エストニアのe-companyをクローズするには

エストニアにe-Companyを作るのは簡単だ。数日でプロセスが完了する。

が。

そのe-Companyをクローズするには、めっちゃくちゃ時間がかかる。

私の場合は、昨年の4月中旬に、エージェンシーにCLOSEの意思を伝えた。エージェンシーとのやり取りは、こちらがヒューと口笛を吹きたくなるほどスピーディで合理的なものだったのだが、最終的にその処理が完了したとの連絡が来たのが一昨日。そこから銀行口座内の残金を自分の個人口座に海外送金して(Wise利用)、銀行のビジネス口座を畳んだのが昨日。

実に11ヶ月かかったということになる。

ということで、ここからは、実践的で具体的な話をば。

私が契約しているエージェンシーは、XOLO(旧LeapIn)というところで、確かエストニア大使館に行った時に、この会社の広告を受け取ったのがキッカケだったように思う。いくつか他のエージェンシーも調べてみたのだが、たまたま私と同業のノマドワーカーさんが、私と全く同じ理由で会社を設立していて、そのエージェンシーを選んで良かったという記事(英語)を読んで共感したので、割と安易に決めてしまった。

 もともと何をするにも代理店を通さずに自分でやってみたいタイプなので、いざ代理店にお願いすると、物事はこんなにも簡単に進むのかということを初めて実感した。それほどに設立自体は実に簡単だったし、決算も、そもそもe-companyで経費計上できるものの範囲は限定されているのと、経費はすべてビジネス口座決済のクレジットカードで支払ったものだけだったので、非常にシンプルだった。

 決算時に私がやったことと言えば、銀行やTransferWiseやPaypalなどの口座情報を登録して、エージェンシーに対してアクセス権限を付与し、クレジットカード決済したもののINVOICEをアップロードしておくことだけだった。自動的にクレカの情報とINVOICEはマッチングされるのだが、時々マッチングできないもの(ドル決済だったり、日付の表記順が違っていたり)については、手動でマッチングしたくらいだ。

 エージェンシーがまとめてくれた書類に電子署名をつけて、税申告のポータルにアップロードしたりの細かいことはあるのだが、それも指示通りにすればOKで、日本で私個人の確定申告をやっている身としては、法人の決算にも関わらず、信じられないほど簡単に終わってしまった。

 ここで書いた通り、もしかすると近い将来に(某感染症で)私は死ぬかもしれない、残された子供達に迷惑かけたくないという思いで、海外の銀行口座のクローズ処理に取り掛かり、エストニアのe-Companyも畳むことにしたわけだ。

法人を畳むと決めたなら、最初にすることは、まずエージェンシーにその旨を伝えることだ。

 ちょうど決算処理が終わってすぐの頃だったので、私を担当してくれた人にメールでコンタクトをとった。すると、会社のクローズ処理は難しくはないし、もちろんその会社で(有償で)クローズ処理をサポートできるけれど、とにかく最終的にクローズに至るまではめちゃ時間がかかるよ、という返事が来た。彼女の提示したクローズ処理のための手数料は、こちらが考えているよりもずっと安いものだったので、即決で依頼することにした。

 そこからは、先方からの指示通りに動けばOKである。

 まず銀行に関するトランザクションを止めて、未処理のINVOICEがないようにした。先方から言われた通りに、送られてきた書類に電子署名をして返したり、サイト上にアップロードされた書類を確認して電子署名をするなどの処理があった。資本金支払の証明を銀行に出してもらったりもした。この辺りの銀行とのやり取りも超スピーディで、どのアクションひとつとっても無駄がなくて合理的で、本当に羨ましかった。日本では絶対にこうは行かないからね。

 一通りのやりとりがあっという間に終わったところで、担当してくれた女性からは、「次にアクションが必要になったら連絡するね。数ヶ月かかると思うけど」というメールが来たのが昨年の6月。

そして、今年の2月に入って「やっとクローズ処理が終わったので、最後にこの書類に電子署名して返送してね。申し訳ないけど、この書類だけはエストニア語になっているので、Google Translateを使って読んでね。ざっと説明すると、........っていうこと書いてあるから」というメールが来た。

最終的に、VAT(消費税)の還付があるので、それを受け取ってから、銀行のクローズ処理してね、とのことだった。

そして銀行のクローズ処理にとりかかった。銀行での取引に関するレポートは、すべてDropboxと連携してダウンロードしておいた。このあたりのシステム設計も、シームレスで素晴らしいものだった。その際に、Holviでは、e-Residencyカードを持つ顧客のオンラインでの銀行口座開設サービスを既にやめているので、もし次回、再度銀行口座を開こうと思ったら、現地に赴かないといけないよ、と念押しされた。

 私は、自分の年齢という個人的理由で会社を畳んだのだが、若い人で世界中を飛び回るようなノマドワーカー(今に限定すると、これができる人はほとんどいないだろうが)さんにとっては、エストニアに法人を作るというのは、良いアイデアだと思う。また、欧州向けにビジネスをしたい方には、特にメリットが多い。XOLOの対応は、100%満足の行くもので、サービス料も安い。心の底からオススメできる。

 ちなみに、こちらから海外の口座、またはその逆に送金する際は、TransferWise(現Wise社)を使うのが最も手数料が安くて確実で、着金が早い。エストニアのe-Companyは、TransferWiseでもビジネス口座を持てるのだが、なんとTransferWise内に口座を作ることができるので、非常に使い勝手が良かった。つまり米ドル口座、香港ドル口座、EUR口座のそれぞれの口座番号を持ち、その口座で受け取りができるのである(ちなみに2021年現在、日本在住の個人でもマルチカレンシー口座が持てるようになっていた)。もちろん、そのTransferWise口座の取引情報も、自動的にエージェンシーのポータルサイトに取り込めるので、決算なども簡単にできる。

 ところで、帰国後、日本に法人を設立したのだが、日本人が日本で法人を設立する方が、e-Companyを設立するよりも、ずっとずっと敷居が高かったよ(汗)。

Freeeがなかったら、無理ゲーやったわ.......。


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