かどうか」。悪いシナリオを想定した上で借入額の決定を下す必要があります。

「借りられる金額」ではなく、「返せる金額」で住宅ローンを組む。
住宅購入後もきちんと貯蓄が続けられ、家計変化があっても返すことができる安全圏内の借入で、我が家の今後の暮らしを守りましょう!

■親からのマイホーム資金贈与には特典がある

※以下、過去記事からの抜粋のため現制度と異なる記述があります※

無理のない借入額で家を購入するためには、「物件購入価格そのものを下げる」、「物件価格は下げず頭金が貯まるまで購入を待つ」の二つが考えられますが、第三の選択肢として“ご両親から資金援助を受ける”という方法もあります。

親からの住宅購入資金贈与に使えるものとして、それぞれ必要な要件はありますが「住宅取得等資金の贈与の特例」、「相続時精算課税制度」があります(※1)。

最大のメリットは、贈与税の非課税枠が増え、親から子への資金移動にかかる税金が抑えられること。

通常の贈与税の非課税枠は毎年110万円以下ですが、「住宅取得等資金の贈与の特例」を使って2014年に贈与を受けた場合、非課税枠は500万円(高省エネ・高耐震住宅の場合は1,000万円)となります。さらに「相続時精算課税制度」を併用することも可能です。

「相続時精算課税制度」は、親(祖父母)の現金資産を生前に子(孫)に渡すには良い制度です。簡単にまとめると、2,500万円までの贈与については非課税になるかわりに、将来発生する相続の時点で贈与された金額が他の相続財産に上乗せされるというもの。相続税の基礎控除が先々縮小される見込みのため、贈与する側の資産内容によってはどちらが得策か見極める必要があります。

これら制度を使って頭金を積み上げることで借入額が大幅に減れば、数十万から百万単位の利息が浮きます。毎月返済額が下がるため、貯蓄する余裕も生まれてますよね。

贈与を受けた年に確定申告する必要がありますが、通常贈与では高額になってしまう納税額を大幅に抑えることができるため、「いずれ子に財産分与を」とお考えであれば活用も一案です。

※1 住宅取得等資金の贈与を受けたとき/国税庁
http://www.nta.go.jp/taxanswer/zoyo/zouyo33.htm

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