PUT_ショップカード_01

八ヶ岳の麓にNew Openパン屋の食堂「PUT」の物語

「名刺やカードには、人となりや想いが詰まっているはず」その考えのもと、whooのご注文の中から気になった方のお仕事や考え方について、インタビューしてみることにしました。小さな紙の中にも宿る想いや美学は誰かのクリエイティビティを刺激してくれるかもしれません。今回は、パン屋の食堂「PUT」オーナーの久野 洸揮さんです。

久野 洸揮|旅や職など様々な経験を通じてパン食堂「PUT」をオープン。創作活動や音楽活動など肩書きにとらわれない活動を行う。現在は移動できる台車のお店「モバイルショップ」を作成中。

八ヶ岳や南アルプスにほど近い山梨県北杜市に、今年4月にOPENしたパン屋の食堂「PUT」。久野さんはご両親が20年程営業しているパン屋さん「くのパン」に、食事もできるスペースを自ら作ったそう。「PUT」ではパンを使った手作り料理が楽しめます。

愛知からの移住で始まった「くのパン」

ーオープンして3ヶ月程になりますが、いかがですか?
前の店を知ってるお客様だと、びっくりされますね。こんなに変わったのって。昨年の12月に工事のためにお店を閉めたのですが、オープン時には特に告知などしていないんです。でもありがたいことに良い反応をいただけることも多く、口コミなどで徐々に広まってくれているのかなと思います。

―店内のキリンが目につきました。なぜキリンなんですか?
よく聞かれるのですが、両親がただ好きなんですよね(笑)「くのパン」オープン当初からいるのでマスコットキャラクターみたいになっています。実は店内には何匹かいまして「PUT」のロゴもキリンをモチーフにして作りました。

1階にあるキリンの足と…

2階に顔を出すキリンの頭。

サイズ感が伝わりずらいのですが、巨大です。実物くらいありそう。

ー「PUT」の名前の由来は?
何かを「はさむ」店をやりたかったんです。ハンバーガーとかサンドウィッチとか。「PUT」って「はさむ」という意味の英単語なんですよ、「SAND」ではなく。単純に響きもゴロもいいし覚えやすいかなと。シンプルに「はさむ店」を表現できる、ということで決めました。

―なぜ「PUT」を作ったのですか?
「くのパン」は僕の両親がやっていたのですが、僕がここに戻って来ることになり、一緒にやろうと。両親は元は愛知でパン屋を営んでいて、20年程前に移住してきました。僕は当時学生だったのですが「八ヶ岳に行くよ」って言われて…。今でこそこの辺はお店も増えていますが、僕たちが来た当時はパン屋さんも、他のお店もほとんどなかったですね。

ー来た当時はどうでしたか?
自然がいっぱいで過ごしやすいところだな、くらいの感想でしたが、年齢を重ねるにつれてここの良さを実感するようになってきました。僕はこの場所に助けられたという感覚が強かったので、戻って来てお店をやろうと決めたときに、ここに恩返ししたいという気持ちもありましたね。

好奇心のおもむくままにチャレンジした日々

―「PUT」を始めるまでは何をされていたのですか?
やりたいことが色々あったので、色々やっていました。海外に長いこといたりとか。場所によって目的が違ったのですが、例えばオーロラの写真を撮るためにフィンランドの北の方に1ヶ月滞在したり。簡単に撮れてしまうオーロラには価値を感じなくて、敢えて難しいところで撮りたいと思っていたんです。結局1日しか見れなかったですけどすごいものが見れました。

なんと初日に見れたという鳥肌もののオーロラ。撮影:久野さん

―他には何をされていたのですか?
自転車でオーストラリアの大陸を横断しました。距離は3000km弱くらいあってとても長かったですけど、やりました。西のパースから東のシドニーまで、4ヶ月くらいかかりましたね。

現地のフォトグラファーに撮ってもらったという、大陸横断中の久野さん。

思い立ったらすぐやりたいタイプなので、行きたい!と思ったら季節も考えずに行ってしまって。その時はちょうど真夏だったんですよね。オーストラリアの夏はこんなに暑いのか…と思って。そんなのも知らずに行っちゃったので、終わった時は全身が火傷みたいになりました。。

現地ではたまたま仲良くなった人とか色んな人に助けられました。2週間くらい家に置いてもらったりとか。そんなタフなこともやってました。

ーすごい行動力ですね…戻って来るきっかけは?
きっかけは特になく、本当にタイミングが合ったというか。両親も変わりなくパン屋をやっていましたし、自分のタイミングと店舗をいじれるタイミングがたまたま合致した感じです。去年まではここでお店をやるなんて思ってもいなかったので。

できることは自分でやるスタイル

ー内装やデザインはどうされたのですか?
全部僕がやりました。知り合いの設計士の方に構造上の判断をしてもらうくらいで、あとは大工さんと僕で。壁は自分一人でやっちゃいましたね。

木のぬくもりあふれる落ち着いたスペース。日差しが良い感じに差し込んでいました。

ーかなりのDIYですね
この壁は活性炭という炭を潰しながら塗っていき、白と黒の色を出していくというものなんです。力も必要だしその加減によって色が変わってくるものなんです。この規模をやるのはすごく大変だと左官屋さんに嫌がられたので、じゃあ自分でやります、と。

こだわりの壁。マーブル模様のような風合いになっています。

ーそのようなご経験もあったのでしょうか?
全くなかったです!でも建築は好きだったので、教えてもらってやっちゃいましたね。

ー机や椅子や飾ってある小物も素敵ですね
雑貨などは昔から使ってるものが多いですね。前にあったものを活かしてお店を作っていくことはすごく考えました。あとはヨーロッパや中東やアジアのものなど、自分がいいと思うものを選んだり買い付けて来たり。例えば2階の照明はパキスタンで実際に使われていた一点モノだったり、椅子はタイのものだったり、雰囲気に合うものをチョイスしました。

1階にもイートインスペースが。

参考にしたお店などは特になく、全部久野さんのイメージで作ったそう。

コーヒーカップはヴィンテージ風。

コースターすらかわいい。

ーファンタジーっぽい雰囲気を感じました。他にこだわりは?
店内のタイルも自分で貼りました。特にアーチの部分はどうしても貼りたかったので!

よく見ると、店内の様々な箇所にタイルが貼られていました。

肩書きにこだわらず、新しい形を作りたい

ーお料理もおいしかったです
料理は極力自分で作っています。ハンバーガーのバンズやホットサンドのパンは「くのパン」で売っていないものを使っています。それはパン屋だからできるメリットですね。

人気メニューのハンバーガー。美味しいが止まりませんでした。

―お料理はどこで学んだのですか?
ここに戻ってくる前は東京に2年ほどいてレストランで働いたり、ビールの作り方を学んだり、色々興味を持ってやっていました。
僕は何か一つに絞らず、肩書きにもこだわらずに、新しい形を作ったり色々できたらいいなって思っていて。今回やりたかったのはカフェではないしダイナーでもない、一番しっくりきたのが「パン屋の食堂」だったんです。
今はこのような形でやっていますけど、また別の形でもできたらいいなって思っています。

「パン屋の食堂」が一目でわかるカード。


ーwhooを知っていただいたきっかけは?
カードも普通のものを作りたくなくて、正方形の形にしたいというのは決めていました。
そこで検索して見つけたのですが、デザインがたくさんあったのが一番はまったところですね。

ーロゴはご自身で制作されたのですか?
キリンがいて、台車を押して、とかをイメージして、自分でラフを描いて知り合いに作ってもらいました。以前台車を作ったことがあって、その台車で商売をやろうとしていたんです。その構想は今も温めていていて。ロゴには台車の自由度の高さ、自由に動けるんだよ、という意味も込めています。

「継ぐ」のではなく「創り出す」

ー1日のスケジュールは?
忙しい時は夜中の2時に起きて仕込みを開始します。「くのパン」は8時半に全部のパンを揃えた状態でオープンするので、その日の分を全部準備して、売り切れたら終わりです。

この日も「くのパン」のパンはほとんど売り切れでした。GWやお盆は30分程で売り切れてしまうとか!

パンは親父が焼いています。リニューアルオープンした時に、変わらないことの大事さをすごく感じたんです。今までの「くのパン」のパンを求めていらっしゃるお客様も多かったので。
アルバイトさんを雇ったこともなくずっと身内だけでできる範囲でやっていいるので、僕ができるところはサポートしていこうと思っています。

ーパン屋さんを継ごうという気持ちはあったのですか?
全くないですね。今も「息子さん、くのパンを継いだんだね」とか言われるんですけど、自分の中では継いだという感覚ではないんですよね。両親も継ぐのではなく自分で見つけろ、と言ってくれるタイプなので。
「くのパン」は両親が作ったもので、それを僕が継いだら「くのパン」ではなくなってしまうんですよね。だから形は崩したくないですし、ここから新しいものを作り上げていければいいなと思っています。

―5年後に何をやっているかはわからないですね
年単位でわからないですね(笑)自分でも何をやっているのか楽しみです。東京でも何かできたら面白いなと思ってるので密かに考えています。

まとめ

久野さんのようにたくさんの好きなもの・コトへ向かうエネルギーが素直にいいなぁと思いました。「何か一つに絞らない」柔軟さからクリエイティブで新しいものが生まれるのかも。とにかくお店もかわいくて料理も美味しかったので、絶対食べたい方はOPEN直後が狙い目!

【くのパン&PUT 営業時間】
Bakery 8:30~(売り切れ次第)
Dining Room 8:30~16:00(L.o.15:00)
月・火定休
北杜市大泉町西井出8240-2924


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