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【プロ野球 名場面第18回】西武の5連覇を粉砕したブライアント(1989年)

1989年のパ・リーグのペナントレースは、西武、近鉄、オリックスの三つ巴であった。

この年、首位を走ったのは新生オリックス。開幕8連勝で勢いづくと、ペナントを快走する。前年オフ阪急からオリックスに球団は譲渡され、西宮球場からグリーンスタジアム神戸と本拠地を改めていた。また、松永浩美、ブーマー、石嶺和彦、藤井康雄ら構成される打線に南海から前年の2冠に輝いた門田博光が加わり、「ブルーサンダー打線」の異名を取った。6月終了時点で2位近鉄に8.5ゲーム差をつける独走ぶりであった。しかし、7月に入るとベテラン投手陣に疲れが見え、失速。近鉄と西武の猛追を受け、8月12日には首位を近鉄に明け渡ししてしまう。
近鉄は、前年最終戦で優勝を逃した悔しさをバネに、開幕から独走するオリックスをひたひたと追ってきた。エース阿波野秀幸を軸に、小野和義、山崎慎太郎の3本柱が充実。また、前年74試合で34本塁打と爆発したブライアントがこの年も本塁打を量産。チームを勢いづけていた。
4連覇中の西武は、伊東勤の負傷による戦線離脱、秋山、清原の不振、工藤公康のスランプなどでスタートダッシュに失敗。だが、6月下旬になると、「AKD砲」が機能し、また先発陣も4人(渡辺久信、郭泰源、ルーキー渡辺智男、松沼博久)を軸に、投打の歯車が噛み合い、近鉄と共に追撃態勢を整えていった。
そして、10月になっても3者譲らず、デッドヒートを繰り広げていく。そして、運命の10月12日、近鉄‐西武の運命のダブルヘッダーを迎えたのである。第一試合は西武が3回までに4-0とリードし、有利に試合を進める。近鉄は、4回郭泰源からブライアントがソロホームランで1点を返す。そして1-4で迎えた6回、郭泰源が突如崩れ、ブライアントを迎えた。「初球は必ずボールで」と指示した森監督だったが、郭の投じたボールは吸い込まれるように高めのストライクゾーンに。ブライアントは見逃さず、満塁弾を放ち、同点に追いついた。8回西武は本来先発の渡辺久信をマウンドに送る。バッターは再びブライアントを迎えていた。ブライアントに相性のいい渡辺に何としてでも流れを食い止めて欲しいとの期待があったのだろう。2ストライク1ボールと追い込み、投じたストレートをブライアントがスイングすると、ボールはあっという間にライトスタンドに突き刺さる勝ち越し弾。3打席連続本塁打にベンチは大盛り上がりを見せる。呆然自失で片膝をついた渡辺の姿がやけに印象的だった。この試合をモノにした近鉄は2試合目も爆発。第1打席四球で歩いたブライアントは第2打席で本塁打し、試合を跨って4打数連続本塁打を放った。試合は14-4と大勝。M2が点灯し、ぐっと優勝を引き寄せたのだ。
翌日最終戦を迎えたオリックスが最下位ロッテに敗北を喫し、M1とすると、翌日近鉄は最終戦でダイエーを下し、見事に優勝。ここに前年の雪辱が完成し、西武の5連覇はついえたのだ。
https://www.youtube.com/watch?v=SVkeOT8YjxA

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