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気まぐれ学び日記:デューク大学講義:石油ガス産業オペレーション&マーケット⑤

ガソリン、天然ガス等のコスト構成

石油ガス産業は大きな利益をもたらすことが強調されているかもしませんが、その裏には膨大なコストがかかっています。多くの会社が破産するほどの金額です。おそらく上流から下流までどこで最も価格がかかっているか想像ができないと思いますが、発掘、ワイルドキャットの成功率、正確に貯蔵地に達成する確率、そしてそこから貯蔵地から無事オイルとガスを獲得できる確率がそれぞれ低ければコストもその分かかるということです。
まず無事に貯蔵地まで発掘できる確率は1990年代半ばより20%から70%へ改善、その後の開発成功率は80%から同じタイミングで90%まで改善をしています。

とはいえ成功率はそれぞれ100%ではないわけです。つまり、一定の確率で成功しますが一定の確率で発掘作業を諦める必要があります。その閾値は、セメントでドリルで空けた穴を固める作業がありますが、その作業をする深さをケーシングポイント(casing point)といい、この段階までドリルで発掘がされたときに、諦めるか発掘し続けるかを決定します。ただこの時点で通常の半分以上のコストがかかってしまいます。

イメージ https://horizonoilwell.com/casing-design/

油井が収益化されるまで3つのフェーズがあります。

まず、油井のフェーズ、コスト、収益の3軸で考えます。油井のフェーズは、ケーシングされる前、ケーシング後、支払い後(ペイアウト後: 利益がコストを上回る状態以降)

油井のケーシングされる前:ドリルでターゲットの貯蔵地めがけてさっ屈しますがこの段階でレベニューは無くコストがかかります。土地代や油井を掘るドリルの準備費、そして実際にさっ屈するコスト等。そしてこの段階で実際に完全な油井(complete well)が見つかれば次のフェーズ、ケーシング後に向かいます。

油井のケーシング後:ここからまた多額のコストがかかります。セメントで穴の周辺を固める、オイルやガスをフローラインを通って船やトラックなどで販売に運ばエル。生産率が下がれば今度は補修作用を行います。別の記事でも水とCO2を貯蔵地に注射して圧力を高めてガス、オイルを地上へ持ってあげて生産率を高める作業です。このようなフェーズでオイルとガスは販売に使われるため利益が生まれてきます。そしてこの利益が全体のコストを超えたときにペイアウトのフェーズになります。

ペイアウト後:子のフェーズのコストはメンテナンス費用に使われたり、また更なる補修作用に使われたりに使われます。ここから数十年にわたってガス、オイルの生産が継続することがよく多いです。

油井のコスト・利益のシェアリング

利益分配ですが、鉱業権保有者(Mineral Rights Owner)と鉱業権保有者からその土地を借りている保有者(作業利権:Working Interest Owner)がいます。鉱業権を持っている人が土地を貸しているため対価として使用料のロイヤルティの恩恵を受けます。そして鉱業権を借りている作業利権保有者がこの発掘にかかるコストを全て負担します。追加で賃貸料がかかります。場合によってはその作業利権者の下にまた別の作業利権者がいることもあります。その人に賃貸料を貸し、その利益を第一作業利権保有者が鉱業権保有者に渡すロイヤリティー分に賄う場合もあります。

一つ目の作業利権保有業者からの目線で、油井からの売上高(gross revenues)は、固定費として土地保有者へのロイヤルティ(8-12%)、二つ目の作業利権保有者ロイヤルティの支払い(10%ほど)がかかり純利益(net revenues)は77%になります。追加でオイル、ガス生成の税金が週によって変わりますがかかります。15%ぐらい。平均で7%。米国外の会社であれば連邦所得税源泉徴収(federal income tax withheld)も課されます。この税率はかなりばらばらです。また税金控除(tax credit)もありますがかなり変動します。

油井のキャッシュフロー

オイル、ガス産業はプロジェクト開始の前に多額の投資を必要とします。キャッシュフローはイメージでは実際に害すやオイルを生成する前に大きくマイナスになります。投資家は生成コスト等実際に利益が出るまでに投資判断をすることがあります。まずは鉱業権を保有するためにコストがかかります。続いて実際に発掘作業が始められて多額のコストがかかります。続いてガスやオイルが発掘されるとそれ以降利益が出てキャッシュフローはプラスになります。

イメージ https://www.promoter.com/Industries/OilandGasDevelopment/tabid/142/Default.aspx

まず初年度はドリルで発掘し9Mドルほどかかり、ガスやオイルが発掘されるまで多くの投資が必要になります。最初はそれでも3Mドルほどの赤字になります。続いて売上高が増えてくるとコストを利益が上回りペイアウトとなります(payout)。しかし、例えばそこから19年たって生産量がほとんどなくなったとき、油井を廃棄(abundand)しますがその時にも廃棄コストがかかります。

輸送コスト

炭化水素や天然ガス、ガソリンやディーゼル燃料を運ぶ必要があります。そして顧客の種類によってどこに運ぶのかが変わってきます。
住宅か商用か工場か電気か交通か等。住宅や商用セクターは天然ガスを多く使い、工場は工場で熱発生に使います、電気セクターは天然ガスで発電します。これらの天然ガスは生産コストと輸送コストは二つのセクターにかかるわけです。住宅セクターは最も大きい消費者になるので大規模に輸送できる仕組みを設ける必要があります。
つまり、市場の違いを示しているわけです。天然ガスで発電する発電会社から支払われる80%以上の金額は天然ガス生成にあてがわれ、20%はガスの伝送費(transmission cost)になります。一方で住宅部門になると、40%の支払金額が天然ガスの生成に使われ、残りが伝送・配給費(distribution fee)に使われますがこの割合は発電会社が負担する二倍になります。この理由は天然ガスは液化天然ガスが大規模に住宅エリアに配送される必要があるからです。
では交通機関はどうでしょう。ディーゼルやガソリンなど石油製品に大きく依存しています。50%-70%は原油価格、他のコストが精製、配送やマーケティング、税金などに割り当てられます。小売価格は5%ほど小さくなります。つまりガソリンオーナーは1ガロン0.1ドルの売上が上がります。他の売上は食料などガソリンスタンドでの売店から上がります。これらの税金は道路整備や配管整備などに使われます。

イメージ https://aa1car.com/library/gas_pains.htm

ガソリン代で原油の次に高いのが精製費になります。例えば1バレルの価格と1バレル(=42ガロン)のガソリン価格はシンプル・クラック・スプレッド(Simple Crack Spread)の例です。1バレルの原油が1バレルのガソリンにならないため、精製にかかる費用は3,2,1 クラック・スプレッドと呼ばれています。3バレルの原油から2バレルのガソリンと1バレルのディーゼルが生成できます。3,2,1クラックスプレッドとは、1バレルの原油の価格はつまり、2バレルのガソリンと1バレルのディーゼルを足して3で割った値になります。
3原油=2ガソリン+1ディーゼル
1原油=1/3(2ガソリン+1ディーゼル)
このように精製費の変化を1つの指標としてとらえることができます。原油価格が高くオイルガス会社が利益を上げることでこの3,2,1クラック・スプレッドを安定化させることができます。原油価格の変化はガソリンやディーゼル価格に2~3週間後に反映されます。小売りまで時間がかかるし、また保管庫(storage)が地表や地下にあり不足分はそこで賄われるためです一定期間。

イメージ https://seekingalpha.com/article/3076696-phillips-66-and-co-poised-to-profit-from-cheap-oil-and-higher-crack-spreads-until-2017


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