Cut Minds Off

KICKASSRAYのベースボーカルであるみっちさんはお世辞ぬきにわたしが世界一好きなソングライターです。

KICKASSRAY、FATAL、UNITED FRONT、The Communion、Cyber Boys、そしてソロであるMichimaruとぱっと思いつくだけでも様々なジャンルのバンドやプロジェクトをやっておられてそれぞれに音源も出しており県内/県外問わずライブも行なっているという音楽無双っぷり。KICKASSRAYではベースボーカルですがFATALではピンボーカル、ユナフロではギターとパートも様々、ソロですら多彩なジャンルの曲を作っていらっしゃいます。どこからそんなに音が生まれてくるのでしょうか。


彼はもうすぐ21歳、とても若いはずなのですが、聴いている音楽をインスタのストーリーにあげているのを見ると「え、こんなものまで!?」と思うほど新旧問わず幅広い音楽を聴いていらっしゃるようです。
わたしがリスナーとして数年に渡ってライブを見たり音源を聴いたりしているだけでも、広い視野で得た刺激を音に還元してその世界がみるみる広がっていくそのさまは、ただ魅力を感じるに留まらず感動すら覚えるほどです。

少し前には「音楽やりすぎてそれ以外やりたくない病にかかっています」とおっしゃっていましたし、金沢の仲間であるLIFELESS CITYの水野さんが今年の春に発行したZINE(盟友のUP TO YOUのインタビューなども載っており面白かったです)に載っていたみっちさんのインタビューには「何かを常に作っていたいし、僕のiPhoneはアイデアでストレージが足りないくらいです」と書いてありました。

彼は水野さんと一緒にPURE ARROW Recordingsというレーベルも運営していて、定期的にレーベルイベントを開催したり金沢の若いハードコアバンドの音源をリリースしたりもしています。
さらにはみっちさんとドラムのこーたさんは音楽だけでなく、それぞれファッションブランド

Peach And Knife Co.
https://www.instagram.com/peachandknifeco/
Type of person
https://www.instagram.com/typeofperson_jp/
もやっていらっしゃいます。合同で開催しているポップアップイベントは若い世代で賑わっていましたし、よく対バンしているバンドさんなども彼らのブランドを愛用していらっしゃるのを見かけますね。

音楽も服もですけど、彼らのようなアイデアに溢れる若い世代が率先して行動して自分たちの楽しめる場をどんどん作っていき、そこに高校生をはじめとした若い子たちが集まる金沢という街はすごく素敵です。
カルチャーというものはこうやって作られていくのだなと見ていて感じます。


改めてKICKASSRAYの話を。

KICKASSRAYは金沢のとても若いバンドでメンバーさんは高校生〜大学生です。ライブハウスが好きでアンテナを張っている方なら聞いたことがあるかもしれませんが、まだまだ出会っていない方も多いのではないかと思います。

だからこんなに若いバンドがまさかこのようなクオリティの音楽をやっているなんて想像できなかったのか、ライブハウスではKICKASSRAYのライブを見た後に声も出ず呆然としている人を見るのも珍しくありませんでした。

「20歳ってもっとチャラくていいんじゃないか?この歳でこんな音楽やられたら困る、俺らどうすりゃいいの…」とおっしゃってた(きっと称賛の意味で)対バンのバンドさんもいました。
(これはライブハウス近くのコンビニ前で意図せず聞こえて来た発言だったのですが勝手に嬉しかったです笑)。


凄まじい才能とセンスがあるのですから、もし誰もが名を知るまでに売れたいと本気で思ったならチャンスは数多くあったはずなのですが、なぜか彼らはそのような方向には引っ張られることなく、媚びることもなく…。あまりにも堂々と我が道を突き進んでいっておられます。

大都市で有名なバンドと対バンというような多くの人に見てもらえる機会があっても、みんなが知るはずもない新曲中心のセットリストでやったり…涙

金沢からすごく遠方の、初めて行ったとある県でのライブのときなんて、
きっとHourglass(おそらくいちばん有名な曲)で暴れたり拳をふりあげることを楽しみにしてきたであろうお客さんたちに対し、持ち時間全て静かな曲でしっとり聴かせて会場を放心状態にさせる…なんていう暴挙に出ておられたんです。涙
(近況を知らない方には代表曲と思われているかもしれないHourglassが、最近のセトリでは「レア曲」だなんて誰が想像できたでしょうか!)

「BAD DREAM」のレコ発ツアーに至っては、そもそもBAD DREAMがセトリに入っていないことも多々ありましたね…(ああ、レコ発とは。涙)


とにかく「予習殺し」と言わんばかりの超強気なセットリスト。媚びを売らないのはいいのですけど程度っていうものがあるもんです!笑

お客さんにとってはせっかく音源聴きこんでライブに来ても、好きな曲は聴けず知らない曲も数多くあるうえに、何より彼らは変化が目まぐるしいバンドなのです。
ちょっと見ないだけで「え!?KICKASSRAYってこんな感じだったっけ???」なんてことは当たり前。

わたしもはじめは「こんなに凄いバンドなのだから有名になって欲しいな」という気持ちで見続けていたのですが、ここまで予習殺しをされるともう一般の方々にどう前もって勧めてよいかわからず涙が出てくるばかりなので、人に勧めるのはほどほどに…ただ自分は彼らの音楽を思いっきり楽しむことにしました!

KICKASSRAYの予習殺しは、自分たちの今やりたいことを思う存分のびのびとやっていらっしゃる結果であり、知名度のあるなしに関わらず楽曲やライブのクオリティは非常に高く、曲調が変わっているとしても素晴らしい音楽を次々と生み出していることには昔から全く変わりないのです。

そういやわたしが中学や高校の多感な時期に聴いていたデヴィッド・ボウイやフランク・ザッパも非常にたくさんの音楽を生み出しどんどん音楽性が変化していくタイプのアーティストでした。そういったこともあってわたしはなんの違和感もなく「変化」というものを受け入れているのかもしれませんが。

変化しているということは以前の彼らを失ったということではありません。生きていく中でさまざまなものを見て吸収して、彼らの世界がどんどん広がっていっているということです。
わたしは少なくてもこの数年、KICKASSRAYをその変化ごと楽しんでウキウキさせてもらっています。


先月、8月11日にセルフタイトルEP「KICKASSRAY」がリリースされました。


ほぼ同時にIt's youのMVが公開されました。わたしは待ちに待ったこれらを超絶リピートしながらも、MVがもうひとつあることを何となく知っていてそちらも楽しみに待っていました。すごく好きな曲だったからです。

そして先日、8月31日にようやくそのMV "Cut Minds Off" が公開されました。音楽もそれに合った独特のカラーの映像も美しく、曲の向こう側の物語を想像し引きずりこまれそうになってしまいます。


はじめてKICKASSRAYでCut Minds Offをやってくださった時のことはすごくよく覚えています。
あれは2017年7月1日の名古屋、今思えば超〜豪華な対バンの日でした。


Cut minds off は元々、みっちさんが2016年の秋に彼のソロプロジェクトとして公開していたMix Tape(SIDE-A)という音源の中の1曲で、わたしはとても気に入っていてよく聴いていました。

ソロ音源では弾き語りだったCut minds offはバンドアレンジで大幅に変わっていましたが、それまで聞き込んでいたわたしにはその名古屋のライブでイントロが始まった瞬間それだとわかって「うわあああっ!!」と大興奮しました。

ちょっと切なくて、どこかノスタルジックで記憶の奥底の何かにそっと触れてくるようなメロディ。
楽曲の素晴らしさはもちろんですが、KICKASSRAYはライブで曲の世界を表現するのがものすごくうまいバンドなんです。
メンバーはベースボーカルのみっちさん、ギターのニシマツさんとコスケさん、ドラムのこーたさんの4人。彼らはステージ上で音を出しているだけなのに、なぜ毎回こう映画を見ているかのような、地球を離れて曲という宇宙のなかに連れて行かれるような、不思議な気持ちになるのでしょうか。

まさしくNO ONE CAN ESCAPEだ。


心震えてしまいライブ後すぐに「Cut minds offすごくよかったです」と伝えにいくと「初めてKICKASSRAYでこの曲をやりました」とおっしゃっていたのであれが間違いなく初披露の瞬間でした。
(あ、やっぱり今思い返してみるとあんな豪華な対バンの日に、やっぱり誰も知らないような初披露の曲をセトリにぶっ込んでいたんですね…笑)


わたしは本当にラッキーでした!この曲が存在することを事前に知っていて、足を運べばリアルタイムで見ることができる距離にいられて、曲が変化、進化する瞬間までこの目で見届けることができたんです。

でもこれは足繁くライブハウスに通って、無名でもずば抜けたセンスを持ったバンドを自分の目で見つけ出し、何年も根気よく見続けていないとなかなか巡り会えない瞬間だとも思います。
名の売れたバンドだけ見て、若い地元バンドは知らないから見ないという人もいると思いますが、原石はどこに埋もれているかわかりません。


Cut Minds Offはその日以降セットリストに入ってくるようになりました。
たまにドラムのこーたさんがtwitterやインスタにライブ動画をあげてくださっていましたが、それをまめにチェックでもしない限り全国各地のみなさんを惑わせる「全く知らない新曲のひとつ」だったと思います。

しかしわたしは彼らのライブに通っていたので何度も聴くことができました。最初こそバンドスタイルで聴けたことに浮かれていたけど、聴けば聴くほど何てすごい曲だと思うようになり、新譜に入ることがわかった時には「ひょっとしてこの曲は歴史に残る1曲になるのではないだろうか」とまで思うようになりました。決してメジャーな存在ではない彼らの作品を、この先世の中が見つけてくれるかどうかはわからないですけど。


これから、この才能を見い出す人が増えるかもしれないし、また今までのように世界を置いてけぼりにしてKICKASSRAYは凄いスピードで先にどんどん進んでいくかもしれないし。笑
しかしそれよりわたしが今いちばん気になるのは、
「音源にもMVにもなったけれど、果たしてこの先もセットリストに入っているのか」!!

いつのまにかこの名曲がまたレア曲になる未来が来たりしてね!やめてー


いや、この先も本当に楽しみです。


話は変わりますが、音楽を聴いて楽しんでいる社会人のみなさまは自由に生きていらっしゃいますか?程度の差はあれど人間のつくった社会の中で生きるということは窮屈で息苦しいものだと思います。比較的自由に生きているはずのわたしでさえそうなのですから。

余計な面倒に巻き込まれ、疲れてため息をつき、精神状態が悪い時には世界がどんどんモノクロに見えてくるときもあったりして…


でも、みなさんにも経験ありませんか?

まだ布団から出たくないくもり空の朝の窓際で、
交通量の多い信号待ちの交差点で、
満員電車からやっと降りた駅のホームで、

それまで自分が無であるかのように白黒に見えていた光景が、イヤホンをつけて音が流れた瞬間、突然みずみずしいカラーに戻ってきたような…

音楽にはそんな不思議な力があると思います。


わたしの好きな音楽は確実にわたしの日常を彩って、うるおいを与えてくれています。
音源として残してくれているからずっと一緒に行動できます。
今回の新譜も宝物になるでしょう。

おとなに希望を与えてくれる次の世代がいるって、生きる中でどんなに心強いことか。


彼らははReal Sushi RecordsというKICKASSRAYの音源しか出していないレーベルに所属しています。CDも出していますが、今回の新譜はもちろんほとんどすべての曲がApple musicやSpotify、bandcampなどweb上で公開されています。

Apple music


Spotify
https://open.spotify.com/album/4J8gqaHL4Hy2LYPXilFHq4?si=pFnKWSyGTf25woq2Iin2zA

Bandcamp
https://kickass-ray.bandcamp.com/album/kickassray-ep


なので、どなたでも聴くことができます。
YouTubeでも世界観溢れるMVはもちろん過去のライブを見ることができます。
https://www.youtube.com/user/VisitOfficialRocks


CD欲しいけどなかなかライブへ行けない方は彼らのWEBストアで通販できます。(新譜在庫の1/3はもうなくなったそうですのでお早めに)わたしを含めディストロしている方もいますし扱っているレコードショップも各地にあります。


だけど聴く方法は何でもいいです、この先どれだけの人に彼らの音が届くかはわかりませんが、1人でも多くの人に触れてほしいです。

多くの人に触れて欲しいけど、
同時に「この音楽の価値が本当にわかる人だけでもいいかな…」とも思います。笑


まだKICKASSRAYに出会っていない、彼らの音楽を心から愛するであろうたくさんの人たちに届くといいな!


まだ学生である彼らはこの先卒業して社会に出て行きますし、この先どのような人生を歩んでいくかはわたしにはわかりません。
でも、この先もそれぞれに新しいものや大事な人たちに出会ってどんどん世界を広げていろんな想いを抱いて、そして生み出した音をこれからも聴かせてもらえたら、ファンとしてこんなに幸せなことはないなと思います。

KICKASSRAYが生み出し、残していっているすべての音がわたしには「希望」で、きっと人生に寄り添う音になると思います。





ってまとめようとしたのだけども、

ひとつ頭をよぎったのは、わたしこれ冒頭に「世界一好きなソングライターはみっちさんです」とか断言してしまっているのですが

もしも、もしも万が一、F.I.Bの曲作り担当であるドラムの健太さんが何かの間違いでこの文章を読んでしまったら…



………。
………。
ひょっとして傷ついたりしないよ…ね?汗


という全くもって余計な心配がほんとにほんのちょこっとだけ頭をかすめるわたしはやっぱり心底F.I.Bモッシュクルー


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