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占用公募制度の運用指針(改訂案)(洋上風力の入札ルール新案)にパブコメしよう

「 一般海域における占用公募制度の運用指針(改訂案)」に関する意見募集(洋上風力の入札ルール新案のパブリック・コメントの募集)が始まりました。ここでは、私なりの論点をまとめます。

論点1.事業の迅速性の評価

論点1は、なんといっても、再エネ議連が持ち出した「迅速性(早期運転開始インセンティブ)」でしょう。「一般海域における占用公募制度の運用指針(改訂案)新旧対照表」の3ページに、以下の文言が加わっています。

出典:経済産業省・国土交通省 一般海域における占用公募制度の運用指針(改訂案)新旧対照表

以前の記事に書いた通り、「迅速性(早期運開インセンティブ)」については、入札ルールのワーキンググループ(WG)で、桑原委員が「セントラル方式に矛盾する」と指摘し、少なくとも3人の委員が反対しています。

これを受けて、苦肉の策で、上記のように「セントラル方式の導入によっては見直すかも」と含みを持たせる表現を加えたのでしょうか。さらに、「一般海域における占用公募制度の運用指針(改訂案)新旧対照表」の6ページに以下の文言が載りました。

出典:経済産業省・国土交通省 一般海域における占用公募制度の運用指針(改訂案)新旧対照表

むちゃくちゃ難解な表現なんですけど、言いたいこととしては、

  1. 経産省・国交省の想定運開日をベンチマークにして『運開日の早さ』を採点しますよ

  2. 基盤面(体制と財務)と実行面(工程)が、それぞれ10点未満だったら、どんなに早くても0点ですよ

  3. 基盤面(体制と財務)と実行面(工程)が、それぞれ10点以上だったら、「1.の点数」×「(基盤面の点数+実行面の点数)÷40」を迅速性の点数としますよ

と読めます。3点目は、私の理解があっているのかどうかも自信ありません。「この理解で合っていますか?」という質問そのものを、パブリックコメントに投稿したいです。もしこの理解があっているとしたら、3は、ラウンド1のように、公募前から詳しい地盤調査も設計もやってウィンドファーム認証にまで進んだ事業者を利することになります。

その一方で、経産省・国交省は、いい加減な体制・計画で迅速性20点を取りに来る事業者を警戒していることが、上記の2点目と新旧対照表の12ページからうかがえます。

出典:経済産業省・国土交通省 一般海域における占用公募制度の運用指針(改訂案)新旧対照表

ここで、経産省・国交省は、「早い運転開始日で入札して、実際に遅れたとしても、港湾の利用許可を延長しませんよ」と釘を刺しているわけです。

論点2.落札制限

経済産業省・国土交通省 一般海域における占用公募制度の運用指針(改訂案)新旧対照表の8ページに、同一ラウンドでの落札上限の規定については、「具体的な方法を公募占用指針に明記する」とあります。

出典:経済産業省・国土交通省 一般海域における占用公募制度の運用指針(改訂案)新旧対照表

ややこしすぎます。「公募占用指針」とは、海域ごとに設ける入札ルールのことで、今回パブコメ中の「占用公募制度の運用指針」とは別物です。つまり、ここでは、「落札制限のルールは、海域個別のルールに申し送ります」としか言っていません。そうなると、パブコメで落札制限について投稿したら、経産省・国交省は、どう答えるでしょうか。

「各海域の公募占用指針に定めます」

という感じでしょうね。次の論点に行きましょう。

論点3.地域との調整

入札ルールのWGでは、あまり論点になっていなかったような気がしますが、経済産業省・国土交通省 一般海域における占用公募制度の運用指針(改訂案)新旧対照表の10ページを見たら、ガッツリ書き込みが増えています。

出典:経済産業省・国土交通省 一般海域における占用公募制度の運用指針(改訂案)新旧対照表

ざっくり言うと、ラウンド1のように、地元とろくすっぽ調整もしていないような事業者がスルスルっと勝ち上がるのを防止したいと読めます。それにしても、よっぽど地元の関係者さんがラウンド1の結果にお怒りだったのか、豪快な加筆っぷりです。

論点4.選考委員の事後公表

同じく経済産業省・国土交通省 一般海域における占用公募制度の運用指針(改訂案)新旧対照表の10ページに、「選定が完了した段階で、選定結果およびその理由等については公表する」とあります。

出典:経済産業省・国土交通省 一般海域における占用公募制度の運用指針(改訂案)新旧対照表

その一方で、ワーキンググループの論点だった「選考委員の事後公表」については全く触れられていません。これがどうなったのかも、パブコメで質問したいところです。

論点5.定性評価の最高点を120点に引き伸ばし(価格・定性1:1評価)

新旧対照表の3ページに戻ります。ワーキンググループで石原委員がこだわっていた「定性評価の最高点を120点に引き伸ばし(価格・定性1:1評価)」が、明記されています。

出典:経済産業省・国土交通省 一般海域における占用公募制度の運用指針(改訂案)新旧対照表

経産省の設計基準づくりの丸投げ先の立場としては、ラウンド1のように「あてずっぽうの設計なのに安いもの勝ち」など、二度とあってはならないことでしょう。

風力業界の外の人は、「あてずっぽうの設計で安い札を入れて、それで詳細設計して、コストを過小評価したことが後でわかっても、それは自己責任だから、いいじゃん?」とお考えでしょう。

しかし、風力業界では、「あてずっぽうの設計で計画を立てたら、その工程は絵にかいた餅で、遅れるリスクが高い」というのが常識です。だから、論点5については、風力業界の外の人たちが反対したのに対し、風力業界では「いい加減な計画で安いもの勝ち」を防ぐ安全弁として歓迎なのです。

まとめ:パブコメしよう

霞が関は、国民の声を聞いたふりするパフォーマンスのために、パブコメをやっているようにも見えます。風技解釈のパブコメも、まさにそうでした。でも、内容的には回答になっていなくても、物理的に無回答ということはありません。ただの質問でもいいんです。

しかも、ウェブならば匿名で投稿できますすべてのリンク先のPDFとWordファイルを開いて、「意見募集要領(提出先を含む)を確認しました」に✅を入れて、「意見入力へ」をクリックしてみてください。

そこまでして投稿しても「原文のままとします」「●●をご参照ください」など、出来の悪いAIみたいなお決まりの回答が返ってくるでしょう。そのときは、このnoteのコメント欄やTwitterに載せて、拡散していきましょう。

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