ホウキボシ様_02

鳥取の草木から紡ぎ出される自然な製品のつくり方

「名刺やカードには、人となりや想いが詰まっているはず」その考えのもと、whooのご注文の中から気になった方のお仕事や考え方について、インタビューしてみることにしました。小さな紙の中にも宿る想いや美学は誰かのクリエイティビティを刺激してくれるかもしれません。今回は手織り草木染作家の山崎流水香さんです。

山崎 流水香|鳥取県で学習塾を経営しながら、母娘でハンドメイド工房「手織り草木染ホウキボシ」を運営。手織り、草木染め、型染め、糸紡ぎで身の回りの自然を取り入れたものづくりを行う。5月にWebサイトをリニューアル。作品はminne等で販売中。

「布感」を感じる小さなショップカード

裏面にたくさんの種類の写真を入れたMINIサイズのショップカード。

—カードなのに布っぽい質感を感じました。色々な種類があるのもいいですね
ほとんどが布をスキャンして作りました。私は布の質感がめちゃくちゃ好きなんです。布ってあまり細かいところまで見ないと思うのですが、よく見るとすごく楽しいし、綺麗だなと思っていまして。そんなことをショップカードを見た人が感じてくれるといいなと思って、色んな折り目とか模様がよく見えるようにスキャンした画像を使いました。
whooのPicsでたくさんの種類が作れるというところも、これはいいなと思って。

—難しいことはなかったですか?
唯一難しいなと思ったのは、どのくらいの明るさで入稿データ作ったらいいか迷ったところですね。でも出来上がりをみたらキレイに色が出ていたのでよかったなと思います。

ハンドメイドイベントでも使っていただいています。

塾経営のスキマ時間で始めたハンドメイド

—現在の活動について教えてください
草木染めや型染めをした糸や布を作って、それを元に雑貨なども作っています。綿みたいな状態のものから糸を作って布状にして織るところまで、糸から縫製まで全部やっています。

—全部の工程を行なっているんですね。どのようなきっかけで始めたのでしょうか?
最初に始めたのは1対1の個人学習塾なんです。今もメインの事業は塾なのですが、塾は夕方に来られる生徒さんが多いので、昼間空いた時間にできることを考えていまして。母と2人でやってるので、2人共興味があることをやってみようと思って。元々ものづくりが好きだったのもあって、5年前くらい前から始めました。

—塾ですか、全然違う領域ですね
そうですね。ただ、私たちの塾のスタイルは生徒さん1人ひとりのためだけにやるというもので、ハンドメイドもこの世で一つのものを作るということなので、その点は似ているかなと思っています。草木染めはそのときに出た色は一つしかない、と考えるとすべて一点ものになりますね。

—言われてみるとそうですね。ところでショップ名「ホウキボシ」の由来は何でしょうか?
私たちは鳥取の中部地域で活動をしています。昔、その地域を伯耆国(ほうきのくに)と言っていたことから、とりました。草木染めには地域の草や木を積んできていて、図案や柄も周りの花などを参考にしているので、地域の名前を取り入れたかったんです。

カタチから逆算してつくるこだわりの布

一番人気のポーチ。

—作業工程でのこだわりはありますか?
私たちはまず布を作ってから商品を作るのですが、最終的に製品になったときにどうやって柄がでるのか計算して布を作ることができるんです。市販の布とは違い、手作りの良さを生かし「縫い合わせた時にこに模様が出てほしい」などを考えて布を作っています。

あとはデザインも自分たちで行なっているのですが、例えばポーチだと市販のものはマチがあって厚すぎたり、逆に大きなスマホが入らなかったりするんですよね。なので使いやすい大きさを考えながら作っています。

作った布からイメージされる言葉を選んで、作品ごとに名前をつけているそうです。これは「淡雪

地元の草木で作る糸や布

—草木染めについて教えていただけますでしょうか?
草木染めは、まず植物を煮出し「染液」を作リます。そこに糸や布を入れて草や木から出る色を定着させる染め方です。多くはその辺の道路脇に生えている植物とか、近くの公園で手に入れた木の枝とかを使いますね。

—枝も使うんですね!
はい。草木染めには実は花びらではなく枝を使うんです。例えば桜の枝を使えばピンク色に染まります。花びらはキレイな色は出るのですが色が定着せず、すぐに色が飛んじゃうので、枝とか葉っぱを使うことが多いです。

—茶色い枝からピンク色というのは意外でした。植物によってどんな色がでるのか想像できるものなんですか?
これまでもたくさんの先人がやって下さっているので、本などで大体のあたりをつけてやっています。先人の知恵はすごいですよ。それでもわからないときは、その植物が何科(バラ科など)という情報から、予想して染めることもありますね。

—難しい色はありますか?
出すのが難しい色は、濃い黒や青系です。青は藍染めくらいしか方法がなく、発酵させたりと、とても手間がかかるものなんです。
あとは緑も意外と難しいですね。澄んだ緑を出そうと思うと、【色を掛け合わせる】、というやり方になるんです。例えば黄色に染めてから藍で染めて「黄色+青で緑」とか。なかなか植物一種類でやるというのは難しいですね。

最近、草木染めの名人みたいな人が「葛」で緑を出すというのを発明したのですが、それも他の草木染めよりは手間がかかるもので、煮出した液を4回くらい捨てないと綺麗にならないとか。青系と緑系はかなり手間をかけた工程が必要なので大変です。

—色によってかなり手間がかかるんですね。通常はどのくらい時間がかかるのでしょうか?
通常のものだと30分〜1時間くらい煮ています。
煮ているときの匂いは最高なんですよ!ゆずとか特に。他には人参の葉っぱは煮物みたいな匂いがしますね。いい匂いのする染料の時はいい匂いを味わいながら作業しています。

寸胴鍋で煮ているそう。料理する感覚に近そうです。

細かい模様もしっかり出せる型染め

—型染めの作品もつくっていますね。型染めについても教えていただけますか?
有名なのは、沖縄の紅型(びんがた)とか江戸小紋というものですね。
型紙に模様をくり抜いて型紙に合わせるのですが、やり方は2種類あります。ステンシルみたいに顔料を刷り込む方法と、「のり」を模様のところに塗って、型紙を外して顔料を刷り込んでいく方法です。そうすると「のり」のところだけ色がつかなくて洗ったら白い模様ができるんです。
一般的に型染めでイメージするのは前者の方かなと思います。

綺麗な模様が出てきます。

—草木染めと型染めはどのように使い分けされているんですか?
そもそも草木染めは糸や布を一色に染めて、それを折って模様を出すというものです。でも型染めは折った模様じゃなくて、折った模様では難しい曲線とか細かい模様が作れるので、模様を作りたい場合は型染めをしていますね。

既製品にピンとこない方へ届けたい

草木染めした綿糸で手織りしたストール「姫木葉鳥」。優しい雰囲気になれそう。

—最後に、ホウキボシの製品をどんな方に使っていただきたいですか?
普通にお店で売っているものを見てもピンとくるものがないなとか、心動かないなというひとには一度手にとってみて欲しいですね。私たちもそうですが、既製品を見ても、もっとこうだったらいいのになーとか色々思うところがあり、自分たちがほしいものを作るというところから始まっているので。なので既製品に疲れたなという人にはおすすめしたいです。

まとめ

カードの写真の繊維感が気になったのと、草木染めって何だろう?と思ったことがきっかけで今回お話を伺いました。「大量生産・大量消費」とは真逆を行く、身の回りの素材を活かした一点モノのモノづくりをされていること、さらに塾との兼業というワークスタイルが今の時代に合っているなと感じました。オリジナルな草木染め・型染め作品を手にとってみてはいかがでしょうか。


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