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「バラバラのままでもつながることができる仕組み」を作りたい ~私が「夜の世界で孤立している女性・1万人に支援を届けるプロジェクト」を始めた理由⑥~(坂爪真吾)

夜の世界で働く1万人の女性に支援を届けることを目指すクラウドファンディングへの挑戦、残りあと18日になりました。90日間、本当にあっというまですね。

このnote記事では、上記のプロジェクトのページには書き切れなかった個人的な思いを、つらつらと書きたいと思います。

第6回目のテーマは、「バラバラのままでもつながることができる仕組み」をつくりたい です。

自分が傷つかない、誰かを傷つけないために孤立を選ぶ

今回のクラウドファンディングのタイトルには、「孤立」という言葉が入っています。

「孤立」という言葉にはネガティブな響きがありますが、風俗の世界では、「孤立しているからこそ、稼げる」「孤立しているからこそ、安心して働ける」という側面もあります。

あえて人間関係を遮断する、同業者とは一切付き合わない、特定の相手と必要以上のコミュニケーションを取らないようにする、職場では事務的・機械的な対応に徹する、全く知り合いのいない土地に出稼ぎに行く・・・などなど、自分から進んで孤立の道を選び、それによって利益を得ている人も大勢います。身バレによって家族や他人を傷つけないために、あえて孤立の道を選ぶ人もいます。

風俗の世界には、全国の店舗が参加している業界団体のような組織は存在しません。一匹狼の店舗や経営者も多く、同じ地域の同じ業種であっても、横のつながりは非常に少ないのが現状です。

キャストさんのユニオン(労働組合)のような組織もありません。働く中でトラブルにぶつかった時、団結して経営者に労働環境改善の要求やバック率を上げるための交渉をすることもできません。

「女性間のトラブルを未然に防ぐため」「個人情報が漏れること(身バレ)を防ぐため」という理由で、キャストさん同士の連絡先交換を厳しく禁止している店舗も少なくありません。

風俗の世界は、自分が傷つかないため、もしくは誰かを傷つけないために、あえて孤立の道を選んだ人たちの集う世界だと言えます。

バラバラのままでつながるために

ただし、つながらないことが利益になる時期もあれば、不利益になる時期もあります。

どれだけ他者とつながることを拒んだとしても、つながらなければいけないタイミングはあります。今回のコロナ禍は、まさにそうしたタイミングだったと言えるでしょう。

福祉や行政とはつながれなかった、あるいはつながりたくなかった女性たちの多くが、店舗の休業や自粛で生活が苦しくなった結果、福祉や行政とつながることを余儀なくされた場面も多かったと思います。

確かに、誰ともつながらないことが、生きるために最善の策になるという場面はある。しかし、好むと好まざるにかかわらず、誰かとつながらなければならない場面は、いつか必ずやってくる。

これからの風俗の世界に必要なのは、「つながれない・つながりたくない人でも、無理なく他者とつながることのできる仕組み」=バラバラの価値観を持った人たちが、バラバラのままでもつながることのできる仕組みをつくることではないでしょうか。

私の好きなミスチルの『掌』の歌詞を引用すれば「ひとつにならなくていい」「認め合えばそれでいい」といった感じでしょうか。

多様性や社会的包摂という言葉が叫ばれるようになって久しいですが、風俗をはじめとした夜の世界は、昼の世界では包摂しきれない様々な多様性を包摂してきた世界でした。(そんな夜の世界が、コロナ禍において、昼の世界から表面的なレッテルを貼られてバッシングの対象になったのは、なんとも皮肉な話ですが・・・。)

「バラバラの価値観を持った人たちが、バラバラのままでもつながることのできる仕組み」は、元々風俗が内包している文化=底力のようなものである、と考えることもできるはずです。

これまで5年間風テラスの活動に関わってきた中で、私は「バラバラの価値観を持った人たちが、バラバラのままでつながることのできる仕組みを作るためのヒントは、ソーシャルワークの世界にあるのでは」と考えるようになりました。

自分の価値観で相手をジャッジしない非審判的態度、自分の価値観をいったん脇に置いて相手の話に耳を傾ける共感的傾聴、相手の弱みではなく強みに焦点を当てるストレングス視点など、ソーシャルワークの世界には、つながりづらい人たちやつながりたくない人たちとつながるため、そしてつながりづらい人たち同士がつながるための知見に溢れています。

今回のクラウドファンディングの最終イベント:セックスワークサミット2020オンライン『新型コロナと夜の世界2 ~コロナ後の夜の世界で「貧困女子」をどう支援するか~』(9月26日)『新型コロナと夜の世界3 ~風テラス相談員が語る、コロナ禍の相談現場のリアル~』(9月30日)では、そうした点も踏まえて、これからの夜の世界に関する議論をすることができればと考えております。

いずれの回も、参加費は無料です。オンライン開催なので、全国どこからでもご参加頂くことが可能です。

26日(土)と30日(水)、サミットでお会いできるのを楽しみにしております!










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