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霧深い森の思い出 ― サルオガセ

霧深い森に行くとよく見かける、樹からとろろ昆布のように垂れ下がる薄緑色のそれは、サルオガセという地衣類の一種。名を教えてもらって以来、山で見かけると親しみをもって眺めています。

地衣類とは
地衣類とは、菌類の仲間で、藻類と共生して地衣体というからだを作り、助け合って生きているそうです。菌類は藻類に住み家と水分を与え、藻類が光合成で作った栄養(炭水化物)を利用して生きているといいます。このように、菌類と藻類の共生体だけれども、単一の生物のように見えるものの総称を地衣類といいます。(参考:国立科学博物館-地衣類の探究)

植物染料としての使用
地衣類と一口にいっても、非常に多くの種類があり、サルオガセだけでも日本では40種類ほどあるとか。地衣類(lichen)は、西欧では染料の原料として使われてきた歴史があり、ローズ~赤~薄紫色のさまざまな色合いが得られるそうです。たとえば、地中海地方産の地衣類であるリトマスゴケからは赤紫色の染料が得られ、その使用はローマ帝国の時代にさかのぼるといわれます。このように古くから植物染料の原料として使われてきた地衣類ですが、年に数ミリ程度しか生育しないため、工業生産規模での使用は難しく、地衣類を使った染色は、現代ではほとんど行われていないようです。

香料の原料にも
ウメノキゴケ科の地衣類「オークモス」は、天然香料の原料として利用されます。深く重いウッディノートの香料になります。

写真は数年前、雪解けの季節に長野県の入笠山に登ったときのものです。朝まで雨が降っていたためか、入山者はほとんどおらず、山は静寂に包まれていました。霧が立ち込め、そよ風になびくサルオガセの水滴がきらきらと輝いて、とてもきれいだったことを覚えています。

ちなみに、最近行ったホームグランドの山、高尾山でもサルオガセを見かけました。(後日訂正:キヨスミイトゴケのようです。)

#エッセイ #山歩き #山登り #植物 #自然 #地衣類

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