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冬のはじまりに。温かく繊細な作品世界の大人向け絵本3選

美しい画集を開くように、手元に置いておくだけで幸せ、時折読み返したくなる特別な絵本があります。そんな「とっておき」私の3冊をご紹介。冷たくぴんとした、冬の空気にどうしてかとても似合う気がするのです。

①『ビロードのうさぎ』/酒井駒子(ブロンズ新社)

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マージェリィ・W・ビアンコの原作を酒井駒子氏が翻訳、挿絵を担当された作品です。やや大型の判型で、しっかりとした紙質に美しく繊細な作者の絵が映えます。キャンバスに塗り重ねたような重厚なタッチで、病弱なひとりの男の子と、宝物のように大切な友達の”うさぎ”の物語が語られます。まるで一編の映画を観るように、すべての挿絵が心に焼き付くように美しい。小さなお子さんがひとりで読むにはやや長めですが文章は平易なので、ぜひ、初冬の夜長にあたたかいベッドの中で家族とともに物語の世界に浸ってみてくださいね。

②『白いねこ』/こみねゆら(偕成社)

https://www.ehonnavi.net/ehon/10759/%E7%99%BD%E3%81%84%E3%81%AD%E3%81%93/

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オーノワ夫人による17世紀の古典物語を、こみねゆら氏が美しい画と文で再現。中世期のおとぎ話の世界に実際に迷いこんだかのような、幻想的なストーリー運び、一枚一枚が肖像画のように美しい挿絵の1冊です。怪奇のような魔法譚のような、そして最後には心温まるラブストーリーとして結実する、愛ある作品世界がとても好きです。絵本という形を借りて、夢うつつに行き来するような秘密の物語を胸に抱え込んだような、ひそやかな喜びを感じます。

③おどる12人のおひめさま/エロール・ル・カイン(ほるぷ出版)


初めて手に取った時、その細密画のように独特なタッチの美しさのとりこになってしまった作品。グリム童話を再話した、シンガポール出身の鬼才・ルカインによる瀟洒な装丁にもときめく1冊です。翻訳は矢川澄子氏。表題にあるとおりに登場する12人もの姫君たちの豪華絢爛な姿にためいきをつくとともに、それぞれの特徴が描き分けられていることや、ユーモアと教訓を含んだ話運びにもつい引き込まれてしまいます。どのページも時間をかけてゆっくりと眺めれば眺めるほどに、新しい発見があるのも魅力です。

古典作品には時代も場所も超えて、やはり今の子どもたちに響く何かがあると改めて感じます。物思いが似合う季節に、ぜひお子さんと、そして大切な家族と、また、もちろん時には一人で、ミュージアムを巡るようにこれらの美しい絵本の魅力に触れて頂けたらと思います。



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