幼子と仲よくなりたい

故郷の通学路にて臨月の友へ手渡す紅葉を拾う

 昨年9月末、歌会始の詠進歌として作った。
 この歌は、友達の秋に生まれる予定の赤ちゃんの名前の候補を教えてもらったことと、学生時代は友達とよく一緒に帰っていたことを思いながら作って、宮内庁へ出す前に友達には読んでもらった。

 出産予定の一週間前に友達と会えることになった。
 友達の実家で少し話したあと、友達が「中学校まで少し散歩しよう」と言ってくれて、短歌が実景になった。

 そんな友達と赤ちゃんと半年ぶりに会えた。
 本当の意味で生まれてはじめての、赤ちゃんとの初対面。

 とてもとても楽しみにしていたけど、普段、幼子と触れ合う機会が無さすぎて、幼子との接し方が分からない。
 楽しみと同じくらい緊張もしていた。
 緊張で友達の実家まで向かう道で、筋を一本間違えて行き止まりになって焦った。

 初対面した幼子は、大人しかった。
 泣いたりキャッキャッしている幼子を想像していたけど、静かにママの腕に抱かれている幼子を見て緊張が少しずつ小さくなった。
 友達に「抱っこしてね」と言われて「抱っこの仕方もわかんないよ。教えて」と言ったら、「もう首も座ってるから大丈夫だよ~」と言われた。
 少しおもちゃで遊んだりしたあと、いよいよ「じゃあ抱っこしてみよ」となって、友達から幼子を差し出され、もちもちの身体を引き受けた瞬間、泣かせた。

「おまえ誰やねん~~」って感じで身体をそらされて、「わ~~ごめんね~~」と幼子をママへ返却。
 小学校低学年の頃の「○○くんが△△ちゃんを泣かせた~~!」の当事者の気持ちを知る。

 ママの腕の中に戻ると一瞬で泣き止むので、すごい……
 友達が「お腹の中にいるとき一緒にお散歩したんだよ~~? 声、覚えてないの~?」と幼子に話しかけているのを聞きながら、私もそのときのことを思い出してちょっとじーんとした。
 そうなんだよな~。半年早すぎるな~。
 この幼子が友達のお腹の中に入ってたんだよな~、って。

 それから何度か抱っこにトライするも、百発百中の確率で泣かせてしまい、「ごめんね~~、怪しいもんじゃないので~~」と小トトロのおもちゃで仲良くしようとしたけど、涙でうるうるのビー玉みたいな瞳にジッと見つめられていた。

 幼子の目から涙がまんまるの粒になってこぼれ落ちる。
 友達が「あーかい涙がぽろーんぽろーん、きーろい涙がぽろーんぽろーん」ってドロップスのうたを歌うのを聴きながら、「ぽろーんぽろーん」が本当の意味で分かった。
 童謡すごい。
 そして、ママすごい。
 幼子への声かけがママだな~、と思いながら友達を見ていた。

 抱っこしようとすると泣かせてしまうんだけど、手のひらに指を触れると握ってくれるので嬉しかった。
 次はいつ会えるかな。どれくらい大きくなってるのかな。
 幼子ともっと仲よくなりたい。

2023.5.4

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