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低単価消費財こそ、ECに力を入れるべき

 みなさんこんにちは。
マーケティングディレクター兼データサイエンティストのtohari.です。
今回は食品、飲料、サニタリー品などの低単価パッケージ商品のEC展開についてお話ししていこうと思います。「低単価の商品EC?そんなの送料が割に合わないでしょ。」と思われるかもしれません。確かに家電品や家具・インテリア、衣類などの消費財と比べますと、商品価格に対し送料が割高になってしまいますので、難しい側面を持つことは否定できません。ですが、低単価消費財には低単価消費財なりの戦い方があるはずです。そこで筆者の考えるやる理由とそのやり方についてお話ししていこうと思います。
 

なぜEC化を進めるべきか?

令和3年度 電子商取引に関する市場調査(経済産業省)

まずこちらのデータは経済産業省が公表している物販系BtoC-EC市場規模になります。2021年に公表されたものですので、データ自体は2020年までになりますが、2020年時点で12兆2,333億円というとてつもない市場規模ですが、EC化率を見るとわずか8%程度です。

一方、こちらのデータは世界の物販系BtoC-EC市場規模です。

令和3年度 電子商取引に関する市場調査(経済産業省)

世界市場ですので、市場規模はさらにとてつもない規模ですが、注目したいのがEC化率です。2020年時点で17.8%と日本の2倍以上進んでおり、25年には25%近くまで拡大することが予想されており、日本のEC市場もまだまだ拡大していける可能性が見て取れます。

次に日本でEC化が遅れているジャンルを見てみます。

令和3年度 電子商取引に関する市場調査(経済産業省)

最も遅れているのは「自動車・自動二輪車(3.23%)」ですが、次いで「食品・飲料・酒類(3.31%)」、「化粧品・医薬品(6.72%)」となっており、いわゆる低単価消費財が占めています。しかもこの数字は、おそらく「ネットスーパー」が多くを占めていると思われ、メーカーによる直販はこの数字以上に進んでいないと予測できます。

この状態を見て、仕方ない理由は簡単に思いつくかもしれません。
ですが、逆にまだやっているところがほとんどないからこそポテンシャル(逆転の可能性)があるとも考えられますし、何より、これら低単価消費財はこれまで流通・小売による強い支配力の中でビジネスを行わなければならず、本当に強いブランドでない限り、特売や在庫返品、卸値変更(マージン処理)などを余儀なくされ、販売現場は非常に複雑で厳しいビジネス環境にあると言えます。

つまり定番化されていない多くのブランドにとっては特に、これまでのビジネス構造、競争環境の中でチャンスを掴みづらい状況が続いていくわけですので、筆者はそうした状況の打開策として「EC化」をお勧めしたいと思います。
 

低単価消費財が取り組むべきECとは?

まず最初に幾つかのデータをもとにECの基本特性から見ていきたいと思います。

こちらは店舗をもつ小売業のECサイト利用者のアンケートデータです。
ご覧の通りECサイトを利用するユーザーは、既存店舗での顧客が大半を占めていることがわかります。少し古いデータではありますが、この状況は今も大きくは変わっていないと思われます。それは購買の根本にあるのは信頼性だからです。店舗をよく利用する顧客が自身の状況にあう形で場所を使い分ける、というのはとても自然なことです。そしてこのファクトをもとにメーカーのECを考えたとしても、おそらくその顧客の大半は、既に店舗等で自社商品の購入経験がある既存客(≒ブランドファン)になるであろうと予想されます。
 
続いて海外の店舗販売を主軸とした小売店のデータを2つご覧ください。

この2つのデータは、各小売店が複数の販売チャネルを利用する顧客と1つの販売チャネルしか利用しない顧客の年間の購入金額や来店・来訪頻度の違いを示したものになります。

それぞれ数字の多寡には違いがありますが、共通して言えるのは、優良顧客ほど複数の販売チャネルを使っているということです。上述したアンケートデータとも内容が被りますが、ネットチャネルの主な利用客はブランドファンである、という仮説を裏付けるものになっており、同時にネットチャネルは普通の既存客をよりロイヤル客に育てていくのに適したチャネルである、ということが示唆できます。

このことからメーカーが行うECサイトの1つの方向性が見えてきます。それは「ECサイトはブランドファン(またはブランドファン育成)のための販売チャネル」ということです。この視点が極めて重要です。
 

送料問題をいかに解決するか?

低単価商材のECにおいて問題となるのが、やはり送料です。さすがに1つ200円、300円の商品を買うのに800円の送料は出せません。

ですが、先ほど申し上げた通り、ECチャネルの主な顧客は既存客であり、ブランドファンです。そう考えますと、ユーザーも商品1つを買うためにサイトを利用するというわけでなく、ある程度のまとめ買いなどを考えているはずです。さらにもっと言えば、ブランドファンですので、ネット限定商品などへの反応も良いと考えられますし、最近ですとサブスクなども面白いアイデアかと思います。

低単価商品のECを行っているメーカーは少ないのですが、その中で面白い事例としてあるのが日清食品さんです。

日清食品さんでは、カップ麺1つから注文ができるのですが、そうした商品の他に、複数のカップ麺をまとめて花束風にパッケージして売っていたり、カップ麺デザインのネクタイや文具なども多数扱っています。もはや食品メーカーではありませんが(笑)、ブランドファンであればこうした商品もありだと思います。このようにして販売商品を増やすことができると、送料問題も自然と解消されてくるはずです。

何より大事なことは、ECの目的を「売上高」に置くのではなく、「ブランドファンの育成」とすることです。

そうすることで、ブランドファンの心をくすぐるような店舗では販売できない商品やサービスを展開するのも良いですし、そのような取り組みを通じてファンを増やしていくことができれば、既存店舗での売り上げ増も期待できるようになります。

通常ネットでファンサイト的なものを行おうとすると全て投資になります。ですがECの場合はそれ自体がビジネスでありプロモーションでもありますので、資金を得ながらプロモーションするというとても合理的なマーケテイングを展開できるようになります。

「そうは言っても、うちは日清食品のように有名なブランドでないから」という声も聞こえてきそうですが、それほど有名なブランドでなくてもそこには必ずファンのお客様がいるはずです。仮に今は規模は小さくてもそうしたファンをターゲットにしてそこから広げ、徐々にブランド力を上げていくことで、既存流通での競争力にも生きてくるはずです。

さらに今はECサイトの立ち上げもかなりローコストになっていますので、資金力がなくても十分実現性も高いと思います。
 

どのように集客するか?

最後に集客に関するアイデアをお伝えします。
一般的にECサイトに集客しようと思ったらWEB広告への出稿やSEO、SNSなどにも力を入れる必要があります。もちろんそうしたことができればなお良いですが、もっと手っ取り早い方法があります。

それは店舗での販売商品にシールを貼って、ネットキャンペーンを実施することです。応募に際してメールアドレスの入力を条件としておくことで既存客とのパイプをそこで作ることができます。

その後そのメールアドレスを用いてECサイトへの集客を進めていきます。元々店舗での購入客ですので、普通のメールよりも反応率は高いはずですし、広告などの費用をかけずに店舗での販売数(キャンペーン応募数)に応じて一気にアプローチ可能な顧客リストを獲得できます。

WEB広告だと集客のためだけの投資になりますが、上記のやり方であれば、店舗での売上を上げるための投資とECチャネルへの集約を同時に実現できるわけです。とても合理的ですし有効性も期待できるやり方だとおもいます。

 

まとめ

筆者が申し上げるまでもなく、食品や飲料、種類、化粧品、サニタリー品、スクナック菓子などの低単価パッケージ商品(メーカー)の場合、各種流通小売の支配力の中でビジネスを推進せざるを得なく、それゆえに様々な問題を抱えていると思います。そうしたビジネス構造に起因する問題は、その中で解決しようとしても、ブランド力の低い商品ほど解決が難しい状況にあると思います。

ECサイトはそうしたビジネス構造を大きく変える1つのチャンスになり得るはずです。どんな商品にもブランドファンはいるはずですので、そうしたユーザーをECサイトへ引き込み、その中で収益を得ながら更なるファンづくりを進めていくことができるのが、EC展開です。

流通にしっかりと交渉できる力をつけ、共存的にビジネスを進めていくためにも、既存流通以外の新たな販売チャネルの構築が必要ではないでしょうか?そうしたビジネスに取り組んでみたいとお考えの方は、ぜひご相談いただければと思います。個別具体的にプランをご提案させていただきます。
 
 
 
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