「量より質」ではなく《量より本質》
2011年10月、40歳にして、20年近く続いた会社員時代が終わりました。
それからというもの、じぶんにとっての “これからの働き方とは何か” を模索しながら、悶々とした日々を過ごしたものです。
そんな状態で数か月たったある日、たまたまTwitterで見かけた「コワーキング」という言葉。そこから何かに導かれるように訪れた、東京・水道橋の、とあるコワーキングスペース。
そこの代表としばらく話したなかで、いろいろ印象に残っているのですが、そのひとつに
「もっと根本的なところから考えるべきだ」
というひとことがありました。
その当時は、物事を進めていくうえで、もう少し計画を練りなおすべきだ、というぐらいにしか受け止めていなかったように思います。
ですが、いまとなっては、じぶんなりの考えでその言葉を受け入れて、日常的に意識できるようになっているかもしれません。
あくまでじぶんが勝手に解釈したものかもしれませんけど、それが今回の《量より本質》という考え方です。
東京・水道橋を訪れ、その数か月後から始まった、全国のコワーキングスペースをめぐる旅。各地で出会ったひとたちとのつながりから、シェアハウスやゲストハウスはもちろん、それらと似て非なる所も含めた、あらゆる交流の場をたどる旅へと発展していきました。
そうした旅を3年以上も続け、たまたまたどり着いたのが新潟県の十日町市(とおかまちし)という中山間地域。
そこで立ち上げたのが、旅の集大成として、あらゆる場の遺伝子を注ぎ込んだ《住み開きの古民家「ギルドハウス十日町」》でした。
すると、立ち上げから早くも2年と2か月が経ち、延べ5,700人以上の訪問を受けるほどになりました。
お店でも宿でもない、山奥の7軒しかない限界集落にある、たった1軒の住まいに、どうしてこれほどのひとが集うのでしょうか。
その理由にも、《量より本質》が関係しているように思います。
会社という組織から離れ、個人となったとき。
会社の業績を上げて年収を増やすというよりも。
だれかのためにというよりは、じぶんのために。
つまりは「量より質」へ、意識の転換がされたのかな。
そして、旅を重ね、いろんな地域やひとたちと出会い、価値観が変わったあとには。
《量より本質》に変わっていったんでしょう。
じぶんが作ったのは、お店でも宿でもなく、基本的な《住まい》でした。
コワーキングスペース、シェアハウス、ゲストハウスなどではなく。
でもそれらの本質的な良さを取り入れて。
それが《量より本質》をつきつめて出した答えでした。
また、川一本をわたれば大都会という所から、どんどん川の上流や山のほうへと、住む地域を移してきました。
となりに誰が住んでいるかもわからないような都会の集合住宅ではなく、昔ながらのご近所どうしの支えあいが残る田舎の家に変わりました。
流行りすたりのある画一的な建築ではなく、年月を経るほどに味わいが深まり、多くのひとが感じる共通の美意識のつまった古民家を選びました。
一過性のブームとその場の拡大路線で考えるよりも、もっと本質的なところを見つめなおしたら、けっこう持続可能性のある方向転換ができるかもしれない、と思いました。
そんな考えで至った《ソーシャルな隠居》という生き方。
その選択が正しかったのかどうか。
それは死ぬまでわからないだろうけど。
これからも《量より本質》という目線で、物事をとらえていこうと思います。
* * *
そんな目線でじぶんが考案したアプリ『まちかどギルド』が、いろんなひとたちの支援と企画によって形となり、近日中に告知されます。
一過性の企画ではなく日常的なコミュニティ活動として、支えあいのなかで楽しく生きていきたいという、本質的な部分に仕掛けています。
さて、どう展開していくのか、いまから楽しみです。
よかったらサポートをお願いします。もしくはギルドハウス十日町へ遊びにいらしていただければうれしいです。