電子地域通貨セッションの振り返り始め

神戸市の一大クロスメディアイベント「078」で、「電子地域通貨による地域社会のおカネの循環の未来」というセッションのモデレーターを務めさせていただきました。お陰でちょっと燃え尽き症候群気味なのですが、未来のために振り返りをnoteに残しておきたいと思います。

「What is MONEY?」という正解のない問い

これまで、「お金とは何なのか?」と考えることが多くありました。ネットで調べても、本を読んでも、それなりの問いや答えがあったりはするのですが、自分としてはずっと解決できずモヤモヤを抱えたままでいました。

何故か?

それはきっと、答えを貰っても、自分で見つけても、お金にまつわる問題そのものが解決されないままだからだと思います。

お金に纏わる問題

何をするにも、お金が必要です。自分が人から何かを得るにはお金が必要です。それだけでなく、人に何かを与える―例えば、プロダクトやサービスを提供したい場合―にもお金は必要です。勿論、タダで貰ったり、既に持っているものをあげたりすれば、お金はかかりません。しかしそれは一時的な場合であって、継続的にするのであれば、いずれにしてもお金が必要になります。そして、お金はずっと自分のところにあるだけでなく、絶えず循環してくれる必要があります。

この循環には、バランスがあります。出ていくだけでも困るし、入ってくるだけでも困る。このことからも、バランス、言い換えれば閾値があることは明白です。そして、恒常的に出る方が多いのであればマイナスになってしまうため、恒常的に入りが多い方が良い。そして、昨今では将来への不安から入りを出来るだけ多く取りたい、何なら出る方も学資保険のような貯蓄に回すほど、出来るだけ残しておきたい、そんな状況があると思います。お金の入りが足りないこと、多く出ていくことに感じる精神的ストレスは、多かれ少なかれ殆どの人が持っているのではないでしょうか。お金が社会の血液の如く機能している以上、そのストレスから解き放たれている人は、ごくごく一部だと思います。

私自身に関して言えば、独立してからは当然大変な日々を過ごしましたし、そもそも前職でも多い訳ではなかったので、ストレスを感じていました。また、コミュニティでの活動などボランティアのようなことをよくやっていましたが、「価値のあることに対して金銭が支払われない」状態には常々疑問を感じていました。ボランティア精神は確かに称賛されるべきことです。しかし、継続するには源泉が必要です。どんなに価値のある事であっても、報酬のない活動であれば拡大すればするほど活動の主体者を圧迫していきます。一方で、ボランティアの受益者がそれに依存してしまう面もあります。特に神戸では阪神大震災を機に広まったボランティアが美化して語られることが多いのですが、震災という緊急時には適切であっても、平常時にまでそれを継続することは無理があるし、無理させるために美化した表現を使っている、或いは美化した表現に誤魔化されているのなら、それは間違いだと思います。

お金の「次」を自分なりに考える

では、何でもかんでもお金で換算していく方が良いのでしょうか?それはそれで違うと私は考えていました。お金は数字であり定量化されたものです。しかしながら、定性的な価値も世の中にはあります。「嬉しい」とか「楽しい」とか、形容詞で表現される主観的な価値です。何人が嬉しいと思うかとか、5段階評価で表現するとかすれば定量的に表現することも出来なくはありませんが、必ずしも正確には表現しきれないものです。もっと言えば、言葉や数字で表すには一般化されている必要がありますが、「自分自身しか知らない感情」であれば、言葉にすら正確には出来ないかも知れません。

そういうことを考える中で、お金を介さず、労働と労働をもっと気軽に直接交換することができないか、ということを考えるようになりました。お金を生むには手続きがいります。しかし、何かをしてくれたことに対し直接何かを返す。それならば金銭的負担はない訳です。確か京都にある餃子の王将では一定時間皿洗いをすれば餃子が食べられるというのがあったと記憶していますが、極端な話、お金がなくても生きていける。言うなれば「リソースシェア」が近いです。

そうして、所謂「お金2.0」や、仮想通貨、ブロックチェーン、地域通貨、電子地域通貨について勉強し始めました。これらの仕組みを上手く使えないだろうか?中央でつくるのではなく、地方、もっと言えば個人が価値を表現することはできないだろうか?世の中に流通しているお金の総量と労働力の総量が合っていないことで不均衡が生じているとすれば、そこを解消できないだろうか?これにより、地域、日本全体が活性化しないだろうか?まずはアナログなお金を電子化して、最終的にはなくすことができないだろうか?といったことを考えるようになりました。

縁あって、078での企画検討が始まる

ちょうど時を同じくして、学生ボランティアに対してリワードを出したいと考えている仲間がいました。彼はイベント運営で学生に手伝ってもらうことが多かったそうなのですが、直接お金を返すことは難しい、しかし他の形で返せないか、電子地域通貨ならできるのでは、と考えるようになったそうです。

お互い直接の知り合いではあったのですが、そこに気付いた共通の仲間が078の運営メンバーにいました。そこでマッチングし、078を機に何か出来ないか検討を始めました。

当初は078での実証実験を考えました。しかしながらそのハードルも高かった。よって、一度有識者と現地でのプレイヤーを集めたセッションをして検討する場を設けよう、ということになりました。その上でお声がけをさせていただき、開催することになりました。

モデレーターは企画した2名のうちの片方である私が担い、担当はもう一人がすることになりました。

目的としては、神戸で電子地域通貨を導入することに価値があるか否か、可能か否か、導入するなら必要な次の行動は何か、を見出すことでした。

僕にとってのもう一つの意味

実は、このセッションには僕にとってもう一つの意味がありました。Amazonの「ほしいものリスト」で本を買っていただいたことへのお返しです。知らない人もいると思うので書いておきますが、Amazonの機能で自分が欲しいものをお気に入り登録したリストを公開し、誰かに買ってもらうというサービスがあります。独立や起業した人がよくやるのですが、僕は読みたい本を公開して、買っていただいたお礼にはレビューをお返しする、というのをやっていました。今回はその最後の本となり、アンサーソングのつもりで私は取り組んでいました。

ちなみに、購入いただいた本は「21世紀の貨幣論」というものです。この本は、貨幣の歴史から本質を紐解いており、冒頭の「お金とは何なのか?」という問いを考える上で大いに参考になります。一方で、訳者あとがきに「マネーとは何か。マネーはどのようにして生まれたのか――。それを考えれば考えるほど、深い水の奥底へと入っていく。」とある通り、必ずしも答えを断定するものではありません。問いを投げかけ、共に考えるものです。私は貨幣のことを「社会の血液」と表現しましたが、恐らく人類の最大のインフラにして根幹をなす貨幣については、どのような働き方をする人でも考える価値があり、読むことを強く推奨します。少し私の考えを言うと、同じように社会の血液のような役割を果たすものとして「情報」があり、この両者を上手く掛け合わせることが必要なように感じています。直観ですが。

セッションを開催した感想

さて、話を078に戻します。こちらのセッションでは、4人の方々に登壇いただきました。電子地域通貨を知る有識者お二人と、神戸でプレイヤーになれそうな方お二人(私も含めると3名)という座組でした。神戸で電子地域通貨を実現する可能性を議論すると言っても時間は70分しかなく、インプットも疎かには出来ませんし、内容や構成、進行についてもかなり難しいものにはなりました。お陰様で何とか乗り切ることが出来ましたし、「神戸コイン(仮)でしか食べられない猪肉があると面白い。神戸には猪が多くて困っているが、あれを私達は飼っていると捉えるのだ」とか「来年の078では是非電子地域通貨の実験を」といったアイデアも飛び出したので、非常に有意義な次に繋がるセッションに出来たと思っています。登壇された皆さんの資料を勝手に公開はできないのですが、僕がメモった内容だけを貼っておきます。本当はWEEKLY OCHIAI的な雰囲気の座談会を目指したかったのですが、到底及ばなかったことは内緒です(^^;

<保田さん>
・使う対象としてプレミアムなブツが必要
・持っていることでオシャレ感がある地域通貨を、最近のオシャレはSDGs
・神戸コインだけで食べられる猪肉
<川田さん>
・システムを軽くし、使い方を限定する
・加盟店の重要性にさるぼぼコインを使う中で気付いた
・〇〇payとの闘い
・使う人が高齢な場合、物理的なツールを挟むなど必要
・電子地域通貨はクレジットよりお金の回転率を挙げられる
・ユーザーの3分の2は女性で40~60代、中でも60代が一番多い
・アクアコインはさるぼぼコインと違い行政発行なのがポイント
・ボランティアの方もアクアコインでお金より活動履歴を残すのが目的
・会社の中でのコミュニケーションを豊かにするコインもある
・金融機関の推進で力強いスタートを
・ボトルネックはスマホとITのリテラシー
・コンセプトとストーリーの腹落ち感が大切で、全員が良いということはなく、誰かの強烈な原動力が必要
<秋國さん>
・位置情報によりレートを変える
・地域はエンターテインメント
・モノ・コト・体験
<植村さん>
・商店街発祥の店が減った、画一化されてしまった
・センター街のイベントは集客目的ではない、これで売り上げは増えず、他所との違いをどう作るかが鍵
・神戸タータンは神戸でしか買えない
・域内のWAONポイント流通多い
・地域通貨を使うとしても、仕入れの原資として円がどうしても必要
・神戸の人は神戸が異様に好き

今後の動き

さて、このnoteのタイトルを「~振り返り始め」としましたが、振り返り始めとしてはここまでで一旦終わりです。引き続き、電子地域通貨を神戸に導入するという青写真を書き直しながら進めてみようと思っています。登壇者のみなさんのプレゼン資料は勝手に公開や流用できませんが、私は何度も読み直そうと思っているのですよ…フフフ…。また、Code for xxとして取り組むことも出来ると思っているので、その辺りの動き方も視野に入れます。あとは何でしょうねー。もしかしたら神戸だけでなく、周辺地域も一緒に考えた方が良いのかも知れません。その辺りご興味あって一緒に考えたいという方、いらっしゃれば是非コメントなりメッセージなりいただければと思います!今回は振り返り「始め」なので、以降の掘り下げや動向についてはまたnoteにまとめたいと思います。



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