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最初に買ったのは《炊飯器》でした

大雪。
とにかく降りつづき、何も見えなくなって、積もり、凍っていく。

すべてを拒むかのような厳しさを感じるときが、たまにあります。

そんな特別豪雪地帯の新潟県 十日町市(とおかまちし)に移り住んでから、いつの間にか1,000日が経過し、3度目の冬を迎えました。


平年の倍以上が降り積もるなか、わが家「ギルドハウス十日町」にやってきてくれるひとたちが相変わらずいて、ほんとうに感謝しきりです。

先日も福岡県からの女性がいましたし(しかもまた夏に来てくれるそうです)、千葉県在住のひとは高速バスの移動中に通行止めに遭いながらも1時間半遅れで到着し、そのうえギルドに向かう坂の途中でクルマが上がれなくて、残りの10分くらい雪深い道を徒歩でやってきたというしだい。

事前に一報をもらえれば迎えに行くことが多いのですが、アポなしで突然やってくるひともいるわけで。道に積もった雪を除雪車がどかしてくれる直前だったりすると雪がいちばん積もっている状態だから、そんなふうにタイミングが悪いと大雪のなか来るのはほんとうに難儀だろうなと思います。

今冬の初めには、北海道からほぼ徒歩で旅してきたという若者が突然やってきて、そのまま1か月ほど住んでいましたね。しかも携帯電話を持たずに移動していたそうで、地元のひとがクルマで拾ってくれたからよかったものの、よくたどり着いたなあと....。出立後いちどだけ公衆電話から連絡があって、無事に西日本まで行けたとか。あのあと彼はどうしているんだろう、とたまに思い出します。


じぶんはというと、雪かきをしたり茶の間でまったりしながらも、おなかをすかせた訪問者がいつ来てもいいようにお米だけは常に炊いているんです。


そういえば、ギルドハウス十日町を立ち上げるにあたって、ほとんどがもらい物で済ませられたけど、そのなかで真っ先に新品を買ったのは《炊飯器》だったと思います。それも一度に10合くらい炊けるもので、とにかくいろんな機種を比較検討しました。だから、新潟県のお米がそもそもおいしいのでしょうけど白米と玄米どちらもいい感じに炊き上がります。

おかげで「ギルドのごはんはおいしい」と好評。みんな遠慮なく食べて足りなくなるときがあるので、炊飯器でお米が炊けたら、となりにある一升用の保温ジャーへ継ぎ足すようにしています。


ところで、この1,000日でどのくらいお米を炊いただろうか。少なくとも1.2トン、だから30kgのお米を40袋くらいかな。単純計算で1日あたり1.2kgを食べているので、それだとお米がいくらあっても足りなそうだけど、なんとかなりましたね。ことあるごとにお米を分けてくださったみなさんに感謝です。


じぶんが好きなアニメ映画『サマーウォーズ』にて。
亡くなったおばあちゃんが家族に遺した手紙には

「一番いけないのは、おなかがすいていることと、独りでいることだから...」

とありました。

ほんとうにそのとおりだな、と思います。


冒頭の写真は、3年以上かけた全国の交流の場をめぐる一人旅で、福岡県に行ったとき、たまたま初めて会ったひとが食べさせてくれた《モツ鍋》です。昨夜ちょうどモツ鍋が食卓に出て、ふとそのことを思い出しました。

じぶんにとって何が得られるかわからない、ほとんど無計画の旅。楽しいことがたくさんあったけれど、不安になることも数多くありました。

でもその先であのモツ鍋のようなあったかいおもてなしに出あえたとき、このうえなくうれしかったものです。


だからかな。
真っ先に《炊飯器》を選んだのは。
じぶんが多くのひとにそうされたように、じぶんもそうしてみたかった。

無償で何かを与えられることに抵抗を感じるひともいたけど、総じてごはんを炊いておいてよかったと思います。


そして、玄関の重い扉がまた開く。

「すみません、ここはギルドハウス十日町ですか?」

「そうですよ」

「突然すみません ... (かくかくしかじか)」

「もちろんいいですよ、どうぞ入って」
「来る途中にごはん食べた?」

「あ、いえ、ちょっとだけ...」

「なんならごはん炊けてるから、適当にキッチンで料理してどうぞ。たぶん昨日の残り物もあるはず」

「え、いいんですか?」

そんな感じで最初やり取りして、けっきょく一年以上もうちに住んだひともいましたね(笑)。

うちに来るなり、よっぽど安心したのか突然泣き出したひともいました。


大雪で視界の悪い状態でも、うちのなかであったかく過ごし、ゆったりとした気持ちでかまえれば鳥の声もかすかに聞こえるし、さてそろそろ雪かきをしようかな、なんて考えられるものです。

うちに突然やってくる見ず知らずのひとに対しても同じこと。初めは何を考えて来たんだろうというひとも、こちらの気持ちや態度しだいで視界が開けてきます。まだまだ未熟ですが、いつもおおらかに冒険者を迎えたいものです。

さて、次はどんなひとがやってくるのかな。

よかったらサポートをお願いします。もしくはギルドハウス十日町へ遊びにいらしていただければうれしいです。