結婚式を挙げる国探し

要点をまとめて論理的に書くのが苦手だと言うことがわかったので、これからは雑誌の連載小説みたいなイメージで書いていくことにする。


「結婚式、どの国で挙げようか」「海の見える場所が良いな」

結婚式に反対していたはずの夫が、案外乗り気だ。わたしがいくつか取り寄せた海外挙式のパンフレットを見たり、ネットで海の見える島などを検索している。結婚式には家族だけしか呼ばないと決めたからか、気楽なのかもしれない。ちょっと特別な旅行気分で、更に親孝行もできるのが嬉しいのだろう。

「パラオとかもいいね、このドルフィンウェディングっていうの素敵。」

「プロポーズの場所がカンボジアだったから、カンボジアで挙げるって言うのもストーリーがあっていいね。」

わたしもこんな会話ができることが、そんな夫を見ているのが嬉しい。結婚を決めたとき、実は結婚式は半ば諦めていた。夫は、結婚や結婚式は本質的ではないと考えていて、結婚式を挙げたいわたしとは一緒にいれないと一度判断し、別れ話になったこともあるからだ。ただ、わたしはもちろん結婚式を挙げたい気持ちはあるけど、それはただのイベントだから、結婚や結婚式という形にはこだわらず、大切な人と一緒にいられればそれで良い、と思った。その気持ちが伝わったのか、別れ話から一転、3ヶ月後にプロポーズされた。

___でも、やっぱり結婚式は挙げたい。自分のためにも、ママのためにも。

わたしの母は、子ども第一優先で生きてきた。看護師という仕事をしながらも、家事を完璧にこなし、わたしや弟がやりたいと思ったことは基本的に何でも応援してくれた。5年前に父の病気が発覚してからは父の介護を本当に献身的にしていて、こんなに誰かのために生きれる人もいないよな、と尊敬している。

「でも今回の結婚式は、はるちゃんママを喜ばせるのが第一優先でしょ?僕ら二人はどこでも行けるし、うちの母親も海外行き慣れてて大丈夫だから、はるちゃんママが行きやすい場所にした方が良いね。東南アジアみたいなところとか、辺鄙なところとかはちょっと心配。」

わたしの父は3年前に他界した。両親は海外にほとんど行かず、家族旅行も国内がほとんどだった。父は日本語が通じないところに行くのが嫌いで、母はヨーロッパとかの雰囲気が大好きだけど、ひとりでは行動できない。弟もアクティブに海外旅行に行くタイプではない。家族の中で唯一わたしだけは英語が好きで海外が大好きなので、「いつかはるかに海外に連れて行ってもらおう」なんて言ってたっけ。ついにそれは叶わず、ALSという筋肉が徐々に衰えていく病気に奪われた。

いや、そんなのただの言い訳。

わたしがもっと家族との時間を大切にしていれば、海外に連れて行くことなんてできたはずだった。わたしはずっと友達との時間や自分の成長を優先してきた。海外にだって、大学生のときから年2回は行っていた。その中の1回くらい、家族旅行に当てても良かったのに。

___だから、ママだけは海外に連れて行きたい。こんなきっかけでもなければ、なかなか連れ出せないかもしれない。

「ともくんの方はお母さんだけで良いの?お父さんとか、お姉さんも、英語堪能な甥っ子くん姪っ子ちゃんも、大好きなおばあちゃんもいるじゃない。」

「親父はいいよ。てか甥っ子の受験勉強見てるから、来年は絶対無理だと思う。ねーちゃんはうるさいし。ちゃーちゃんも呼びたいけど、年齢的に海外はなかなか難しいと思うし、また別で伊豆にでも連れて行きたいな。俺もお母さんは海外旅行連れて行きたい、親孝行したいなって思ってたし。」

夫の家族はにぎやかだ。お姉さんは離婚して、今は二人の子どもを家族全員で見ている。特にお父さんは教育熱心で、今は甥っ子くんの中学受験の勉強をつきっきりで見ている。みんなからっとした明るい性格で、わたしもとても居心地が良い。ちゃーちゃんというのは父方の祖母の愛称だ。結婚すると家族の付き合いが大変とよく聞いていたけど、うちの場合は全く心配ない。

「はるちゃんママが来れそうなところだと、そんなに遠くないところで、乗り継ぎとかがあんまりないところかな。やっぱりハワイとかバリあたり?」

「でもその辺って結構みんな結婚式挙げてるからな・・・みんながやっているようなのってなんかうちらっぽくないよね。そしたら、その中でも変わったところ探そうか。ハワイなら島もたくさんあるしね。」

「そうだね、まずははるママに希望を聞いてみてよ。」

「じゃあ、今度実家に行くから、そのときにに聞いてみるね。なんかいろいろ遠慮して、二人が好きなところに行きなさいとか二人で行ってきなさいとか言いそうだけど。」

そう、母はかなり周りを気にしてしまうのだ。気にしすぎるくらいに。ママなんかが行ってもいいのかな、みたいになってしまわないように気をつけなくては。

To be continued...

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