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エアバス、米アラバマ州向け半製品パーツを次世代型の環境対応船で輸送

欧州の航空機メーカー・エアバスは10月25日、欧州と米国の生産拠点間で動かす航空機のノックダウンパーツ(半製品)の輸送を、2026年から風力補助推進装置や新燃料によってGHG(温室効果ガス)の排出を大きく抑制する最新型のロールオン/ロールオフ船によって行うことを明らかにした。

この新型船の最大の特徴は、6つのフレットナー・ローターを備えている点にある。フレットナー・ローターとは、船上に垂直に設置したローター(円筒の回転シリンダー)の側面に当たる風を利用して前方への推進力を生み出すこと(=マグヌス効果)による風力推進システムである。
風力によって燃料消費を抑えるだけでなく、使用する燃料についても、通常の船舶用ディーゼル油とメタノールで作動する2つの二元燃料エンジンの組み合わせによって、CO2排出を減らしている。

ドイツ人技師アントン・フレットナーが開発したフレットナー・ローターは船舶の風力補助推進の有力な手段になりつつある(エアバス部品輸送船の完成予想図)

さらに、同船に搭載した最先端の航行支援システムは、大西洋を横断する際の船の航行ルートを最適化し、風による推進力を最大化し、海洋の悪条件によって引き起こされる抵抗力を最小化することを可能にしている。AIによる航行支援システムによっても、燃料消費が減り、GHG排出量が抑制されるわけである。

エアバスによると、この新しい部品輸送船隊を使うことにより、2030年までに大西洋横断の年間CO2排出量が平均6万8000トンから3万3000トンと、半分以下に削減されると見込んでいる。これは、基準年である2015年と比較して、2030年末までにエアバス・グループ全体の排出量を最大63%削減するというエアバスの取り組みに貢献するとしている。

エアバスの機体部品を輸送する超大型貨物機として有名なのは「ベルーガ」だが、同じ物量を運ぶなら航空機より船舶の方がCO2排出量が少ないのは知られた話。この新型輸送船が活躍するのは、フランスのサン・ナゼールから米アラバマ州モビールにある単通路型機の最終組立ラインまでの大西洋航路である。この間を航空機で運ぶよりずっと環境に優しい手段になると言えそう。
新型船隊の船主となるのはルイス・ドレフュス・アルマトゥールズ社で、同社が26年から順次就航するこれら高効率船舶3隻の建造/所有/運航をエアバスから委託された。

一方、エアバスの生産面で見ても、A320ファミリーの生産ペースを26年までに月産75機に増やすという目標にも、この新型船隊は大いに寄与するとしている。新型船1隻で約70個の40フィート・コンテナと、単通路型6機分(翼・胴体・エンジンパイロン・水平尾翼・垂直尾翼など)を輸送する能力を持つことになるためだ。現在使用している貨物船の場合は同型機で3~4機分しか積めないという。

世界2大航空機メーカーのうち、環境対応に敏感なEUを本拠とするエアバスが、部品の海上輸送面で大きな改革を試みた点は特筆されていいかもしれない。

2023年10月27日掲載

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