【全文公開】対談『これからの風俗をつくる仲間たちへ』(かりんと池袋・にしやまさん×池袋サイドライン・まりな店長) 2018年10月8日

2018年10月8日、セックスワークサミット2018秋の大会(東京・渋谷区)にて行われたトークイベント『これからの風俗をつくる仲間たちへ』の内容を全文公開いたします。

日本最大の風俗激戦区・池袋でとんがったお店・グループを運営されているかりんと池袋代表のにしやまさんと、副業女子専門店・池袋サイドライン店長のまりなさんの90分間の白熱対談。

それぞれのお店の現場の話から業界を取り巻く環境、広告依存モデルからの脱却、風俗業界の働き方革命、マーケティングやコミュニティ構築、未来の業界予想図まで、多岐にわたりました。

全ての風俗業界関係者必読の内容です!

(司会:一般社団法人ホワイトハンズ 坂爪真吾)

◆業界に入ったきっかけ

にしやま 自分で言うのも変なのですが、僕は小学校の頃から中学~高校まで優等生中の優等生で、悪いことは一切しないタイプでした。 

優等生と言っても「男の子たるもの、でっかいことをして死なないといけない」ということを本気で思っている人間でして、自分で会社を興したいという思いが大学進学時からありました。

東京の大学に来て、そこからインターンを通して大手求人広告会社に入り、採用広告の仕事に関わらせて頂いて、1年働いた後に独立して起業しました。

しかし、まだ20代の前半だったのであえなく失敗して、借金も抱えることになってしまいました。

そんな時、お世話になっていたIT系の社長さんに「僕は会社を潰してしまい、仕事もお金もないんです」と言ったところ、その方が「実は自分、風俗店のオーナーなんだよね」「新しい店舗を立ち上げるんだけど、日払いスタッフとしてうちで働かないか」と言われたんです。

「日払いですか!やります!!」と即答して、そこから風俗業界入りしました。7年前の話です。最初はビジョナリーでもなんでもなくて、明日生きるお金にも困っている感じだった。

最初に入った店舗に関しては、お世話になったので悪く言うわけではないのですが「お客も女の子も騙してナンボ」ということを平気で言ってしまうところでした。

この業界はダメかもしれない・・・と思って、1か月くらいでやめてしまいました。それでも仕事が無いわけなので、求人情報で「男性」「高収入」と調べて、再び風俗店で勤めることにしました。

そこのお店にはすごくお世話になって、「この業界は面白いな」と思ったのですが、すぐに潰れてしまって。その次に経験させて頂いたのがオナクラ店で、そこでかりんと創業に繋がるオーナーと知り合いました。

その方にとても可愛がって頂いて、「人を大事にしないといけない」といった人間的な風俗経営を教えて頂きながら、5年間かりんとグループの経営をやらせて頂いています。

まりな はじめまして。池袋西口でデリバリーヘルスを運営をしているまりなと申します。上の名字が無いので、風俗っぽいですよね(笑)。

お店の在籍女性は40名ほどで、社員1名とキャスト兼任のスタッフが5~6名という規模でやっています。

私が業界に入ったきっかけは、大学2年生の時に風俗嬢として働き始めたことでした。にしやまさんと違って、私は優等生とは程遠い乱れた生活をしておりまして、毎日泊まるところが違うような大学生でした。

当時、普通のアルバイトもしていたのですが、バイト先の悪友から「それって、お金になるんじゃないの?」と言われてなるほどと思って、近くの風俗店に入店して、風俗嬢として働きはじめました。

そこから4年生まで風俗嬢兼学生として働いていたのですが、就活の時期になった時、さすがに風俗嬢一本でやるのは無理だと思い、いったん風俗の仕事をやめました。

大学卒業後は上京して、広告の制作会社にウェブディレクターとして入社しました。新入社員として一生懸命働いて、ちょっと余裕が出てきた時、「やっぱりもう一回風俗やりたいな」と思ったんです。

学生の頃にやっていた風俗の記憶が、私にとってはものすごく素敵なもので。学生であれば、まず触れ合わないような40代、50代のお客様とお話をしていく中で、お客様が奥様や上司・部下には言わないであろう悩みをポロっと話されたり、笑ったり、泣いたりを繰り返すような毎日で。すごく人間臭い世界なんですけど、これが楽しいなと思ったんです。

あの時の生活をもう一度やってみたいと思って、平日の5日間は会社で働いて、土日に12時間くらい風俗嬢として働くという生活を1年間続けました。

そんな生活が楽しいなと思いつつも、10年後、20年後に同じことを続けていけるのかなと思った時に、絶対無理だと。体力も自分の価値も確実に下がっていく。

キャストではなく、違う関わり方をしていかないと思って、自分でお店を立ち上げようと決意しました。

社会人3年目で会社に辞職願を提出して、池袋西口で今のサイドラインというお店を立ち上げました。

◆「やさしい気持ちになれる店」とは?

サイドラインのコンセプトは「副業女子」と「やさしい気持ち」です。正式には「副業女子専門店池袋サイドライン やさしい気持ちになれる店」という、メチャクチャ長い名前です。

お客様からは「副業女子のお店だよね」と言われるのですが、私としては、メインのコンセプトは後ろの「やさしい気持ちになれる店」だと考えています。

現役の時、「私はお客様から何を求められているのだろう」と考えました。最初は「ビジュアルかな」とも思ったのですが(笑)、そうではない。テクニックでもなくて。

お客様に尋ねていくと、「自分のことを一番よく分かってくれているのって、まりなちゃんだよね」と言ってもらえることが多かったんです。

お客様と心が通じ合った瞬間がある。それは私もすごく感じていて。だからこそ本指名してくださるし、長く付き合ってくださる。

それを感じて、自分がお客様に与えることができているのは「やさしい気持ち」だと分かって、それがサイドラインのコンセプトになりました。

時代の流れとしても、物を買うことよりも体験することにお金を使うようになった。AKBやユーチューバーみたいに、人とのつながりにお金を払うようになった。

サイドラインでは、ただ抜くだけ、性的な快感を得てもらうだけではなく、お客様と気持ちの部分でつながっていく、というところをコンセプトに置いています。

それに伴って、「お客様にやさしい気持ちを与えられる女の子」ってどんな女の子だろう、と考えました。

私自身、学生や会社員をやりながら副業で風俗嬢をしていたので、お客様と同じように、受検や社会人生活での辛い経験は一応持っている。そうした経験があると、よりお客様に共感できる。重要なポイントは「副業」だと思って、サブのコンセプトにしました。

坂爪 風俗は利用した後に「虚しい気持ち」「殺伐とした気持ち」になることが結構あると思います。「やさしい気持ちになれる店」というコンセプト、男性には非常に響くと思うのですが、にしやまさんはどう思われますか。

にしやま 僕はサイドラインさんが開店された直後、ツイッターアカウントができた時から知っているんですよ。

坂爪 ストーカーみたいですね(笑)。

にしやま ストーカーではないのですが(笑)、以前からまりなさんと意見や情報の交換はしていました。

「やさしい気持ちになれる店」というコンセプト、お客様の気持ちにフォーカスするというところにすごく共感しています。

うちの「かりんと」という名前の由来も、「人の手を借りないと」という意味から来ているんです。うちは手だけのソフトサービスなので、お客様の想像力が大切になる。

安くてなんでもできるという風俗店が全盛になりつつある業界状況の中で、いかに手だけでお客様に満足して頂くか。

私たちのお店は値段帯としては安いので、コストパフォーマンスは悪くないのですが、女の子ができないことも多いので、お客様にとっては都合が悪いこともある。そのため、気持ち的な部分やフェチ的な部分の充足は重要視しています。

ただ、気持ちにフォーカスするということは、うちの業種がそうだからということではなく、今後業界全体の中心になってくると思います。

人間はモノではないので、値段をつけてサービスを提供するということは、必ずしも質を全員同一にはできない。

そういう時に、いかに気持ちの充足に焦点を当てていくか。気持ちの充足自体の価値を、いかにお客様に提案していくか。こうしたことは今後大事になるのでは・・・と僕は考えていました。

だからサイドラインさんができた時、「やさしい気持ちになれる店」というコンセプトを見て、「それだよ!」「だよね!」という共感が最初からありました。

◆「次につながるステップ」として、お店をどう機能させていくか

坂爪 風俗で働いている時期がその人の生涯年収のピークになるのではなく、「次につながるステップ」としてお店をどう機能させていくかについて、ご意見を伺いたいです。

まりな 当店は、男性スタッフが一切いないお店です。店長の私と、専任スタッフが1名、キャスト兼任スタッフが5~6名います。

「次につながるステップ」については、サイドラインを立ち上げる時点から考えていました。風俗嬢から経営者になると考えた時に、どうやったらいいか分からない。女性が風俗を経営することってどういう感じなのかが分からない。

女の子がこの業界で生き残りたい、この業界で仕事を続けていきたいと考えた時に、経営者やスタッフとして業界内でキャリアアップできるというモデルケースを作りたいという考えがありました。

そのために、スタッフ兼任キャストをどんどん雇っていまして、キャリアアップのための教育をしています。

坂爪 確かに女性のキャリアプランはほぼないですよね。前例も少ないと思います。にしやまさんにお伺いしたいのですが、男性スタッフ側のキャリアプランというものはあるのでしょうか?

にしやま 僕も7年前は下積みからスタートしたのですが、男性のキャリアプランとしては、アルバイトから始まって、正社員になり、経営者になり、そこからグループマネージャーになり、最終的にはオーナーになることもあるかもしれません。

ただ、なかなかそこまでたどり着くことはなくて、それは一般の会社と同じですよね。みんなが経営者になれるわけではないので、男性側もちょっと行き詰まりを感じているところはある。

この業界の特徴として、のらりくらりと働ける、というところも確実にあります。今の仕事やお給料に満足して、スタッフとして働き続けたいという人もいる。何も考えずに運転してお金がもらえるという状況がいい、というドライバーの男性もいる。

一方で、この業界に入ってくる人の中には、「自分で何かもう一度やってみたい」という上昇志向のある人もいる。オーナーになって、お金が貯まったから別の事業を起こして・・・という人もいます。

サラリーをもらっていれば満足という人もいれば、そうでない人もいる。それは一般企業と変わりない。

ただ、この業界は現金の昇給は早いです。一般の仕事であれば、一年間働いても数千円しかお給料は上がらないけど、この業界はやはり個人事業的で、1か月で数万円あがることもある。役職手当なども含めれば、現金給与としては、普通の会社よりも収入的なステップアップは早い。それをどう捉えるか。

最近、20代中盤過ぎのキャストさんの中で、自分でお店をやってみたいという人や、講師業として独立して仕事をされる方が増えているなと感じています。これは男性のキャリアにはない。現役のキャストさんだからできることですよね。

坂爪 男女間の差以外に、経営者の世代間の差もあると思います。世代によって、風俗観や女性観がかなり違ってくると思うのですが、いかがでしょうか。

にしやま 世代間の差はものすごくあると思いますね。最近は世論もあるので是正されてきているとは思うのですが、50~60代の経営者は、言い方が悪くて申し訳ないのですが、女性を「所有物」として考えている方が多いです。「俺の店にいる子は、俺の所有物だ」と。

一方、40代の経営者には、ビジネスマンの方が多い。現在の風俗業界で主に活躍されている方は、オーナー経営者が40~50代なんです。

これは風営法の改正が大きいと思います。彼らが30代後半の時に、法改正でサラリーマンでも届出を出せば風俗店を経営できるようになり、ビジネスマンが参入してきた。ヤンキー文化がビジネスマンの文化に代わり、働く女性との間で利害関係が発生するようになった結果、女性を所有物だとは見なさなくなった。

ただ、女性を所有物のように見ていた時代の名残は少なからずあるので、「女性はなんでもやってくれる」「それで自分たちの店は成り立っている」という感覚はまだ残っていることもある。

そうした感覚は、僕たちの世代では変わってきている。30代で店長や社長になっているメンバーは、女性を所有物とは当然見ていない。

お互いに利害関係の発生している中で、女性と自分たちの人生とキャリアプラン、それぞれがどうなっていくのかを考えている。

そうした中で、まりなさんのような女性が台頭してきているのが20代の経営者だと思います。

これは、日本社会の中でのお金の面での「逃げ切り」に関係が深いと思うんですよ。50代の方は、年金もまだ若干もらえるし、今の段階では逃げ切り世代に入っている。40代はギリギリ。僕を含めた30代、20代は間違いなく逃げ切れない。

そのおかげで、これからどうやって生き延びるべきかを真剣に考える世代になっている。だからこそアクション数が多い。今までのやり方ではダメなんだろうなと感じている世代です。

◆デリヘルが飽和した時代の生存戦略を考える

坂爪 ヤンキー文化の50代は「所有物」、ビジネスマン文化の40代は「商品」、30代以下は「同じ人間として」女性のことを考えている傾向がある、ということですね。

続いて、デリヘルが飽和した時代の生存戦略を考えたいと思います。新規参入が増えて、お店も増えて、女性も増えて、価格競争も起こって・・・という状況の中、デリヘル業界は「広告依存型」のビジネスモデルに陥っていると言われています。

インターネット上での広告宣伝が中心で、広告にたくさんお金をつぎ込めるところが勝つ。数字を追いかけるだけ、という形になっている。

こうした現状に対して、お二人がどのような認識をお持ちになっているのかをお伺いしたいと思います。

まりな シティヘブンという巨大な風俗情報サイトがあります。風俗業界におけるホットペッパーのようなものなのですが、そこにお金を払って、お店の情報がサイト内の上位に表示されれば電話が鳴る仕組みになっている。

サイドラインでは、シティヘブンがオフィシャル(公式)の営業サイトになっています。創業から2年経って、ようやく「池袋 デリヘル」の検索ワードで一位を取れるようになってきてはいるのですが、最初は161位とかでした。当然、電話は全く鳴らない。誰も観てくれない。

広告費も大手さんのようにかけられない。女の子も少ない。そういった状況で、サイドラインでは費用対効果の高いお客様として、風俗への来店回数の高いヘビーユーザー層の中で、大手が取り切れていないところを狙っていこうと思いました。

そのための「副業女子専門店」「やさしい気持ちになれる店」というコンセプト、そのための池袋という土地、そのためのキャスト兼任スタッフ・・・という形で設計しています。

最初の頃、結構騒がれた企画として、「言い値チャレンジ」がありました。「今の60分、どうでしたか?料金はお客様の言い値で構いません」という企画です。

普通のお店であれば考えられないのですが、私自身がキャストをやっていたので、バックが発生しないからできた。

これをやるとどういうことが起こるかというと、ヘビーユーザーの人たちが「なんだあの店は」と認知してくれる。小さな企画ですが、ヘビーユーザーの方に届くようなことを積み重ねていって、認知してもらう。そういうことから始めていました。

にしやま 今の話の流れでこれを言うのもあれですが、サイドラインさんはメチャメチャ広告依存型だよね。逆にうちは、オフィシャル(自社制作の公式サイト)を強くしようという発想でやっています。

まりな うちはオフィシャルのホームページがないんですよね。

にしやま それは選択と集中だから。大手に勝とうと思ったら、集中するしかない。

坂爪 ヘビーユーザーを狙うと、広告依存型にならざるを得ない、ということでしょうか。

にしやま そういうわけでもないのですが、脱却は難しいですね。コンセプトとキャストさんのクオリティで勝負するお店の場合、中級価格帯以上のお店では、どうしても広告に依存しないといけないと思います。

広告に依存しない店というのは、お客様に対して分かりやすい店。例えば「日本一安い」店や「日本一高い」店は、検索もされやすいので、広告に依存しなくていい。

僕たちはオフィシャルを強くするために、積み上げ式で広告を使っています。ちょっとずつ広告を出して、ちょっとずつ強くしていく・・・というスタイルでお客様を拡げてきた店です。お店を立ち上げる際には、ある程度広告に依存しないと難しいなと思います。生半可では立ち上がらない。

◆真似できない「リアルイベント」戦略

坂爪 多額の広告費を使える大手しか勝てない、新しいお店は企画で勝負するしかない、という状況への打開策として、サイドラインさんが実施しているイベントの内容について、ご説明いただきたいのですが。

まりな サイドラインでは、お客様を30~50名、女の子を5~10名集めたリアルイベントを毎月やっています。先月も、AV撮影でよく使われる「例のプール」という場所で水着パーティをしました。

お客様にとっては、女の子の顔を実際に見れるので、次の指名につながりやすい。スタッフとも絡めるので、自分の意見をお店に伝えやすい。

女の子からすると、イベントに来られるお客様はヘビーユーザーの方が多いので、太客に自分をPRできる機会になる。

サイドラインでは、女の子が全員副業として働いているので、風俗専業で働いている子よりも、長期目線で考えることができる。今日一日の売上よりも、次の1か月の売上を考えることのできる女の子が揃っている。短期目線ではなく、長期目線。

リアルイベントへの参加に関しては、女の子には一切ギャラを支払っていません。「その日一日でいくら稼ぐ」ではなく、「次の一カ月でお客様が来てくれればいいな」という目線の女の子を集めているからこそできる施策なのかなと考えています。

坂爪 サイドラインさんのリアルイベント、私も初めて聞いた時は衝撃としか言いようがなかったのですが、逆にこうしたリアルイベントがこれまで開催されてこなかった理由について、にしやまさんはどうお考えですか。

にしやま まりなさん、今さらっと説明されていましたが、これ、メッチャすごいんですよ。「これからはリアルだ」「リアルなイベントをやろう」というアイデアはよく出てくるのですが、内部にいるとメチャクチャ難しいんですよ。何が難しいかというと、キャストさんがお客様と接客時間以外で関わるということに対する負担感がものすごい。

男性でも、給料が全く発生しないのに、好きでもない社長といきなりゴルフに行こう、と言われたら絶対に嫌だと思うんですよね。ゴルフならまだしも「俺の飲み会に付き合ってくれ」と言われたら、とんでもなく面倒臭いでしょう。

「営業のためだったら・・・」という理由だけでは辛い。どちらかというと、これは店が持っている文化の問題だと思います。まりなさんがそういう文化を作られているのはすごいなと思います。

うちの店も、キャストさんはお店に対して非常に協力的だと思います。それでも、ここまでは無理ですね。不特定多数の人がイベントに来た際に、身元がバレてしまったらどうしよう、と思うわけなんですよ。

世論が変われば変わるのかもしれませんが、まだ風俗の仕事で働いているということを声を大にして言える世界ではない。そうした中で、リスクを踏まえた上でリアルイベントを実施できるのは、お店に文化やコミュニティなどの安心感があるから。そこまでの安心感を作れるのはすごいと思います。

うちの場合は手コキの低価格店なので、お客様をかなりの数とらないといけない。そうなると、仮にイベントをやるとしたら、どうしても不特定多数の男性が集まる形にならざるをえない。

自分に対してこれからいくら使ってくれるか分からない人が、自分を値踏みしにやってくる。しかも知り合いに会うかもしれないリスクがある。そんな場所に「行こう!」と言っても、それはただの店のワガママになる。僕は強要できない。

サイドラインさんは中級価格帯よりもちょっと高い値段設定で、実際に女の子のお給料がいいというところもある。それでも、そうした文化を作るのは並大抵のことではない。

これをモデルケースにして安易にやろうとしても、絶対にできない。続かない。1回やったら、みんな「来月はもう行かない」と言って終わると思います(笑)。

◆戦略なき業界で、戦略を組み立てていくということ

坂爪 リアルイベントは、お店の文化によって成立する。それは差別化の要因としては非常に大きい、ということですね。

デリヘルは飲食や美容などと比べると、マーケティングの視点から見ればまだまだ遅れている世界だという見方があります。

そうした中で、マーケティングの視点から「これからはこんなことをやった方がいい」という提案がありましたら、お聞かせ頂きたいです。

にしやま 今のまりなさんのお話に引き付けると、この業界は戦略論から考えることがあまりないなと思っています。コンセプトと戦術しかない。「うちは制服のお店なんだ」「こんなプレイをするんだ」といった戦術論しかない。

もちろん、マーケティングの視点から、「この街には人口が何人いて~」という数字は皆さん考えられていると思うのですが、これからは本気の戦略が必要になると思います。

既に風俗店の数は過多になってきているし、人口減少の中でお客様は減っている。風俗は労働集約型のビジネスなので、人口が減れば業界はシュリンクせざるをえない。男性の可処分所得も少なくなっている。

そうした中で、全ての営業や広告は、「池袋の土地で」「刺さりそうなコンセプトを立てて」「ヘビーユーザーを狙って」といったように、戦略の中に落とし込まれていなければいけない。

オナクラのグループの中では、うちは最後発に近いと思います。一店舗でうまくいくお店はこれからも出てくると思いますが、チェーン化するところまで行くのは少なくなるはず。

法的にお店がホテルやレンタルルームと提携してはいけないというルールがある中で、どうやってプレイの部屋を押さえるかも大切です。

デリヘルは文字通りデリバリー(派遣型)なので、どこまでも行けそうな印象があるのですが、錦糸町のお店だったら錦糸町の周辺のみに派遣されることが多い。実は、土地に左右される地場産業なんです。

それを前提に市場を作っていくと考えると、決められた土地の中で、どんなサービスをいくらで提供することで経営が成り立つのか、どれだけ提供スピードを速くすればいいのか、その土地で少ない業種=ビジネスモデルは何なのか・・・といった緻密な組み立てが必要になっている。ただ勢いでお金をかければうまくいくわけではない。

坂爪 少し前に、自分がツイッターで「デリへル限界」という言葉をつぶやいたんですね。「地方都市では人口8万人を切るとデリヘルが消える」という仮説なのですが、それがちょっとだけバズった感じになりまして。

風俗の営業が人口に規定される部分は確実にあるので、そこを起点に考えていく必要があるのかなと思いました。まりなさん、そのあたりはいかがでしょうか。

まりな 少子化が進んで、女の子の数もこれから減っていく中で、可愛くて、サービスも良くて、コミュニケーションもとれて・・・という子はどんどん少なくなっていく。価格も上がると思います。

高価格帯を取れる女の子、低価格帯で回っていく女の子、というように二極化していくのかなとは感じていますね。

◆人を使い捨てにする「ブラックデリヘル」にならないために

坂爪 二極化や社会環境の変化の中で、ブラック化する現場も出てくると思います。価格競争が激しくなり、キャストもスタッフも使い捨てになる。こうした現場のブラック化の流れに対して、どのように抗うべきだと思われますか。

にしやま これは超難しいですよね。実際、起こりつつあります。

一番よくないのはお店の低価格化です。戦略論が無い中でお客様を呼ぼうと考えると、一番簡単なのは「安さ」で勝負することになる。僕たち自身にとっても言えるのは、一番の激安店には勝てないということ。高級店にすればいいというわけでもない。総合売り上げでは、高級店よりも激安店の方が高くなることもある。

激安店の方々も信念を持ってやっていらっしゃると思うのですが、全てが計算と数字で成り立つ世界になると、どうしても人をモノのように数字で考えないといけなくなる。

人ってマシンじゃないので、そんなにうまくいかないんですよね。激安店を成り立たせようとすると、スタッフさんの仕事も人間的な労働ではなくなってくる。

内勤の仕事って、緊張するんですよ。電話を取って、お客様にも頭を下げながら丁寧に対応して、予約の時間を決めていかなければいけない。

そこからキャストさんとの連携が生まれてくるので、サービスの時間や内容、ホテルの場所や部屋番号等をミスなく伝えなければいけない。

キャストさんが接客している間も、トラブルが起こらないか、傷ついていないかとずっと心配しているんです。

キャストさんが帰ってきたら「大丈夫?」「ありがとうね」とコミュニケーションを取りながら、また次の仕事に入る。それを一日に何十本も回すという状態になると、どうしても過重労働になる。激安店だと、それをマシンのように繰り返しやらなければいけない。

この問題を解決するとしたら、中価格帯以上のお店にして、小規模でコンパクトな経営にすること。

サイドラインさんのように戦略論やコンセプトの中で成り立つ店って、大勝ちはしないんですよ。時代がついてきて急に大化けしないかぎりは、大きく儲けることはできない。その代わり、みんなが小金持ちになるようなビジネスにはできる。

ある程度のレベル・人数のキャストさんを集めた上で、ある程度の人数のお客様に、ある程度の価格帯のサービスを提供する。これらをどのような戦略で組み立てていくかが、これからの課題なのではないでしょうか。

ビジネスの世界では、コミュニティだとかオンラインサロンだとかいうことが流行りのように言われていますが、僕は赤坂店を作った4年前の時からずっと「コミュニティにしよう」と言っていました。うちは価格が一番安い店ではない。最安店はうちの2倍の売上があるので、そこを必死に追っている状態ではある。

それでも、数字だけを追いかけると金融工学化してしまったり、悪い意味でシステム化してしまうので、最安店では提供できないサービスやキャストさんとの連携、お店の一体感をつくることを心がけています。

お客様も「一番の激安じゃないけれども、自分はこの店を使う」となった時に、自分自身を納得させるための心の理由が必要になる。

その理由付けにフォーカスしたものをどうやって作り上げようかとなると、最終的にはお互いの思想や文化=「気が合う」という話になる。

思想や文化を作るためにコミュニティマネジメントをしていくこと、コミュニティの核を設定することが、これからのお店づくりでは大切になると思います。

坂爪 マシンのように人を扱う激安店に対して、コミュニティを活用した小規模経済圏のようなお店をつくることで現場のブラック化を防ぐ、というご意見があったのですが、まりなさんはどうお考えになりますか。

まりな うちは車を一台も持っていないデリヘルなんです。池袋西口のラブホテル街限定という、ものすごい限られた土地でやっているお店です。

ドライバー代がかからないし、女の子の移動時間も短くて済む。少人数でもたくさんのお客様を接客できる。スタッフも少人数で回る。

こうした少人数で回るようなスキーム作りは、最初から考えていました。利益率を上げていく中で、内勤のお給料も上げていくという形です。
 
坂爪 これまではオーナーが利益の大半を取ってしまって、内勤まで利益が回らない。そこで内勤が女性を搾取して・・・という構造もあったかと思うのですが、これに関してはにしやまさん、どうお考えでしょうか。

にしやま にしやまさんどうでしょう、と尋ねられると、地味に経営サイドは答えにくい質問ですね(会場笑)。悪く言ってしまえば、オーナーや経営者による利益総取りは、確かに昔はあったと思います。

例えば、今お店に人がいないから内勤を入れなきゃいけないとなった時に、お給料をいくらで募集するのかという議論になる。

「月給20万円で良い人が集まるのでしょうか」となった時に、オーナーから「いや、20万円で集めなきゃいけないんだよ」と言われて、「じゃあ、オーナーの今夜のキャバクラ代はいくらですか」と聞いたら「40万」とか言われる(会場笑)。

じゃあキャバクラに一日行かないで、内勤の給料を上げればいいじゃないか、と。

同じ様に「広告費を削れ」と言われても、「飲み代を一回削れば広告費になるじゃないか」と思う。

もちろんオーナーや経営者もリスクとリターンや制度を考えた待遇なのはわかる。考えももちろんある。ただその使い道と会社の成長への投資をどう捉えるかが、これからの経営者像としては大切なんじゃないかと。

僕自身が割とワーカホリックで、なんでもかんでも仕事にお金を突っ込んでしまうタイプだからなのかもしれませんが、お金がお店の中身の充足や、今働いているメンバーの充足に使われると、もっと良い業界がつくれるのではと思います。お金の再分配は重要なテーマです。

ただ再配分をやっていこうとする場合、全然知らない人にシステム的にお金を流していくのは意味がありません。だからこその小規模経済圏なんですね。顔が分かる範囲で、自分の身の回りの人を幸せにしていく。その数をどう増やしていくかが、これからの経営では重要になってくると思います。

◆コミュニティをどうマネタイズするか

坂爪 小規模コミュニティをただつくるだけではなく、どうやってそこから利益を上げるか。マネタイズをしていくか、という問いがあります。「コミュニティをどうやって利益につなげていくか」という点について、まりなさんにお伺いしたいと思います。

まりな そもそもスタッフも人ですし、キャストも人です。これまでの風俗店って、「金持ちになろうぜ」というコピーが多かったり、「一日十枚稼げます!(注:一枚=一万円)」という言い方が多かったと思うのですが、これからは人を集める時点から、お金の面だけではなく、社会にどういう影響を与えたいのかを意識して発信していく必要があると思います。

「私はこういう影響を他の人や社会に与えたい」ということを経営者の側から発信をする。スタッフもそれを自覚していく。その結果として、お金だけに囚われないコミュニティができる。そのために私も発信をしていかないといけないなと考えています。

坂爪 お金だけを前面に出しても、もう人は集まらない時代になっていると。

にしやま 集まらないですね。正確には、お金を出しただけでは良い人が集まらない。

まりな それはありますね。

にしやま これが難しいところで、往年の経営者の方々も、そこは考えていなかったわけではないと思うんですよ。誰にいくらあげればいいのか、すごく考えてこられたのだと思います。

坂爪 良い人を集めるために、どんな工夫をされておられますか。

まりな 採用の際に一番見ている点は「短期目線ではなく、長期目線を持てるか」です。キャストの女の子の中には、「一日あたり」ですらなく「60分あたり」という超短期目線を持っている子も多いです。

以前一日だけ出勤したキャストさんで、自分で電マをカバンに入れて、無理やりお客様にオプションとして使うように押し売りをする、ということをやっていた子がいました。

「この60分でいくら稼ぐか」という考えだと、それが彼女にとっての正解になる。でも一カ月というスパンで見たら、本指名を返したほうが多く稼げるよね、と。

非常に単純な話なのですが、理解できない子はまだまだ多い。元々そういう考え方ができる・できないというのは、重要かもしれませんね。

◆短期目線より長期目線

にしやま 長期目線は重要ですね。うちもソフトサービスのお店なので、ものすごい大金が一日で稼げるというわけではない。普通のバイトよりはちょっと割がいいかなくらいのお金しか、仕組み的にはもらえない。風俗業界全体から見れば稼げる金額は少ない。そのため、「今日すぐに、いくら欲しい」という人とは合わない。

その一方、身体への負荷は少ないので、長期的に続けやすい。長年続けていけば、結果は返ってくる。

以前、奨学金の返済のためにこの仕事を始めた女の子がいました。「大学在学中に時間ができたので、ここで働いて社会人になる前に奨学金を返したい」と。

全くの未経験で、最初の方は接客中に怖くて泣いてしまうような女の子だったのですが、二年間経ってみたら、キャストさんとしてのスキルも対人関係のスキルもすごく成長して、奨学金を全部返し終えて、さらに200万円貯めて卒業した、というきれいな話があったりします。

働く女の子全員がそこまでのビジョンを持つことは難しいですが、長期目線で考えてくれた方がうまくいく、というのは絶対にある。

風俗店で働いて稼げるお金は、昔みたいに何百万、何千万という額ではなくなってきている。だからこそ長期目線の人が成功する。

坂爪 福祉の世界では、「短期目線しか持てない背景には、生育歴や生活困窮などの要因がある」と言われています。一見非合理的に見える短期目線での行動が、本人にとっては最も合理的になる場合もある。

風俗の世界も、昔は短期目線の人の方が稼げる世界だったと思うのですが、今はそれが逆転して、長期目線で働く女の子、長期目線に基づく戦略を持ったお店でないと稼げない。

一方で、業界に入ってくるのはまだまだ短期目線の人が多いので、そこでの齟齬が生じているのかなと思います。

にしやま 風俗で救えるのは「貧乏」であって、「貧困」ではないんですよね。「貧困」はぶっちゃけ救えない。

これまでは「短期目線で稼げる仕事」という理由で救われてきた側面もあったのかもしれませんが、これからはベーシックインカムや社会保障の充実などの議論の流れの中で、風俗の問題と貧困の問題は切り離されていくんじゃないのかなと僕は考えています。

坂爪 「風俗は、貧乏は救えるが、貧困は救えない」、まさにその通りだと思います。

にしやま 「救える」というのはおこがましい発言かと思いますが、貧乏は一時的な経済的困窮=可処分所得が少ない状況なので、高収入の仕事があれば解決できる。貧困はもっと生育歴や家族・周辺の人間関係に関わる問題なので、目の前の仕事だけでは解決できない。

貧困に関しては、確かに社会的な側面からアプローチしないといけないので、セックスワークサミットのような会でやる意義はあると思います。

まりな うちの店はスカウトを使っていないのですが、スカウトを使う女の子の中には、道を歩いている時に声をかけられて、「お金もらえるよ」「いい仕事があるよ」という言葉でついていってしまう子もいる。

スカウトを通して業界に入ってくる子はまだまだ多いです。ただ、これからはスカウトはどんどん少なくなっていくと思うので、今後風俗で働きたいと思う女の子は、自分である程度お店を選んで、どこで働くのか自分で判断しないといけない。

知識のある子、頭のいい子でないと自分に合った店を探せない。ある程度の判断能力のある女の子しか、最終的には稼げなくなるのではないかと思います。

◆「黒子としてのスタッフ」の先へ行く

にしやま 最近思うのは、「セックスワーク」と「セクシュアルワーク」は分かれるのではということ。「セクシュアル」というと的が若干ズレるので、本当は「エロティックワーク」と言いたいところですが。

セックスワークは売春・貧困・社会保障の話になり、セクシュアルワークは風俗・ガールズバー・グラビアなど、文化の話になる。吉原のように、ある意味で伝統芸能化するものもセクシュアルワークには含まれると思います。風俗の定義が、売春とは切り分かれた形で広まるのではないでしょうか。

坂爪 確かに風俗は大きすぎる概念ですよね。売春と風俗という二つの概念があるのは便利ですが、それだけでは語り尽くせない。

昨日開催されたサミット一日目の「みんなで語るレズ風俗」の回に参加してくださった皆様は感じたと思うのですが、レズ風俗を本当に「風俗」と呼んでいいのか、という問題はある。これから新しいカテゴリーが出てくることはあるでしょうね。

もう一つ、サイドラインさんの「ワンコインサービス」について詳しくご解説頂けますでしょうか。

まりな ワンコインサービスとは、30分500円でキャスト兼任スタッフがお客様とデートやリフレ=簡単なマッサージを行う、というサービスです。新規のお客様、あるいは5回利用ごとに1回利用できます。

ワンコインサービスを行う一番のメリットは、お客様の顔をスタッフがちゃんと見ることができる、ということです。キャストは全員副業女子なので、お客様の顔を確認することができるのはメリットです。

そしてスタッフと一度仲良くなったお客様は、お店に対して悪いことはできなくなる。「まりなさんのお店だから、キャストさんにあまり意地悪なことはできないな」と。女の子と連絡先を交換して裏で会おう、といったこともやりづらくなる。スタッフとお客様との仲を深めることで、トラブルの起こりにくいコミュニティにしています。

坂爪 デリヘルは基本的にお客様の顔も見えないし、スタッフの顔も見えない。店長の顔も見えない。こうした「見えにくさ」が色々なトラブルの原因になっている。

にしやま うちもやっていることは一緒でして、スタッフがちゃんといますよ、ということをお客様に意識して頂くようにしています。

今までの風俗は、お客様にはキャストさんからのサービスを楽しんでほしいから、スタッフは黒子に徹して、できるだけ目立たないように振舞うという文化があった。まだまだそういう雰囲気は残っています。

それはそれで共感はできますし、すごく分かるんですが、そこであえて「コミュニティ」というのはなぜか。

僕らにも大好きなお客様はいます。お客様としては窮屈な話かもしれませんが、悪いことやルール違反を犯した時に、僕らからきちんと怒ることで、すごくいいお客様になってくださる場合もある。

お客様が、支払ったコストを回収するために、キャストさんにハードなサービスを要求するのはすごく不毛だなと思います。ハードなことができたら、ルール外のことができたら、それで本当に幸せなのか。違いますよね。

お客様にも、「自分はこのお店のことが好きで、今日もきれいに遊んでいる」「スタッフからも信頼されていて、お店からも良いお客様だと思われている」と思ってほしい。超理想論かもしれませんが、そういう幸せな世界を作りたくて。

お客様が男性スタッフ向けに差し入れをくださったりすることもあれば、お客様の中で「推しスタッフ」ができたりすることもある。女の子だけでなく、男性スタッフでもそういうことがあるんですよ。

ツイッターのタイムラインでも、「とにかくキャストさんを大事にしなければ」という男性スタッフのつぶやきが流れてくることがありますが、それは当たり前なんです。

お客様を叩くだけでいいのか。クソ客として排除するだけでいいのか。僕たちにとって、「来てほしいお客様」はどんな方なのかを考えた上で、こんなお客様が好きだ、こんなお客様に来てほしい、ということを発信する必要がある。

僕らもお客様を誇りに思いたいんです。キャストさんにも誇りが持てるけど、お客様にも誇りが持てる。そんなお店にしたい。

ただの押し付けかもしれませんが、この世界観を分かってくれる方が来てほしいなと。そんなやさしい世界を目指して、日々働いています。

◆「ハコ推し」の大切さ

まりな ワンコインサービスは、お客様から「ハコ推し」してもらいたいために実施しています。

今お店にいるキャストさんは、5年後、10年後には当然いません。そこで、どう「ハコ推し」してもらうか=お店自体を推してもらうかを考えています。その一つとして、スタッフとの仲を深めてもらう。お店として丸ごと愛してもらう。そのためのワンコインサービスです。

にしやま そうした活動を続けていった時に、コストパフォーマンスだけではなく、それ以上のものって必ず返ってくるよね、となんとなく思っています。

コストパフォーマンスよりはクオリティ・オブ・ライフの話。幸せの価値が上がるみたいな。すごい観念的なことを言っていますが(笑)。

単純に「お客様のことが好きだ」と言いたいんですよ。僕もお客様のおかげで有難い思いをしたことは何度もありますし。

坂爪 風俗で一番つまらない遊び方は、コスパを追求することだと思います。お金を払ったから、これだけ元を取らせろ。そういったコスパ中毒になってしまったお客様をこちらの世界に引き戻したうえで、お客様・スタッフ・キャスト、皆が幸せになるコミュニティを目指す。すごく大事なミッションだと思います。

にしやま なれたらいいですね~。

まりな 目指します!

にしやま 目指しています、ということは言えます。実際にできているかどうかは分からないのですが。

◆SNSをどう使いこなしていくか

坂爪 最後に、風俗の未来予想図について。テクノロジーの進化が風俗に与える影響はたくさんあると思うのですが、その一つがSNSです。
既に風俗の営業や経営においてSNSは欠かせないものになっていますが、その可能性と限界について、お伺いできればと思います。

にしやま SNSに関しては僕らも色々と使っているのですが、やはり普及しているSNSをどう使うか、ということが大事になる。風俗業界独自のSNSを作って閉じた世界にしてしまうことは意味がない。Facebookやツイッターのように、一般向け・・・という言葉は断絶を生みそうで嫌なのですが、開かれているSNSをどう使いこなしていくか、ということはすごく大事。集客にも関係すると思います。

Facebookは実名制なので、現状ではツイッターしか有効に使えるものがない。インターネットの匿名文化は、風俗と相性が良い。それが今無くなりつつあるので、ジレンマを感じています。SNS集客に関しては、サイドラインさんの方が圧倒的にプロだと思います。

まりな ツイッターは割と活用していて、キャストも何名かやっています。お客様とのやりとりもそこでやっているのですが、難しいなと思うところも正直あります。

キャストさんがぽろっと発信することの中には良いことも悪いこともあって。「これ、言わなきゃいいのにな」と思うことや「こっちで消してしまいたい」と思うこともあります。

コントロールが効かない点が厳しい。そして風俗というくくりから出ることが難しい。LINE@も風俗は禁止なので、使えるSNSはツイッターくらいしかない。

SNS上で「盛り上がっている感」を出すことは、かなり有効かなと思います。一人の女の子がつぶやいた内容に対して、お客様がダーッとコメントをする、というのは、それ自体が丸ごと広告になる。そうした「盛り上がっている感」をどう出していくか、という点は気にしています。

坂爪 SNSには嫌がらせや粘着・誹謗中傷等のリスクもあると思います。そのあたりはどうリスクマネジメントされているのでしょうか。

まりな 私もよく敵が出てくるのですが(笑)、女の子がお客様に攻撃をされないために大切なことは、何度も申し上げているように、お店を丸ごと愛してもらうこと。

キャストとお客様がSNS上でケンカをしたことも過去にはあったのですが、それをやらせないためには、そうしたトラブルが起こる直前、あるいは起こった直後に、スタッフがお客様とつながっていることが大事になる。

お客様とのつながりがキャストとの1ラインではなく、スタッフAともつながっている、スタッフBともつながっている、そして私ともつながっている、という状況だと、途中で大ごとにならない。お客様とのパイプをたくさんつなぐことを意識しています。

坂爪 一対一でつながるのではなく、たくさんのパイプでつながることでリスクを減らす、ということですね。もう一つテクノロジーに関して、VR(仮想現実)風俗について、にしやまさんに現状と課題を教えて頂きたいのですが。

◆VR風俗の可能性

にしやま 昨年「VR風俗をやります」というリリースを出して、自社開発をしました。テストケースなどを含めて運用したことで、VR界隈でも名前を知ってもらうことができました。僕自身はVR界の人ではないのですが、そこそこ詳しくなっています。

VR風俗の現状について、映像作品や世界観のクオリティについては、お客様の妄想力の方が先に行っている。

VRや仮想現実と聞いた時に、皆さんの想像力をマックスまで働かせるとと、例えば僕が今かけているこのメガネで、皆さんが全然違う人に見えたり、この会場がいきなり大草原に変わったり・・・といったことを想像されるかもしれません。そうしたお客様の妄想力の方が先に来てしまう。

VR風俗のためには専用の機器を用意しなければいけないのですが、それが意外と高額なんですね。プレイの中で使って行っても、「元を取るために、一体何年使えばいいんだ」という感じで、ペイしない。

VR風俗については、参入したところもいくつかあるのですが、儲からないからやめようという状況になっている。うちもやめたわけではないのですが、虎視眈々と次の展開を狙っています。

世間一般でも同じことが起こっていて、投資家がこぞってVRに投資したのですが、ここ1~2年は冬の時代になっている。

最初に手掛けた人たちや、僕みたいに好きな人・・・元々すごいオタクなのですが(笑)、そうした人たちが虎視眈々と次のビジネスモデルを考えていて、最新の動向を追っている、という状況です。

これからVRの機器が低価格化して持ち歩けるようになったり、小型化したりして、何かのシンギュラリティ・ポイント(技術的特異点)を超えるということは確実に起こる。

ただ、現時点では100%儲からないので、とんでもなく好きな人か、資金的体力がある人でないとやらないと思います。僕は本気で好きな方です。

VRの普及までは、まだまだ時間がかかります。5年後くらいから、ちょっとずつVR風俗をやりはじめるところがまた増えてきて、10年後くらいには、そういうお店が1%は出てくるかな・・・という感じです。

◆コスパだけでは、風俗はVRに勝てない

坂爪 秋葉原でソフトオンデマンドがやっているアダルトVR(アダルトVRを鑑賞できる個室ビデオ店)、そういったものが風俗の市場を侵食するということは起こりうると思いますか?

にしやま あると思います。風俗よりもVRでいい、という人は必ず出てくる。可処分所得も減っているので、「風俗にお金を使うくらいなら、VRのAVを10本買ったほうがコスパがいい」という話になる。だから風俗をやりたいのであれば、コスパで戦ったらダメだと思います。

坂爪 コスパではなくコミュニティの方向に向かわないと厳しい、ということですね。

にしやま おっしゃる通りです。仮想現実に勝つには、人の力しかない。

坂爪 最近見たニュースで、エストニアでブロックチェーンを活用した売春の自動マッチングシステムができたということを耳にしました。

完全無人化の流れは、日本にも影響を及ぼしてくるはず。そういった流れの中で生き残るためにも、コミュニティの力が必要なのかなと思いました。

それと関係して、これまでの風俗業界は、キャストにせよ、店長にせよ、スタッフにせよ、人材を使い捨てにする傾向があったと思います。

使い捨てではなく「人を育てる」という方向に変わっていく必要があると思うのですが、風俗という世界の中で「人を育てる」ためには、どうすればいいのでしょうか。

◆「使い捨て」から「人を育てる」へ

まりな サイドラインがそれをできているかどうかは分からないのですが、今までの風俗店を見ていると、キャストもスタッフも、たくさん働かせて、一年以内にやめてしまう、というパターンがほとんど。そこを越えて人を育てていくためには、それこそコミュニケーションしかないのかなと思っています。

風俗業界に来るスタッフや女の子は、やはり何かを持っている人が多いと思います。過去にいじめられた経験や性的な虐待を受けた経験があったり、家族に問題があるとか、精神的に何かを抱えている子が多い。

そこをほったらかしにするのではなく、きちんと話を聞くということが、ものすごく単純なことではあるのですが、大事なことです。

過去から掘り起こしてあげて、今どのような状態で、今後どうなっていきたいかを聞いた上で、「どうなっていきたいか」という部分に関して、サイドラインが何をできるか、私が何をできるか、を伝える。お金をいくらあげるとかいう話だけではなくて、人間同士のコミュニケーションをきちんととっていく。そこは普通の企業と同じですね。

にしやま 僕も試行錯誤している段階なので、うちは人を育てています、とかは口が裂けても言えない。まりなさんがおっしゃるように「コミュニケーション」や「人を見る」がキーワードになると思います。

多店舗化するにあたって、内部スタッフの不足は必ず起こる。その中でも一番難しいのは、店長となる人材を抜擢・育成していくことです。

風俗業界は、全体的に店長不足に陥っているのではないかと思います。風俗って、ビジネスモデル的には個人事業主のお店なんですよ。年間数億の売上がマックスで、どれだけシステム的に業務を回しても、一つのグループで超巨大ビジネスを抱えるということは、風俗だけでは難しい。

個人事業のレベルだとすれば、「腕の良いシェフがいれば、良い店ができる」という話と一緒になる。そうすると、良いシェフになりうる「良い店長」をどれだけ作るか、という話になりますが、そこはノウハウ化というよりも個人の才覚に寄ってしまう。

まりな その傾向はどうしてもありますよね。コミュニケーションの取れる人、人の気持ちが分かって交渉がうまい人、そういう人しか生き残れない。どこの企業でも同じですが、そういう人に仕事が集まる。

◆「プロ店長」が業界を渡り歩く時代になる?

にしやま おそらくこれからは、オーナーや経営者という存在と、店長が分かれるんじゃないかなと。名物スタッフや名物店長がいるお店って、横から見ていると大体分かってしまうんです。そうすると、そこの店長をいかに引き抜くか、その店長さんにいくらかフィーを払って、いかに自分たちのグループを運営してもらうか、という話になる。

そこから、どこのグループにも属さない「プロ店長」「フリー店長」という存在が現れると思うんですよ。

かつての風俗店はオーナーと店長、あるいはオーナー自身が店長、という形だったのですが、それがチーム制になっていって、経営と資本の分離が行われつつある。

お金を儲けたいオーナーが、SNSで目立っていたり、良いお店を経営している店長を指名する時代。その店長の移動に合わせて、スペシャリスト(ウェブデザインや広告などの各分野の専門家)たちもついていく。普段は企業で働いている人が、副業として業務の一部分を担うことも起こるかもしれない。

いかに外部リソースを活用するか、という話はこれからの業界で出てくるかなと思います。

まりな 個々で発信している店長さん、増えていますね。

にしやま オーナー側でも、グループの中で新しい店舗を作りたい時に、「おたくの店長貸してよ」ということが起こるかもしれない。プロ店長として渡り歩くことが、オーナーでも資本家でもない、働く男性のキャリアパスの一つになるかもしれない。

◆「横のつながり」はどこまでできるのか

坂爪 プロ店長の話も含めて、人材が流動化していく中で、業界の横のつながりは非常に大事になります。実際に、横のつながりはどれくらいあるのでしょうか?

まりな 横のつながりはない・・・というか、にしやまさんとサイドラインのようなつながりは珍しいです。古いお店って、お互いが敵なんですよね。同じ女の子が店を行き来したり、言葉は悪いですが、商品の奪い合いみたいなことが過去に起こっているので、お店同士が敵対していることが少なくないです。

にしやま 囲い込もうとすると難しいよね。自分のお店のキャストさんが他のお店で働く可能性は全然あるので。

まりな 私も囲い込もうという意識は無くて。「人ってモノではないよね」という意識が無いとつながれない。あとは「お金稼ぐぞー!」だけの人は無理ですよね。自分が何をやりたいか、社会で何をやりたいかをきちんと発信できる人でないと、横のつながりは作れない。

にしやま 「気が合う」というのも普通に重要ですよね。世代感覚もあります。ある程度お店の名前が売れてくると、横のつながりができるということもある。

サイドラインさんはたまたま創業当時から知っていて、ぜひお会いしてみたいなと考えていた。あるイベントでお会いした際にお話することができた。

SNSでも「ちょっと気が合いそうだな」という人にはこちらからお声掛けしたこともあります。20代後半から30代入りたてのメンバーで、何人か仲の良い人はいます。新しい店づくりをしている人たち同士であれば、そこからつながりが生まれる。

まりな 最近、20~30代の経営者、講師の方でグループがつくられて、みんなで何かやろうよという声が出てきて。それはすごく大事だなと思います。まだまだ風俗業界の印象は悪いし、だから踏み込めない人も多い。でももっと入ってきてほしい。

私がお店を立ち上げた時に、女性で風俗店を私もやりたいんです、という人がもっともっと出てくるのかなと思ったんです。

「やりたい人はいませんか」と呼び掛けた時、「私も」「私も」と出てくると思ったのですが、実際はほとんどいない。いたとしても、実際にスタッフとして働き始めたら崩れてしまったり・・・。

私としては、お店を奪うつもりで来てほしいと思っていて、そういう気持ちのある人がどんどん出てきてほしいのですが、やはり業界の印象が悪いので、出てこない。印象をアップさせるためにも、横のつながりを作って働きかけていきたいですね。

にしやま 中で起こっていることと、外から見たイメージがこれほどまでにズレている、という世界は珍しい。

僕ら自身が業界の中ではマイノリティなので、ここでの話が風俗業界の全てではない。ただ、マイノリティであるからこそ、こういう場で発信させて頂けるので、そこから共通の思いを持った人は増えるんじゃないかなと思っています。

僕も上の世代の方々は尊敬しているのですが、世代間のギャップや考え方の違いというものは確実にある。そして僕らの世代では、「外に発信していきたい」という思いは確実にある。

◆今後のビジョン

坂爪 横のつながりを通して、業界全体を良い方向に変えていければよいですね。最後に、それぞれのお店・グループの今後の展開やビジョンをお聞かせ頂きたいと思います。

まりな サイドラインとしては、先ほどもお話させて頂いた通り、風俗で働いている女性が、この世界で生きていきたいと思った時に、キャリアプランを選べるような、こんなモデルがあるのかと思ってもらえるようなモデルケースを作っていきたい。そのためにも、風俗業界のイメージアップをしていきたい。これからもどんどん自分なりに発信をしていければと思っております。

にしやま うちで働いて頂いているキャストさんやスタッフの次のステップは、僕自身もすごく考えているところです。風俗のその先ってなんだろうなと。

うちのグループでも今年からラジオをやってみたり、新ブランドや店舗を拡げようかという話もしているのですが、その先を自分でも作っていきたい。
VRなども含めた新しい仕事で関わり合うことができれば、風俗の仕事を卒業した後でも、違う仕事ができる。その下地をどうやって作っていけばいいかを試行錯誤している状態です。

最近のキーワードは「やさしさ」と「なめらか」です。最初は「ユニークでやさしい会社」と発信していたのですが、最近は「エロやさしい会社をつくりたい」と発信するようになりました。お金の分配の話も含めて、みんなでやさしい会社、やさしいコミュニティをつくりたいと思っています。

「なめらか」というところでいうと、風俗は社会の中で分断・断絶されているイメージがあるのですが、エロは人間の根幹にかかわっていることなので、興味のない人はいない。

国会で風俗やAVのことが語られていたとしても、若い時にAVを観たことがありません、という国会議員なんて信じられないじゃないですか。

僕は、風俗は業種の一つだと思っています。風俗の会社であっても、VRや他の会社であっても、かりんとはかりんとである。そういうなめらかな業界状況を作っていきたいです。

坂爪 にしやまさん、まりなさん、ありがとうございました。(会場拍手)

<第二部:質疑応答>

【フリーライター・編集者(女性)からの質問】

Q:ここはNewsPicksアカデミア(参加費5000円の意識高い系講座)かよ!という感じのお話、ありがとうございました。にしやまさんにお伺いしたいのですが、ホロレンズが軽くなるなど、VRの技術がもっと進んだら、映像と環境の境目が曖昧になっていくと思います。そういった時に、Hなサービスはどのようなものになる・できるとお考えですか?

にしやま 今はVR(仮想現実)・AR(拡張現実)・MR(複合現実)という概念がありますが、これからは現実の境界がどんどん分からなくなると思います。

そうした中でのHなサービスの変化を考える際のポイントは3つあります。
一つ目は、キャラクターが誰なのか。二つ目は、背景がどうなるのか。そして三つ目は、触覚がどうなるのか。

キャラクターに関しては、自分の目の前にいる相手が、バーチャルで自分の好みの女の子になる。あるいは3Dのキャラに置き換わる。キャラクターを思い通り変えることができるようになる。

背景に関しては、空間のテクスチャーを張り替えることで、自分たちを残した状態で背景全体を変えることができる。空間をハックすることができるわけですね。

触覚については、触覚デバイスといって、空中を触っていても、リアルな人間の感触が味わえる技術の開発も始まっている。触覚をハックすることができるようになる。

一方で、情報量の問題があります。人間が肌と肌を重ね合わせた時の情報量は膨大で、セックスの情報量はコンピューターでは処理できない。

情報量と処理能力が現実に追いつけば追いつくほど、現実をハックする=他のものに切り替えることができるようになる。

二人でメガネをかけて、目の前の空間を変える。ディストピアかもしれませんが、お互いのことを違う相手だと思ってしまうこともできる。

そうしたテクノロジーの進化に伴って、風俗に限らず、エロの概念自体が拡張される。

ただVRに関する議論では、100年後のことを話していることが多い。100年後であれば、アンドロイドとセックスできる風俗みたいな話は出てくると思いますが、それまでの間をどう埋めるか。

実際に間を埋めていく過程で、映像技術が追いつかない、全く儲からないから参入するところが少ない、といった課題が出てくる。その過程を埋めていく人が誰なのかは大事ですね。結論だけを話しても仕方がない。

キャラクターを置き換えよう、空間を置き換えよう、触覚を再現しようということは、それぞれできていくと思うので、あとはそれをどのように風俗に応用していくのか。どのように自分たちがビジネス化していくか、が問題です。僕も時代に合わせて、色々やっていこうと考えています。

【デリヘル経営者(男性)からの質問】

Q:当店もスタッフがお客様を知っているシステムをとっていますが、男性スタッフであることで働く女性の安全を担保できていると思っています。全員女性スタッフで不安はありませんか?

まりな 実際にトラブルが起こった時、男性の方が足が速い・力が強いということはあるので、何かあった時に力で勝てるスタッフがいないというのは課題だと思っています。

でもだからこそ、うちはデリバリー(遠方への派遣)をしないという選択をしています。遠方でのサービスになると、何かあってもすぐに向かうことができない。

地元の警察署とも密に連絡をとっています。警察署でも、サイドラインを女性がやっているお店として認知はしてくれているので、割とやさしく、気を遣って相手をしてくださっていると思います。

坂爪 「警察もやさしい気持ちになれる店」、という良いオチがつきましたね(会場笑)。

【フリーランスライター(男性)からの質問】

Q:にしやまさんが、お客様から「有難い経験」を受けた、ということについて、具体的なエピソードを教えてください。

にしやま ただの「いい話」なのですが、神田店が創業した時から来てくださっていたお客様がいました。最初の時から「にしやまさんと飲みに行きたいんだ」と言ってくださるなど、お店のヘビーリピーターだったんですね。

その方は、神田店が通勤の通り道でして。そこから千葉方面に帰られるので、帰る前に神田に寄るのはちょうどいい感じだった。

僕が赤坂店を作った時、最初は赤坂に風俗があるんだということを知らせることが難しくて、お客様も全然来なかった。一日に三人とかいう日が続くといった状態でした。12時間待機して3人なので、キャストさんにも申し訳ない思いでいっぱいでした。

そんな時に、そのお客様が、赤坂は絶対に帰り道じゃないのに、むしろ帰り道から逆行していたのに、利用してくださった。

「いつもありがとうございます。でも、お帰り大丈夫なんですか?」と僕が言ったら、その方は一言、「いやぁ、にしやまさんが困っていると思って」と。

それで感動してしまって。その方はいつも本当にきれいに遊んでくださっていたので、心からありがたかった。

池袋店でも、赤坂の時から来てくださっている方が、わざわざ池袋まで来てくださることもあります。明らかに皆さん帰り道ではないのですが、「にしやまさんのために」と言ってくださるのは、やっぱりうれしいなと。

キャストさんにも、うちのお客様は本当にいい人なんだと自信を持って言える。本当に有難い思いをさせて頂いているなと思います。

坂爪 「お客様がお店を育てる」ということもありますよね。

にしやま 大にあると思います。

坂爪 お客様に「育てたい」と思って頂けるようなお店を作ることがテーマになるのかもしれませんね。

【媒体関係者(男性)からの質問】

Q:これまでお店を経営してきた中で、一番の失敗、もしくは挫折はなんですか?またそれを乗り越えることができた理由があれば、教えてください。

まりな そうですね・・・。悲しいことはすぐ忘れてしまうのですが(笑)、一番つらかったのは、お店を立ち上げて三か月目くらい。この時がとてもしんどかったです。

サイドラインは、元々私がキャスト兼スタッフ兼店長という形で、「まりなのお店です」という形で立ち上げました。

私の他にキャストが5名くらいいたのですが、鳴る電話、鳴る電話、ほとんどが「まりなさん、今からいけますか」というお電話でした。

そこから一日9本近い本数を毎日こなすという生活が始まりまして。お客様も、私に一回入ってからでないと、他の子に入っていかない。とにかく新規のお客様につきまくって、お店を知ってもらって、他の子に流す、というやり方をしていました。

キャストであると同時に経営者でもあったのですが、数字が見えるわけでもなくて、売り上がったお金は全て広告費に流していく。

そうした作業を3カ月やっていくうちに、どんどん気持ちも弱ってきて。キャストとして他の女の子と同じ土俵に立ってしまっているので「まりなさんのお客さんに入るのはちょっと嫌だな」という子も、どうしても出てくる。そういう状態で、なかなかうまくいかない時期がありました。

その時期をどうやって抜けられたのかというと、仕事を続けていくことで、「まりなっていう人が、サイドラインというお店をこういう気持ちでやっている」ということがどんどん広まっていって、お店に合う女の子が入ってきてくれるようになった。

「まりなさんと一緒に働きたい」という女の子が増えてきて、ようやく現場が回るようになった、という経緯があります。

こうした経験があったので、人はギリギリまで頑張れる、と思いました。なかなか人って死なないんだなと(笑)。そんな泥水をすするようなことも実はしています、というお話でした。

にしやま 今お話を聞いていると、まりなさんのメンタルは壮絶というか、すごいなと。

それとはちょっと違う話になるのですが、事業展開していく中で、心残りのある形でキャストさんを辞めさせてしまったことがすごくたくさんあります。キャストさんが辞めるたびに後悔が残るのですが、僕はグループの中で、間違いなくキャストさんを一番求人した店長であると同時に、間違いなくキャストさんを一番自らやめさせている店長でもあるんですね。

風俗の世界では、キャストさんが「やめていく」ということはあっても、お店が「やめさせる」ということは、実はあまりないんですよ。

コミュニティ型の経営にしていこうとなると、人同士の関係性が近くなってしまう。キャストさん同士がケンカしてしまって、最終的に両成敗になることもあります。

僕が神田店から赤坂店に移った時の話なのですが、僕が抜けた後で、神田店のキャストさんの中でケンカが起こってしまったんですね。後輩のキャストが先輩のキャストにケンカを売るというクーデター的なことが起こって、お客様を巻き込む大トラブルになってしまった。

その時、遠隔でやっていくことの難しさを実感しました。自分が直接見ていない店でマネジメントのもつれが起こった時に、それを早く察知できなかった自分がいて、結局皆を辞めさせてしまうことになった。

そうした失敗を何回も経験していて、そのたびに情けないなと思います。さっきの「奨学金を全額返して卒業しました」という明るい話は、なかなか少ない。正直な話、やっていても後悔しか募らない、という時もあります。

【媒体関係者(男性)からの質問】

Q:店長に必要な能力とは何ですか。また、お二人の右腕になれる条件はありますか?

まりな 私自身も持っているかどうか分からないのですが、店長に必要な条件は、まずは人が好きであること。人が嫌いだと成り立たない。

あとは人を信じられること。店長であれば、女の子のことを信じてあげなければならない。お客様のことも信じてあげなければいけない。何度も裏切られる・・・という言い方はちょっと違うかもしれないけど、自分が想像していたことと違う状態になってしまうことはよくある。それでも、もう一度信じる。信じる気持ちを持ち続ける。

これは結構辛いです。にしやまさんがおっしゃっていた「キャストがやめるたびに後悔が残る」ということには、ものすごく同感です。

こうなってほしい、と思っても、そうじゃない方向に行ってしまうことがものすごく多い業界で、それでもあきらめない。この子は分かってくれる、このお客様は分かってくれるはず、と信じ続けることが大事だと思います。細かいことはたくさんあるのですが、ベースはこれだと思います。

右腕の条件は、私が弱いところを支えてくれること。私は特にメンタルが強いわけでもないんですよ。疲れる時は疲れちゃうし。短距離走しかできないタイプで、マラソンをずっと同じペースで走り続けることができない。休んだところをカバーしてくれる、安定した人が私の近くにいるといいなと思います。

にしやま まりなさんの最初の話にものすごく大共感なのですが、僕も店長に必要な条件は、「信じ続ける人であること」だと思います。

僕は信じ続けられる店長になろうと思った。人に期待はかける。ダメになっても、しょうがないと思って信じ続ける。人をポジティブに捉え続けることのできる人が向いているなと思います。

あと右腕の条件ですが、チームメンバーを尊重できる人ですね。うちの店では、キャストさんもスタッフも「尊重」を大事にしています。お互いに褒め合いができることが大事です。

足りないところの指摘やけなし合いはいくらでもできるんです。例えば、キャストさんから「これできていないよね」というクレームが出た時に、それが自分の仕事ではなかった場合、「それは●●さんのせいだから(僕は関係ない)」ということはいくらでもできる。

そうじゃなくて、「●●さんもこういう事情があって、今回はうまくできなかったのかもしれない。お店としてうまくできなくてごめんなさい。何かあったらいつでも・誰にでも言ってほしい」と言い合えることがすごく大事です。

こうしたことを素でやることは意外と難しいのですが、それが右腕になる人の条件だと思います。

坂爪 風俗は自尊心を削られがちな世界だと思いますが、そんな中で人を信じられる力、大切だと思います。

【会場からの質問】

Q:まりなさんは作家・ブロガーのはあちゅうさんにインスパイアを受けているような気がするのですが、はあちゅうさんからどんな影響を受けているのかお伺いしたいです。

まりな インスパイアされて・・・というよりは、きっかけは、にしやまさんから「まりなさん、はあちゅうに似ているよね」と言われたことからです(笑)。にしやまさんにお伺いできれば・・・。

にしやま すごいフリがきましたね(笑)。実はご本人とも昔関わったことがあって、努力の人で仕事もできるはあちゅうさんに尊敬を込めて、という意味もあるのですが、まりなさんの雰囲気、対応の速さ、努力する姿勢が似ている。

まりな あまり表からは見えないのですが、度々ネット上で炎上というか話題になっているキャラクターではあるので、立ち上げ時から、そうした炎上を土台に知名度を積み上げていくタイプではあります。

坂爪 ぜひ「デリヘル業界のはあちゅう」として、ネット上で君臨して頂ければと思います(会場笑)

【営業職(32歳・女性)からの質問】

Q:普段はマットのお店で働いています。お客様に喜んでいただけるこの仕事が大好きだと思っています。アンケートの結果は90%~100%で、お客様からはとても喜ばれているのですが、それが次のリピートになかなかつながりません。本指名がつくポイント、こんな工夫が大事だよ、ということがあれば教えて頂きたいです。

まりな アンケートで高得点を出せている時点で「すごい!」と思いますし、この仕事が大好きと言える時点で「ものすごい!」と思います。

どれくらい今のお仕事を続けられているのか分からないのですが、長い目で見れば絶対にお客様は返ってくると思うんですよね。

女の子の中でも、早くリピーターになってくれるお客様を積み上げていく人と、ゆっくり着実にファンを増やしていくタイプの人は分かれます。アンケートで80点、90点を出せるキャストさんは、長いスパンで見れば、必ずお客様は返ってくると思います。

私はどちらかというと早く返すパターンの接客が得意で、80点や90点を狙うよりは、刺さるか刺さらないかは分からないけど、とにかく球数を出す。個別に狙い撃ちというか。私に0点をつける人もいれば、100点をつける人もいる。好き嫌いが分かれる濃い接客スタイルの方が、早くリピートをするお客様は増えると思います。

どちらかを選ぶかというやり方次第ですが、80点、90点を出していく接客のあり方自体はとても良いと思います。

にしやま まりなさんがおっしゃっていたような「早いリピート」「遅いリピート」は必ずあります。

キャストさんから見れば、お客様が満足されて「また来るね」と言ったら、自分の次の出勤には来てくれるんじゃないかなと思う。

お客様がリピートするまでの平均期間をきちんと統計的に教える人がいないと、そういう感覚になってしまう。半年に1回来てくださる方もいれば、1年に1回の方もいる。3年ぶりというお客様もいる。どれくらいの長さなのかも変わってくる。

また80点~90点を取るタイプの接客について、特にマットのお店だと、キャストさんがあれもやろう、これもやろうとテクニックを詰め込むと、プレイ中のお客様の様子を落ち着いて見れていないことが良くあるんですね。

マットプレイ自体で100点を出すことや、マットサービスの中で100あるテクニックを全て実施することではなく、仮に30点であっても、お客様のことを気持ち的に受け入れていたり、お客様が持っているものを受け止めたり、引き出したりすることができれば、評価は変わる。

ご自身のやり方に100%固執せずに、ちょっと気持ちを落ち着けて、話す時に柔らかく話すなどの雰囲気作りを心がけてみたり、別れる際に、お客様に「今日は来てくれてありがとう。また待っているね。お仕事、頑張ろう!」といった元気を注入するとか。

人間的な一言、勇気づける一言、「私は味方だよ」という一言があれば、お客様は「自分を受け入れてくれる人がいるな」と安心できる。

100あるサービスを100やろうとすると、気持ちの面で受け入れることが抜けてしまうので、お客様のことをよく見ることが大切ですね。

【デリヘル経営者(女性)からの質問】

Q:お店の従業員の増やし方を教えてください。女の子は集まるようになってきたのですが、それを切り盛りするスタッフがなかなか集まらない状況です。

まりな 今のところ、うちはスタッフが少なくて困るといったことはあまりありません。経営者として・オーナーとして・スタッフとして、私は今こういうことを考えていて、これからはこんなことをやっていきたい、ということを発信していると、自然と人が集まってきてくださるのかなと。

リーダーが発信をしていくこと。ただ自分がこうなりたい、お金を稼ぎたいといったことではなく、こんなことをみんなや社会に与えたい、こういうお店を作りたい、と伝えていくことが大事だと思います。

にしやま 僕も自分が思いっきり表に出ているので、応募の数という意味ではあまり困らない。ただ、応募数で困らなくなるまで二年かかっているんです。

二年前にインタビュー記事を出して頂いたのが僕の最初のメディア露出なのですが、その前から自分でブログを書いたりと、準備はしていた。

メディアに出たくて準備をしていたわけではなくて、単純にスタッフが来てほしくて。ブログの記事が溜まりに溜まった時、応募数に困らなくなるだろうと、ずっと準備をしていた。

応募数に関しては、顔出しで何かをやらなくてもいいので、ブログを書いたり、ツイッターでつぶやいたり、とにかく発信することが大切です。

あとは、応募や面接の際に「こんな人に来てもらいたい」ということを明確にする。応募者に対して「どんな夢がありますか」と尋ねても、たいそうな夢を持っている人は少ない。僕も聞かれたら、はっきり言えない。夢はあるけど、風俗のスタッフに応募する時は、その夢は語らない。

「自分たちの店はすごいビジョンを持っている」「これだけ稼げます」的な打ち出し方をするよりも、「うちはこんな雰囲気の店なので、こういう人に来てほしい」という打ち出し方をする。自分はどんな人が好きで、どんな人と一緒に働きたいのかを、性格の方にフォーカスして語る、というのが大事かなと。「友達募集」みたいですね(笑)。

Q:小さな店には、大きなお店ではできない広告のやり方があるのでしょうか。もしあるとするならば、どのような内容になるのでしょうか。

まりな 小さなお店の場合、お客様とダイレクトにやりとりできることが大きいのかなと思います。大きいところは、一斉にメルマガを出す、サイトで上位表示されることが大事になると思うのですが、小さなお店は、お客様一人ひとりに対してメッセージを送ることが大切です。

サイドラインは、最初の頃から現在まで、セグメントされたお客様にメッセージを送るということを行っています。個々を見ることは確実にできる。そこが強みになると思います。

にしやま 自分たちのストーリーを伝えていくことですね。嘘をついて、自分たちの店はすごい店、立派な店なんだぜ、とする広告のやり方はダメ。

出勤するキャストさんが少なかったとしても、「うちはまだまだ出勤数も在籍数も少ないので、今日はこれこれこういう作業をしていて、広告も更新しました」といった小さいことを店長さんが発信していくことが、小さなお店では大事だと思います。

全然女性がいない状態で、サイトにダミー出勤を10名くらい出して、「すみません、今この子は予約が入っておりまして」というようなことをやっているよりは、一から信頼関係をつくっていく方がいい。「今日もゼロ人でした」「明日もゼロ人かもしれません」といった記事が続く中で、「今日面接が来ました!」という記事が出れば、お客様も感動しますよね。そうした小さな感動を伝えていく。

それが伝わると、このお店自体が好きだとか、店自体を追ってみたいと思う人が増える。「久しぶりに見たら、いつのまにか在籍10名になっているじゃないか」といった驚きを与えられるのも、小さなお店ならではです。

従来のお店の新規オープンは、「いかに自分たちが立派な店か」ということをアピールすることが主だったと思うのですが、それを今風に直すのであれば、自分たちのストーリー、共感できる経験を一つ一つ「大事件」にして語っていくことになると思います。

坂爪 地下アイドルを応援していくみたいな話に近いですね。

まりな 先ほど「お客様に育てて頂く」という話がちらっとでたと思うのですが、まさにそれで、「サイドラインはお客様に育ててもらっているお店です」と言っています。オープン当初から、「こういう時にこういう対応をしてくださって、ありがとうございました」と文章にして送ったり。まさに地下アイドルとファンの関係ですよね。「育ててもらっている」という風に私も認識していますし、そのように伝える。小さいお店ならではの「できること」だと思います。

坂爪 お客様からも「やさしい気持ちにしてもらっている店」ということですね。

【大学院生(20代・男性)からの質問】

Q:リアルイベントはすごい試みだと思います。開催の難しさに加えて、もう少し中身についてお話をお聞きしたいです。具体的にはどのような形でイベントが進んでいるのでしょうか?キャバクラのような形なのか、趣味のオフ会のような形なのか。

まりな 回によって違っていて、例えば先月ですと、お客様は30~40名の参加者で、参加費5500円を頂いて、結婚式の二次会をやるような会場で飲み放題・食べ放題、という形でした。

先ほどの「例のプール」では、ステージと客席という形でした。イベントの内容は、女の子の紹介やスタッフの挨拶もあるのですが、お客様から一番求められているのは、わちゃわちゃタイムと呼ばれている交流の時間です。

お客様全員が女の子全員ときちんと話せることが大事なので、テーブルを6つくらい作って、そこを女の子が順番に回るスタイルにしています。その時にお客様ときちんと話せたか否かが重要で、話せていないとクレームにつながるし、話せていれば満足度のアップにつながる。

そこで重要になるのがキャスト兼任スタッフです。キャストさんはどうしても目の前のお客様につかまりがちなのですが、それをはがして(笑)、色々なお客様につける作業を行う。そういう意識を持ったスタッフが紛れ込んでいることが重要です。

【自営業・AV映像編集(男性)からの質問】

Q:VRを使って、風俗における気持ちのつながりはうまく作れますか?もしくは作れるようになると思いますか?

にしやま さっきの話で言えば、キャラクターが誰なのかによりますよね。目の前で見ているキャラクターが置き換えられたキャラであれば、置き換えられてしまっている人との気持ちのつながりを作るのは無理だと思います。

VRへの感情移入については、見ている映像とのつながりになる。それはできると思います。3Dキャラクタ―に恋をすることも起こるし、それがスキャンダルになることもある。

最近はVTuberが流行っていますが、バーチャルなキャラクターへの感情移入は可能。あとはAIがどう人間の気持ちを理解するか。AIでもウィットに富んだ返信をすることができるので、そこで恋心が芽生えることもあるとは思います。

【介護士(男性)からの質問】

Q:それぞれのお店の利用される方の年齢層、リピーターの割合を教えてください。

まりな サイドラインは40代の方がメインで、30代、50代がちらほら。20代の方はすごく少ないんですよ。価格帯という理由もあるとは思うのですが、そもそも「やさしい気持ちになれる店」として売り出している時点で、気持ちのつながりを求めてくるお客様が多い。

20代の方は横のつながりが多いので、それに比べると、毎日の中でちょっと孤独さを感じる、会社でも飲みに行く時間が少ない、という40代以上のお客様が増えてきているのではと思います。

にしやま うちも30代後半から40代のお客様が多いですね。価格帯として安いので、20代の方もちらほらいます。

リピーターさんとして多いのは、フェチな心を出したい、ソフトなMっ気のある方だったり、精神性を満たしたいという人が多い。「こんなことがやりたい」という身体性ではなく、「こんな気持ちになりたい」「こういう性癖を分かってほしい」という方が多い。

【求人媒体関係(男性)からのご質問】

Q:お二人が日々必ずチェックされている、業界関係の個人サイト、ツイッターアカウントがあれば教えてください。

まりな 日々チェックしているものは、そんなに多くは無いのですが、業界関係者の方のツイッターをリスト化して見てはいますね。風俗嬢の方がトレンドを持っていることがある。「盗撮被害に遭って、こんな器具が出てきました」とか。ツイッターではそういうのが回ってくるのが早いので、気づかれない程度にちらっと見ていますね。あとは、お客様と話す機会も多いので、普通のニュースサイトとか。会社員と同じですね。

にしやま 僕は普段から見ている風俗メディアはほぼ無いのですが、業界の方のツイッターで新しい情報を得ることはあります。メディアに関しては、会場に関係者の方々もいらっしゃるので、この場で話したいことがあります。本気なので許してほしいのですが、メディア批判をさせて頂くと、今は面白い風俗サイトがありません。

風俗業界のメディア自体がプラットフォーム化されすぎている。Facebookやブログもそうですが、プラットフォームの発想は限界が来ていると思います。

つまり、風俗「メディア」と言いながら、実態はメディアでも何でもない。自分たちでシステムをつくるから、後はお店が一生懸命更新してくださいね、という話になりがち。というか、なりすぎなんですよ。

大手グループで、人材も豊富にいて、上の方のプランで上位表示されて・・・という方法でしか勝てなくなってきている。そうなると、このシーンは絶対に盛り上がらないし、小さな店でも大きくなれました、というのはたまたま運が良かったから、という偶然の話になる。

これをたまたまにしないためにも、メディアの方々にお力を貸していただくことが一番大切だと思います。でも、今は面白いメディアがない。

これからは小さいメディア、小さい編集部の時代だと思っています。今日はライターさんもたくさんいらっしゃると思うのですが、発見や発信はメディアの特権であるはず。でもメディアが大きくなればなるほど、「大手が広告を出してくれてよかった!」「やった!」という話になってしまう。

僕が大手が嫌いだということではなくて、小さいメディアが必要だということです。といっても、業界に関するゴシップニュースや暗いニュース、「こんな店が摘発されました」というニュースを流すようなメディアではない。そうしたニュースは、一般のメディアでも流れるので。

そうでなくて、業界の中でこんな変わったところがあったよ、こんな変化があったよ、こういう良いことがあったよ、ということを発見・発信してくださるメディアが必要だと思います。

「お店が頑張ってくれれば効果が出るんです」と言っているのは、単なるSEOの問題なので、本当につまらない。

これから風俗業界を盛り上げていくためには、メディアの力が欠かせない。お店側だけが頑張れば業界が健全化される、というのは大間違い。メディアの方々にももっと頑張ってほしいなと思います。

僕も機会あればメディアをやりたいと思っています。紙媒体では、以前から『俺の旅』さんや『週刊実話』さんが、自分たちで動いてネタをつかんでいくということをやられている。実際はとても大変なんだけど、そこで成り立つ何かができないかなと考えています。

プラットフォームの発想って、ウェブ2.0、Mixiが出てきた辺りからの発想だと思うのですが、「自分たちがシステムを抱えれば大儲けできる」という発想ですよね。

プラットフォームの世界は特定の会社が大勝ちする世界なので、シティヘブンとバニラにはもう勝てない。そこでどうやって自分たちが勝つか、と考えた時に、二番手・三番手のプラットフォームを作ったところで、僕らは広告を出すわけがない。

小さいメディアでも構わないので、店や業界に対する批判力、情報を取り上げる能力、業界を盛り上げる能力があり、お店に寄り添ってくれるメディアができればすごくいいのかなと思っています。

坂爪 既存の大手グループの広告を載せることだけがメディアの役割ではない。「メディアが店を育てる」という感覚、なかなかないですよね。

にしやま 絶対「メディアが店を育てる」が必要と思います。キャストさんで誰が新人で入ったとか、こんなイベントをやっていますとか、どうしてもそういう話に寄りがちになるのですが、それをちゃんと自分たちの言葉で伝えていくメディア、店文脈で語ってくれるメディアが全くない。「うちは違う」と思うのであれば、頑張ってほしい。

まりな それはすごく思いますね。意志を持っているメディアがあまりないのかなと。見ていてチェックしたくなるサイトがない、というのは問題ですよね。

「正しいことをやりたい」とみんな言っているのに、正しいことを発信していないメディアが多い。「悪いことや悪いお店だと知っているのに、なぜ載せているの?」と思うこともたくさんある。

「このお店、こういうことをしているのを知っているのに、なぜ上位に載せているのですか?」と言いたくても、誰も聞いてくれない。

それは、これまでのメディアの方々が作られた世界なのかもしれないのですが、新しいメディアもどんどん増えているはずなので、これから出てくるメディアには、そういうところを頑張ってほしい。そういうメディアであれば私たちも入っていきたいです。

坂爪 ここで、会場の参加者の方々からのご感想をお伝えします。

【福祉職(男性)】どんな業界にも当てはまる貴重なお話、ありがとうございました。「人の気持ちにフォーカスする」「やさしい気持ちをつくる」・・・来て良かったです。

【男性】とても参考になりました。風俗は社会の必要悪ということを自分も発信しています。風俗業界も景気の影響を受けやすいと思うのですが、また新たなアイデアを駆使して頑張ってください。

【男性】新潟でナイト系ポータルサイトを運営しています。「ハコ推し」という概念にはとても共感できました。風俗サイトやウェブの基本構造、ここ数年変化はありませんが、いい女の子とお客さん、お店スタッフをつなぐ仕掛けは必要になってくると思います。

【44歳・風俗エステ講師男性】共感するお話が多かったです。まさに私が女の子にこの業界は危ない業界ではない、と長年発信している最中でした。お二人の活躍、今後も期待しております。

坂爪 最後に、こちらの質問で終わりにしたいと思います。

【大学生(22歳・女性)】

Q:今後、風俗業界の社会的なイメージを変えていきたい、とお二人がおっしゃられていましたが、これまで業界に関わってこられた中で、キャストさんやスタッフの変化を現場レベルで感じたことがありますか?

まりな 私も業界歴が長いわけではないので、10年前は・・・という話はできないのですが、今接している女の子は、本当に普通です。会社員の時、仲が良かった先輩のような感じの方が面接に来たりとか。特にすごく困ったことがある、というよりも、少し寂しい、少し家庭内に問題があって・・・という女の子たちが多いと思います。

にしやま 僕も変化はないのですが、本当に普通なんですよね。働き方の変化というよりは、風俗業界と社会の関係性の変化が大事だなと僕は思っていて。

風俗業界で働いている人って、中にはぶっ飛んでいる人もいますが、普通の人も多いと思うんですよ。普通の会社と何も変わらない。風俗業界だからどう、ということはない。

お客様の好みの変化について、僕も7年間この業界にいるので、思うところはあります。先ほどのメディアの話ともつながるのですが、お客様の考えをどうにかアップデートできないかなと。

ルールを守る以前の問題として、みんなそもそもルール自体を知らなくない?と。ルール自体、店が独自に決めたものなので、そんなに発信していない。

そうした中で「ルールを守ってください」というのは僕らのエゴなんじゃないかなと。そういうのを教えてくれるメディアがあって、それによってみんなの感覚が変わっていくのが理想だと思います。

嫌なお客様だなという人がいても、元はやさしい人で、ただ癒してほしかった、とか。単純に考えてしまったからコストパフォーマンスに走ってしまったとか。お客様のそうした意識をどう変えていくかがポイントだなと。

女の子から「指名を取りたいのだけれど、どうしたらいいですか?」と聞かれた時、7年前だったら「黒髪にして清楚になればいいよ」と言っていた。

でも最近思うのは、女の子のお洒落として、髪にグラデーションをかけることが個性として流行っている中で、社会状況も変化している中で、その子が稼ぎたいと思っている時に、「黒髪に戻そう」「そのお洒落は、稼ぐためには要らないんだ」と切り捨ててしまうことって、単純すぎてダメなんじゃないかと思うようになってきたんですよ。

女の子に「黒髪にならないと売れないよ」という業界よりも、お客様の方にも認識が広まって、「最近の若い子の流行はこうなんだね」と言えるようなおじさんが来た方がカッコいいはず。

こちらのワガママかもしれないけど、そうしたことを伝えていくことができれば、女の子とお客様との間にある断絶が埋まる。情報格差も埋まる。「正しいこと」よりも、「楽しいこと」や「やさしさ」を伝えていければいいかなと思っています。

坂爪 ありがとうございました。最後に、本日のご感想をお伺いします。

まりな 私もお客様相手にイベントは行っているのですが、こういう真面目に聞いて頂く機会はなかなかないので、割と緊張しました。

ですが、先ほど「普通の会社と一緒ですね」というご感想を頂いて、有難かったです。「そうなんです、一緒なんです!」ということが言いたかったので。

今日の会場には学生さんもいらっしゃると思うのですが、将来学生が就活をする時に、商社か、銀行か、広告か、それとも風俗か、みたいな世界になっていったらいいな、と。

無茶無茶遠いとは思うのですが、そんな世の中になっていったらいいなと思います。

それに向けて、一つ一つ、小さな動きですが、発信していければいいなと思っています。本日はありがとうございました。(会場拍手)

にしやま 僕も真面目に語る機会はあまりないのですが、今日お話した仕組み論みたいなことは普段全然話さないので、貴重な機会を頂けて有難いなと思っています。

まりなさんと同じく、この業界で働いている人も、普通の人が多いです。一般の会社で働いていようが、風俗で働いていようが、みんな普通の人だと思うんですよ。

そうした情報の断絶や認識の差がなめらかに埋まっていくようになれば嬉しいと思いますし、業種の一個として、風俗業というものが認められる・・・というのは難しいかもしれませんが、偏見のある対象にならないようになってくれれば嬉しいなと思っているので、こういう活動もしていきたいと思っています。

まずは自分の店が良い店になることを前提として、これからも頑張っていこうと思いました。本日はありがとうございました。(会場拍手)

坂爪 「ビジョン」と「コミュニティ」、今の業界に一番足りないものであると同時に、これからの業界に一番必要なものだと思います。

現場で実際に「ビジョン」を掲げて「コミュニティ」を作っておられているお二人のお話、非常に勉強になりました。にしやまさん、まりなさん、ありがとうございました。

サミットの参加者感想はこちら

【FENIXZINE】若手経営者が考える風俗業界のいまとは? セックスワークサミット2018レポート

セックスワークサミットのページ(次回の開催日程等)はこちら

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