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「人口300人以下の村で体現する、グローカルな“生き方”」 — by Studio Sonda <vol.16>


WORKS GOOD! MAGAZINE 第16弾は、数々の 著名な賞を受賞しているクロアチアのクリエイティブスタジオ Studio Sonda。彼らは数年前、自ら暮らしやすい環境を放棄し、わざわざイストリア半島にある小さな村に引っ越してきました。なぜ暮らしやすさを捨て、小さな村にスタジオを構えることにしたのか?それには彼らのゴールを達成するための並々ならぬ意思と決意が関係していました。

– まず初めにStudio Sondaについて教えてください。

クロアチア・イストリア半島中央部の人口が300人以下の小さな村ヴィジナダにあるクリエイティブデザイン&コミュニケーションスタジオです。素晴らしい景色が広がる緑の丘の上にオフィスを構えています。

現在はクリエイティブディレクター、アートディレクター、デザイナー、コピーライター、イラストレーターなどを含む15人のメンバーが所属しています。

私たちのゴールは、地域の発展に影響を与えることです。「グローカル(※1)」の重要性を広め、若いクリエイティブな人々が故郷に残り、グローバルに考え行動して成長することで、その街の持続的な成長と発展に貢献し続けることを目指しています。

※1
グローバルな視野で物事を考え、それをローカルにカスタマイズし取り入れること


Closed on Sundays


– なぜそのような小さな村でオフィスを構えることにしたのですか?

私たちは自分自身と向き合うため、また、原始的な生活を理解するためにすべてのものから距離を取ることにしました。しかしそれと同時に、インターネットや先端技術を通じて、外の世界やクライアントと確実に繋がり続けられるようにしました。自然豊かな環境で作業ができることで、ものごとの本質に立ち戻ることができていると確信しています。人生が変化や遊び心、ダイナミックかつ知的な経験で溢れていることは、新しいアイデアを生み出す上でとても有用です。

また私たちは「ライフプロジェクト」を設定しています。それは、約800平米の広大な土地を使いオフィススペースと公共スペースを組み合わせたクリエイティブセンターを建設することです。そこではデザインとコミュニケーションに関連したプロジェクトに取り組みつつ、クリエイティブに関する講義を行い、参加する人の年齢や受けた教育の程度に関わらず、クリエイティブな環境を満喫してもらいたいと思っています。現在、我々は、センターの建設に必要な金額の45%を助成してもらえるよう、EUファンドに申請していて、可及的速やかに建設を開始することができるよう、よい返事を期待しています。

この他、イストリア郊外のビジネス、教育、文化、観光レベルの向上を目指しています。発展に寄与するため、様々な課題をクリアしてイストリア半島のある候補地が選定されました。まだ沿岸部のようには観光化されていない場所です。政府やアドリア地域で過小評価されているクリエイティビティが、経済や他の側面(生産、観光など)と同様に社会に寄与できると我々は固く信じています。

– 会社の域を越えた取り組み、素晴らしいですね。具体的に決まっていることや、すでに動き出していることはありますか?

Sondaクリエイティブ・センターの中身は以下を予定しています。

1) 教育

クリエイティブ分野の様々な専門家によるプレゼンテーションや講演を開催。また地元住民参加の具体的なプロジェクトへの発展促進。

2) 社会的役割

クリエイティブ、観光、経済、環境の4分野において、ヴィジナダとイストリア(※2)に発展をもたらす一連のプロジェクトと商品の開発。

3) 観光

イストリアの観光開発に伴い、クロアチアのデザインや地元生産者を応援し、半島の観光分野の魅力を高める。

3の観光についてもう少し言うと、クロアチア・デザインのポップアップ・ショップやギャラリーを作り、クロアチアの伝統的なデザインや地元生産者によって厳選された商品に触れる機会も設けたいと考えています。

ヴィジナダやイストリア固有のイベントおよび商品をブランド化するために、現時点ですでに多くのボランティアプロジェクトが動き出しています。時間はかかりますが興味深いプロセスになるはずです。

※2 
アドリア海の奥に位置する三角形の半島。美食の地としても有名で海と山の幸の両方を味わうことができる。ワインの産地としても有名だが、観光地としてはまだまだ知られていない。

Holcim Agrocal

– ぜひとも実現していただきたいです!話は変わりますが、さきほど「原始的な生活をしつつクライアントとは繋がり続ける」と言われていましたが、クライアントとの繋がりをどのように大事にされているんでしょうか?

私たちはクライアントに対して複数の解決策を絶対に提案しないという制度を設けました。課題に対して熱心に取り組んだのなら、最後に納得できる解はクライアントと共に考えた1つしかあり得ないからです。

また、仕事の内容、クライアントのキャラクター、そしてクライアントの要望のすべてを徹底的に理解することが求められるため、理解できるまで繰り返し反芻します。そしてたくさんのチェックポイントをクライアントと共にクリアした先に、双方にとって理想的で合理的な解決策が生み出されると考えています。

多くの場合、クライアントは自分たちがどういった存在であるか、自分たちが求めているものは何か、どんなデザインやコミュニケーションが必要かを理解できていません。そのため、わかりやすい説明や前提となる知識の共有が必要であることは言うまでもありません。そうして共に課題を解決していくことで、彼らが持つ彼ら自身への疑問に対して答えを見出すことができます。この手法は簡単ではないですし、疲労も大きいですが、それと同時に面白くもあり、私たちが唯一信じる方法でもあります。

– クライアントの種類はどのような感じでしょうか?

大企業から小規模な地元の生産者など、多くのクライアントと取引をしています。

大企業は通常、自分たちをどのような位置にポジショニングしたいのか、競合他社と比較してどのような優位性があるのか​​など、依頼を頂く前から自社プロファイリングを完了していることが多いため、私たちが彼らを理解し制作フェーズに移行するまでさほど時間を要しません。一方で、彼らは時に保守的で安全なほうを選択しようとすることもあるため、それが足かせとなりクリエイティビティを低下させてしまうこともあります。

小規模なローカル企業は、何か特別でユニークなことを表現しないとマーケットで埋もれてしまうのを十分認識しているため、より開かれた実験的で新しいアイディアを好む傾向にあります。しかし、彼らにはビジョンとポジショニングが重要なことを説明するのに多くの時間を割く必要があります。

もちろん、私たちのやり方に全幅の信頼を置いてくれている会社もあります。大きな成功のためには、お互いを信頼し、自分たちの能力とスキルを信じなければなりません。

Review of Croatian design 11/12

– クライアントとはどんなスキームで契約を結んでいますか?

クライアントが私たちのオファーに合意してはじめて、プロジェクトがスタート地点に立ちます。支払いは通常段階的に行われ、プロジェクトが走りだす時、大枠の解決策を提案した時、そして完了時と、計3回に分かれます。3回をそれぞれどんな割合にするかは、状況に応じて決定します。

– では、どのような基準で仕事を受注しているか教えてください。

プロジェクトの大きさやカテゴリーは関係ありません。社会にとって危険でなく不道徳でもないなら、すべてのプロジェクトはクリエイティビティを発揮する機会になり得ます。消費者主義的で退屈と思われるプロジェクトであっても、コミュニティに価値を伝え、倫理的に受け入れられる概念を作ることは、私たちの義務だと思っています。

– ピッチにも参加されていますか?

ピッチに参加する場合は必ず参加費をもらうようにしています。ですが、クロアチアには代理店やクリエイティブスタジオが少ないので、時にはそれも困難になります。

studena water


– 対社外ではなく、対社内のお話も聞かせてください。よりよい働き方のために、会社として取り組んでいることをはありますか?

残業はほとんどなく、平日午前8時から午後4時までが就労時間です。週末やフリータイムは、プロジェクトに関連する電話があったとしても出る必要はありません。

締め切りが迫っていて、しかたなく残業や休日出勤をしてもらう場合には、残業代を支払うか、後日代休を必ず付与しています。

給料が定期的に支払われることなど当然だと思いますが、残念なことに、アドリア海地域の小さな民間企業ではそうではありません。 私たちはもちろん給料も定期的に支払いますし、ボーナスも提供しています。

それ以外にはチームのみんなでランチに行ったりすることもあります。

– リモートワークや副業は認めていますか?

必要な時に家で仕事をすることは可能ですが、家にいる間はメールやチャットでのやり取り、また、オンラインミーティングができる環境は用意してもらうようにしています。

副業に関しては許可していません。なぜなら、オーバーワークはクリエイティビティに悪影響を及ぼすと私たちは信じているからです。それは残業をさせたくない理由のひとつでもあります。

– 最後に、「良い仕事」をするのに一番大切なものは、会社としてなんだと考えていますか?

メンバーが自分の仕事を好きでい続け、いつも粘り強く、夢中になれる環境を提供することですかね。そうすれば他のこともうまくいくと思います。

※この記事内容は2019年2月公開当時のものです。

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Vol.15 :「社員の成長にコミットすることが、会社の成長につながる」 — by JED Creative

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