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従業員満足度とモチベーションとエンゲージメントって何が違うの?

最近、従業員満足度とモチベーションとエンゲージメントなどといった言葉を聞くことが多くなってきたと思います。これらは全て、従業員の状態や感情などを示す言葉ですが、実は全て意味が異なります。

自分がしっかり理解する為にも、エンゲージメントとモチベーションと従業員満足度の3つの言葉が、どういう意味でどう違うのか、いろんな情報を調査してなるべく中立に書いてみました。

はじめに

まずは、これら3つの言葉の歴史をわかる範囲で調べてみました。組織の状態をはかる指標にとって経営は切っても切れません。経営の近代化のはじまりから紐解いてみましょう。

経営の近代化のはじまり

今から100年以上前の1911年、コンサルタントの元祖と言われているF. Taylorによる「科学的管理法」がうまれ工場内の最適化や管理が行なわれることで近代化がはじまります。この科学的管理法では、タスクとノルマを管理する「課業管理」から始まり、作業時間を計測する「時間研究」、作業の効率を進める「動作研究」、全行程をマニュアル化する「見える化」、出来高ごとに報酬を変える「差別出来高給」、職種ごとに領域を明確にする「職能別組織」が特徴で各従業員の実施すべき作業内容を明確に定め管理します。人は経済人で合理的であり、損得勘定で物事を判断する。という考え方です。

そして、自動車メーカーのフォードがこの科学的管理法を取り入れ近代化し自動車の大量生産に取り組みます。フォードは従業員に利益を還元し賃金や待遇が良くなったのですが、行き過ぎた効率化は従業員をロボットのような働き方にさせ、休む暇もなく単純作業でスピードを求められた作業を強いることになり、従業員たちは悲鳴を上げる結果となりました。

この科学的管理法に異を唱えたE. Mayoがあらわれます。彼は1924年〜1932年にかけて行われたホーソン実験の中心人物で、人は合理的でなく感情によって左右される・経済的対価よりも社会的欲求を重視する。などを証明しました。彼の考え方は「人間関係論」として知られるようになります。


従業員の状態をはかる指標や理論の歴史

従業員満足度もモチベーションも影響を与えている理論が2つあります。1つは、1960年 A. Maslowの自己実現理論(欲求5段階説)で、もう1つが、1960年 F. Herzbergの二要因理論(動機づけ-衛生理論)が大きな影響を与えていると言われています。

Maslowの自己実現理論(欲求5段階説)は、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」と仮定し、人間の欲求を5段階の階層で理論化したもので、基本的欲求を下から低次の欲求で「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認の欲求」「自己実現の欲求」と高次へと向かってピラミッド状の階層を成しています。さらにMaslowは晩年、さらにもう一つの段階として「自己超越」があると発表しました。

Herzbergの二要因理論(動機づけ-衛生理論)は、アメリカ、ピッツバークで200人の技術者と経理担当者に対して行われた実験が元になっています。仕事に対するモチベーションは2つの要因からなると考えました。1つは満足に関わる「動機づけ要因」で、仕事内容に関わる「達成すること」「承認されること」「仕事そのもの」「責任」「昇進」などと、もう1つは不満をもたらす「衛生要因」で、職場環境に関わる「会社の政策と管理方式」「監督方法」「給与」「対人関係」「作業条件」などです。

この2つの理論は繋がっており、自己実現・承認・社会的欲求の一部が動機づけ要因に分類され、社会的欲求の一部・安全・生理的欲求が衛生要因に分類できます。


従業員満足度のはじまりは前身となる職務満足からはじまります。
1935年 R. Hoppockが職務満足という言葉を初めて使用したと言われています。この職務満足は「『私は、私の仕事に満足している』といわしめる心理学的・生理学的なもの、そして、環境の組み合わせである」と規定し、職務満足には仕事だけでなく、多様な要因が関連していると述べています。

その後、モチベーションでも影響を与えたHerzbergの二要因理論(動機づけ-衛生理論)の影響を受けた後、1967年 Weiss, Davis, England, LofquistによってMSQ(Minnesota Satisfaction Questionnaire)が開発されたり、1969年 Smith, Kendall, HulinによってJDI(Job Descriptive)が開発されるなど、1960年代に研究が盛んになります。しかし、1970年代にアメリカではスタグフレーション(景気停滞とインフレが同時に起こる)により研究が下火になりますが、1994年 J. L. Heskett, W. E. Sasserがサービス・プロフィット・チェーンが多くのコンサルティングファームに取り入れられ満足度調査とともに広がっていきました。


モチベーションのはじまりは、前述したHerzbergの二要因理論(動機づけ-衛生理論)が大きな影響を与えていると言われています。その後、1960年代に研究が盛んとなって以降、いろんな理論が出てきています。中でも1960年 McGregorのX理論・Y理論や、1964年 Vroomの期待理論、1965年 Adamsの公平理論、1975年 E. Deciの内発的動機づけ、1976年 McClellandの欲求理論、1984年 Locke, Lathamの目標設定理論など、いろんな理論が生まれ活用されてきています。


エンゲージメントのはじまりは、1990年 アメリカ ボストン大学心理学教授のWilliam Kahnの論文で従業員エンゲージメントという言葉が使われたこととされています。その後、Frank L. Schmidtが、アメリカの世論調査会社 Gallup社とともに従業員エンゲージメントサーベイを開発し、統計的に計測可能なものであることが注目されます。

一方、2004年 オランダ・ユトレヒト大学教授のSchaufeliとBakkerは、論文でワークエンゲイジメントという言葉を使いました。エンゲージメントと言ってもアメリカとヨーロッパで2種類生まれたのです。

2017年 Gallup社の調査で、従業員エンゲージメントが向上すると、離職防止・定着や生産性向上や欠勤や事故の低減など多くの効果があると明らかにしています。

引用元:Why is Employee Engagement Important?

欧米を中心に重要指標として取り上げられており、企業がエンゲージメントに注目しています。


それぞれの定義について

従業員満足度とは、ES(Employee Satisfaction)と言われ、企業の最大の財産は人材であるという考えのもと、経営者が企業価値を向上させるため、社内環境や業務内容などを調査することで、その名の通り「どれだけ従業員が会社に満足しているかを表したもの」になります。従業員がこれまでに経験した職場環境や給与、福利厚生、人間関係などを振り返って評価する項目が多いのが特徴です。


モチベーションとは、動機(づけ)また、刺激・やる気という意味の単語です。そして、動機は、人が行動を起こしたり、決意したりする時の直接の(心理的な)原因・きっかけまたは目的。という意味となります。その意味の通り「従業員個人の中で醸成される意欲・やる気を引き出す動機づけを表したもの」で、行動を引き起こす"動因(ドライブ)"と、外部から誘発される"誘因(インセンティブ)"で構成されています。


エンゲージメントとは、"約束"、"契約"という意味があり、2者間での関係性を指す言葉です。例えば、サービスと顧客間の関係性を顧客エンゲージメント、SNSの投稿に対してどれくらいリアクションがあったかをエンゲージメント率と呼び、エンゲージメントという言葉があらゆる業界で使われております。近年、従業員との関係性を表す言葉が2種類使われています。

1つは、企業と従業員の関係性である従業員エンゲージメントで「従業員一人ひとりが組織に愛着を持ち、従業員と企業が一体となってお互いに成長し合い絆を深める関係」になります。

もう1つが仕事と従業員の関係性であるワークエンゲイジメントで「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられるもの」と定義されています。


では、違いって何?

では、どんな違いがあるのでしょうか。いろんな情報をもとに整理して図にしてみました。

横軸は、行動の前後の状態で分けていて、モチベーションは、行動を起こすためのやる気の部分なので事前となり、従業員満足度とエンゲージメントは、行動した後の状態を表しているので事後としています。

縦軸は、人の活動状態で分けていて、モチベーションは、やる気がある状態ですし、エンゲージメントは、活力・熱意・没頭状態なので、活性しているといえます。一方、従業員満足度は、満たすことで安定や平静がうまれるのではないでしょうか。


3つの指標の定義や違いがわかってきたと思いますが、どの指標も組織やチームの状態をはかるだけでは価値は低く、数値化・可視化が活かしきれません。可視化した後で、1歩でも半歩でも組織やチームが良くなる次のカイゼンを考え実行することが大切ですね!ぜひチームで議論してカイゼンして変化していくと、良い組織やチームが世の中に溢れ日本全体が元気になりますね!

※ 歴史の部分はいろいろ調べながら書いていますので間違いがありましたら修正したいので教えてください!


余談

これらの指標で組織やチームの状態をはかる手法は、今のところ従業員サーベイとなっています。このインプットの精度向上が中期的には飛躍的進化のポイントになりそうで、従業員サーベイの精度向上だけでなくIoTなどの新しいテクノロジーによる新たなデータ収集に私は興味深々です!


UX Designerのたけてつ(@taketetsu1982)でした。個人でもnoteを書いてます。