生涯無子

生涯未婚率より深刻なのは、生涯無子率の方だ。

少子化対策のために「子ども手当」的なことより、晩婚化・非婚化の解決である、という話はわかるんだが、婚姻数が増えたら少子化が解決されるんでしょうか?

生涯未婚率って言葉が一般に知れ渡ってきているが、未婚率よりも本当は考えなきゃいけない指標があります。

それは、生涯無子率

一生のうちで子どもを生まずに死んでいく人の割合だ。

結婚しても子無し家族はいるわけだから、当然、未婚率よりも高い数値になるはず。男の生涯未婚率が30%を超えるといわれているなら、無子率はもしかして50%を超えているんじゃないだろうか。

だとしたら、「夫婦と子ども」を標準世帯としていた日本の社会は根底からくつがえっていることになるし、流通やサービスだって根本から見直さないといけない。

もっと言うと、「子どもがいる家族」がマジョリティだと思っていた政治家たちは、やれ「子ども手当」だ「保育園」だと票集めの対象を「父と母」に向けていたが、とんだ見当違いになる可能性もある。

ところが…ない!

ネットをいろいろ検索してみたものの、総務省にも厚労省にも「生涯無子率」なる調査資料は一切存在しない。 

仕方ないので、国立社会保障・人口問題研究所の「将来人口推計」のデータ(家族類型別と配偶関係別)をまとめて自作してみた

「夫婦のみ世帯」の数と未婚者の数を足し合わせることで、無子生活者数を割り出すという考え方をした。

※ちなみに、詳細な家族類型には核家族世帯とその他の親族家族世帯があり、それぞれに「子無し世帯」は存在するが、核家族世帯以外の数は今回合算していない。

まず、15歳以上すべての年齢で出してみた。

2010年段階で、男の無子率52%、女でも42%にもなる。2035年には男の無子率57%?という驚異の数字になった。

但し、これは全年齢を対象としているので正確ではない。50代以上の「夫婦のみ世帯」には、子どもが独立した結果「夫婦のみ」となっている世帯が多いからだ。事実、高齢者世帯の「夫婦のみ世帯」比率は高い。

よって、20~59歳までを抽出して算出してみたのが②だ。

これでも、男の無子率は51%になるし、女も40%を超える。

ただこれも、合算されている未婚者のうち20-30代は将来的な結婚して子どもを生む可能性もあるので若干高い数字になりがちだ。


では、生涯未婚率と同じように、46-54歳の年齢に絞ってまとめたらどうか、というのが③になる。

※③の生涯未婚率は、あくまで「将来人口推計」の元データで自動算出しているため、世の中に知れ渡っている生涯未婚率(2010年男20%/女10%)とは誤差が出ているのは了承されたい。

これで見ると、2010年時点で男31%、女21%の生涯無子率ということになる。子どものいない男は全体の3割…。

③の数値がもっとも妥当性が高いかもしれない。統計学やっている専門の方ならもっと正確な数値は出せると思うが、大体こんな感じだ。

思ったほど無子率は高くはない、というのが正直な感想だ。ざっくり言うと、「生涯未婚率」+10%が「生涯無子率」と言っていいんではないか。

よって、2035年では、男41.4%女32.0%が生涯無子率となる。4割の男は生涯子無しで一生を終える、ということだ。


ちなみに、国立社会保障・人口問題研究所が2006年時点で試算した無子割合試算は以下の通り。

どうして女性のみかというと、男性の場合は離婚などした場合にその人が無子だったのか有子だったのか判別つかないからだろう。

これで見ると、1990年生まれの女性(2035年時点で45歳)が無子である割合は、13.8+24.3=38.1%ということになる。2035年時点の女性の生涯未婚率は2015年版の人口統計資料によれば19.2%と推計されていたから、その数値を当てはめると無子率は33%になる。

これに基づいて、男性の場合を単純に上記表の既婚無子割合+男性生涯未婚率で推定すると、13.8+29.0=42.8%。

つまり、2035年時点の生涯無子率は男性42.8%女性33.0%

ほぼ、僕の試算の③と同じくらいだ。

いずれにせよ、男性の4割、女性の3割が生涯無子であるということには変わらないようだ。

男性の遺伝子の4割は子孫を残さずに消えて行くんですね。

結論→男の生涯無子率は現在3割だが、2035年には4割を超える。


もうこの流れは止まらないんですよ。実は、少子化大臣とかいい加減な兼務人事しかしない政府も、「少子化は止まらない」と冷静に判断しているからこそあまり本気感がないんじゃないかと、最近思っている。

ソロ生活者が人口の半分になり、3割の男が生涯未婚で、4割の男は子どもを持つことなく死んでいく。そういう未来を悲観するんじゃなくて、そういう未来に何が必要になるのかを考えて行った方がいいと思いますけどね。そろそろ本気で。

※2015年のデータで新しく試算しています。こちらもどうぞ↓




長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。