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めんどくさい彼氏 その3(ゲイカップルの話)

前回、前々回の話は記事の下にリンクを貼ったので、興味をもっていただけたらそちらもぜひ。

今回はその彼と行った旅行の話。

移動

海外ビーチリゾートへのパッケージ旅行。
出発地は羽田ではなく成田だった。

前回「その2」で書いたように、当時の俺たちの生活拠点は次の3つ。
1. 俺んち
2. 彼の会社の寮
3. 彼の週末用マンション

一緒に前泊して成田空港へ向かう計画だったんだけど、成田までのアクセスがいちばん良いのは彼の寮だった。でも、そこに俺が泊まるわけにはいかないので、2番目にアクセスが良い週末用マンションを前泊地に選んだ。

さて、我らが3拠点の位置関係。
俺んち ⇔ 彼の寮:車で1時間
彼の寮 ⇔ 週末用マンション:車で45分
週末用マンション ⇔ 俺んち:車で1時間30分
こんな感じ。まぁ、それぞれ遠いのよ...

で、旅行前後の移動に関して彼が言ってきたのは、
行き:「俺んち → 寮 → 週末用マンション(前泊)→ 成田」
帰り:「成田 → 週末用マンション(荷物を置くため) → 寮 → 俺んち」

おわかりいただけただろうか。
そう「車を出せ」と。
いやいや、旅行から帰ってきた翌日は普通に仕事だし、「できたら電車移動がいいなー」と柔らかくお願いしてみるも完全拒否。

彼の中では、「希望」「相談」「お願い」ではなく「決定事項」だったのだ。
その旅行のために新しく買ったスーツケースも、持っていこうとしていた荷物の量も、すべて「車移動」を前提にしていた。
「その移動はちょっと厳しいから電車にしよう?」と下から出ていたにもかかわらず、最後は怒り出す始末。

それにはさすがに俺もキレてしまい、
行き:「寮の最寄り駅で集合 → 電車で週末用マンション → 電車で成田」
帰り:「成田 → 電車で寮の最寄り駅 → 解散」
という流れに持っていった。渋々認めてもらった感じだったけど。

出発前からちょっとめんどくさい...

俺はお財布

国内の移動に関しては彼の希望通りにならなかったが、そこは楽しい海外旅行。
飛行機に乗った瞬間から二人ともテンションが上がってしまい、たちこめていた暗雲もどこかへ行ってしまった。

浮かれたまま現地のホテルにチェックインし、最初の食事は夕食だった。
ホテルにほど近いレストランに入ってメニューを眺めていると...

「あのさ、食事代とかレンタカー代とかお土産代とか他にも、旅行中の費用は全部お金出して欲しい。」
(え、なに?)

「旅行から帰ったら全部まとめて払うから」
(ほとんどカード払いだしそれでもいいか)

「なんか、自分でお金払うとテンション下がるというか、海外旅行の気分が台無しになっちゃうから」
(お、俺の旅行気分はどこに…?)

食事代とかレンタカー代とか二人で払うものをカード払いにすると、どちらかが立て替えることになるのでそれはいい。
けど、個々の支払い(お土産とかその辺で飲むジュースとか)も俺に払ってくれと。

んー、別にいいか。

秒速で自分を納得させている俺に向かって彼は続けた。

「たとえば、"全部で10万かかったよ"って教えてくれれば、ちゃんと4万払うから」
(だめ、追いつかない。俺の気持ちが追い付かない...)

俺が多めに払うのはいい。むしろそのつもりでいた。
けど、それを言うのって立て替える側じゃない?笑
疑問をぶつけたい一方で、そんなことを考えている自分の小ささが嫌だった。

彼のテンションを保つために俺のテンションは下がる一方。

不機嫌のワケ

大きなケンカも特になく迎えた最終日。
大きなケンカはなかったが、小さな小さなことが100個も200個もあり俺は少し疲れていた。

その日、彼は朝から機嫌が悪かった。空港のロビーで無言の二人。
俺が何かを感じていたように、彼も俺に対して感じることがあったんだろうな。
最終日でケンカのきっかけを作りたくはなかったが、「機嫌良くないみたいだけど、どうしたの?」と声を掛けた。

「今朝のエッチ、すごく機械的でさびしかった」

それを聞いてアゴで返事をしてしまった。
(なんかもうめんどくさ。)
そのまま成田に着くまで会話はなかった。

号泣

成田に到着し荷物を受け取ると、俺は真っ直ぐリムジンバスのカウンターに向かった。一緒に帰る気はなかった。
チケットを買う列に並んでいる俺を彼は黙って見ていた。

「じゃ、俺バスで帰るから」
そう言い放った俺を見つめる彼の顔は怒りに満ちていた。
他には何も言わず一人でバス乗り場に向かった。

家に帰り着くと、そのままベッドへダイブ。

疲れた...
重い身体を動かせずにぼんやり天井を眺めていると、帰り際の彼の形相が浮かんできた。
すげー怒ってたな…

すると、そのタイミングで彼から電話がかかってきた。

『はい、もしもし』
「(嗚咽)」
電話の向こうで彼は泣いていた。

(あぁ、あの帰り方は俺も大人気なかったな、ちょっと悪いことしたな、ごめんな)

「今さ、大きな荷物持って寮まで歩いて帰ってる(徒歩10分)」(嗚咽)
「車出してって頼んだのに一人で帰らされて」(嗚咽)
「なんで俺がこんな仕打ちうけなきゃなんないんだよ」(号泣)

「今日のことは絶対に許さないk…」

もうね、そこで電話切った。
一瞬でも"ごめん"と思った俺の気持ちを返して。

そのあとのことはご想像におまかせする。


ここまで、この元カレをネタにし悪口みたいになってしまったが、得たものもたくさんある。

どうしたら物差しの目盛りをすり合わせることができるのか。
どういう風に自分の気持ちをもっていけば相手の考えに共感できるのか。
相手の立場に立ったとき、自分は相手にどう映るのか。
相手の感情を理解しようとできているか。
ネガティブとネガティブのぶつけ合いになってしまっていないか。
お互いに成長できているか。

彼との付き合いで多くを学んだ。
こうやって恋愛偏差値を上げていかないとね。

あ、旅行代金はもらえませんでした!笑
(これも勉強)




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