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洋上風力の新入札ルールの1:1評価をラウンド1にあてはめたら

「八峰町・能代市沖」が公募中だったにもかかわらず、それを中断してまで見直した洋上風力の入札ルールその見直しの論点の一つが、「定性評価の最高点を120点に引き伸ばし」、すなわち「価格と定性(事業実現性)の1:1評価」でした。

桑原委員が「国民負担軽減のため価格重視であるべきで、定性評価の最高点の引き伸ばしは価格点の意味を薄める」として反対し、マスメディアや自称ジャーナリストさんたちも、それに同調する論調でした。

彼らの言っていることは、風力業界の外の人たちには、もっともらしく聞こえたかもしれません。しかし、風力業界では、「1:1評価だけでは大したインパクトはない」と考えられています。それは、洋上風力の新入札ルールの1:1評価をラウンド1にあてはめたら、わかります。

とはいえ、洋上風力の新入札ルールで、事業実現性の評価項目の内訳が変更されています。さらには、ラウンド1の事業実現性の採点結果の内訳は、公表されていません。そのため、中途半端ではありますが、単に定性評価の最高点を120点に引き伸ばしてみてみましょう。

秋田県三種町沖の場合

ここでは、三菱商事コンソーシアムが価格も事業実現性も最高点でした。つまり、ともに120点ずつで240点に引き伸ばされます。

経済産業省・国土交通省京都大学大学院の資料を基に作成

秋田県由利本荘市沖の場合

ここでは、事業実現性の首位は、Renovaコンソーシアムでした。そこで、Renovaコンソーシアムの事業実現性の得点を120点に引き伸ばして、同様の比率で他のコンソーシアムの事業実現性の得点も引き伸ばしました。それでも、大差で三菱商事コンソーシアムが勝ちます。

経済産業省・国土交通省京都大学大学院の資料を基に作成

千葉県銚子市沖

ここでは、事業実現性の首位は、東電RPコンソーシアムでした。そこで、東電RPコンソーシアムの事業実現性の得点を120点に引き伸ばして、同様の比率で他のコンソーシアムの事業実現性の得点も引き伸ばしました。それでも、三菱商事コンソーシアムが勝ちます。

経済産業省・国土交通省京都大学大学院の資料を基に作成

まとめ

ラウンド1の三種町沖では、地元との調整、風況調査、地盤調査で出遅れたコンソーシアムが、事業実現性で最高点を取っています。このことからもわかるように、ラウンド1最大の失敗・反省点は、「選考委員がまともに事業性を評価できていないこと」であり、「経済産業省・国土交通省がまともに事業性を評価できる選考委員を選んでいないこと」に尽きます。

経済産業省・国土交通省は、ラウンド2以降の事業実現性の評価ルールをより複雑に改定しました。しかし、審判のスキルがラウンド1のルールにも対応できなかったことに鑑みれば、審判がラウンド2のさらに複雑なルールに対応できるのか、はなはだ疑問です。

もし三菱商事コンソーシアムだけが、電源・供給先固定型(特定卸供給)」スキームで企業連合をまとめ上げ、あの価格を実現できたとすれば、同様のスキームが使えないコンソーシアムは、ラウンド1並みの価格差をつけられてしまうでしょう。

ラウンド2の審判団が、複雑怪奇な新ルールを読みこなし、公正に判定できれば、新ルールの「定性評価の最高点を120点に引き伸ばし」=「価格と定性(事業実現性)の1:1評価」が機能します。しかし、それができなければ、定性評価の最高点を120点に引き伸ばして、価格と定性(事業実現性)を1:1評価しても、ラウンド1と同じく、事業実現性で差がつかず、価格で決まることになるでしょう。

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