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経済産業省は風技解釈の改正で丸投げ先に利益誘導していないか?

日本の風力発電の事実上の設計基準となっている「発電用風力設備の技術基準の解釈等(通称、風技解釈)」。このnoteでも、以前に「風技解釈を2年ごとに改正する経済産業省電力安全課(通称、電安課)の暴走ぶり」や「国際基準IECにも書いていないから困って質問した人たちに、IECを参照せよ、と回答する電安課の他人事ぶり」について取り上げました。

実は、それだけではありませんでした。今回の風技解釈の改正のパブリックコメントの回答結果の中に、「電安課が、特定の人物・団体への利益誘導になりうる内容をあえて残しているのではないか」と読める回答があったのです。

極値風速の算定方法に関する新旧対照表の記述

今回の風技解釈の改正で、極値風速の算定方法に項目が新設されました。そこには、「台風はモンテカルロシミュレーション法を用いて」という文言が加わりました。

出典:経済産業省「発電用風力設備に関する技術基準の解釈」の一部改正(案)新旧対照表

この点について、興味深いコメントがついていました。

極値風速の算定方法についての興味深いコメント

出典:経済産業省「発電用風力設備に関する技術基準の解釈」の一部改正(案)に対する御意見と御意見に対する考え方

私なりにざっくり論点をかいつまむと、以下の5点と読めます。

  1. 極値風速の算定方法は、モンテカルロシミュレーション法だけではないのに、どんな理由で、モンテカルロシミュレーション法に限定したのか?

  2. 日本では、モンテカルロシミュレーション法を使った風況解析ソフトMASCOTがデファクトスタンダードになっている

  3. MASCOTは、電安課の設計基準作り丸投げ先である先生が開発したものである

  4. 理由なくモンテカルロシミュレーション法に限定したなら、この風技解釈の改正が先生ソフト会社への利益誘導につながる

  5. モンテカルロシミュレーション法に限定する理由がないなら、他の手法も併記すべき

これに対する電安課の回答がなんだか奇妙です。

電安課の回答

電安課は、はじめに「原案どおりといたします」と書き始めて、以下のように続けました。

出典:経済産業省「発電用風力設備に関する技術基準の解釈」の一部改正(案)に対する御意見と御意見に対する考え方

風技解釈は「例示」であって、「省令に照らして十分」なら「算定方法をモンテカルロシミュレーション法に限定するものではありません」というものです。

風技解釈の改正案の文面を読んだ人が、そのように解釈ことができるのでしょうか。

出典:経済産業省「発電用風力設備に関する技術基準の解釈」の一部改正(案)新旧対照表

この文面から、どうやって「算定方法をモンテカルロシミュレーション法に限定するものではありません」と読むことができるのでしょうか。

風技解釈は例示という言い分はありなのか?

風技解釈は例示だから、そこに書いてあることがすべてではありません」というのが、電安課の言い分です。しかし、もし主管省庁が国土交通省だったら、「そもそも、そこに書いてあることがすべて、となるように設計基準を整えるのが我々の仕事で、建築基準法は、告示・通達まで含めれば、そのような規制になっている」と答えるでしょう。ところが、電気事業法の下に定める風力発電の設計基準は、そのようになっていません。電安課のこの回答は、職務放棄と疑われかねないものです。

そもそも、電安課は、「なぜ風技解釈を出しているのか」を考えてみれば、この回答が自己矛盾であることに気づくはずです。省庁は省令レベルでは細かいことが書けないから、細かいことは告示に落とし込みます。ところが、電安課は基準作りを某先生に丸投げしていて、某先生の研究論文が出るたびに、それが事実上の設計基準になってしまうという状況を容認しています。それを、風技解釈という形で追認しているわけです。

電安課が、「風技解釈は例示」と言ってしまったら、風力業界では、いったい何を物差しとして設計すればよいというのでしょうか。

「台風はモンテカルロシミュレーション法を用いて」の文言の持つ意味

風力業界では、「風技解釈は例示」などとは考えません。電安課の基準作り丸投げ先の先生が、ウィンドファーム認証の審査員にも、経産省の専門家会議の委員にもなっているからです。三権分立を定めているはずの日本という国で、風力については、事実上「ルールを作る人」と「ルールを下にジャッジする人」が同一人物なのです。

「風技解釈は例示」というのは、電安課の建前でしかなく、「風技解釈が事実上のルール」なのです。その状況で、「台風はモンテカルロシミュレーション法を用いて」という文言を残したら、どうなるでしょうか。

たとえさらによい手法が他にあろうとも、電安課の設計基準作り丸投げ先の先生が開発したモンテカルロシミュレーション法による風況解析ソフトMASCOTを使わなければ、ウィンドファーム認証が通らない、つまり許認可が下りないことは、明白です。つまり、電安課が特定の個人団体への利益誘導に手を貸したも同然なのです。

各方面の方々へ

政治家、特に再エネ議連の皆さん、日本のエネルギー自給率向上のためにすべきことは、エネ庁に入札ルールをこねくり回させることではなく、電安課の暴走を止め、風力行政を健全化することですよ。

マスメディアの皆さん、入札ルール見直しみたいな茶番に踊らされていないで、電安課の無政府状態を報道することの方が、はるかに重要ですよ。

野党の政治家、環境団体の皆さん、こういうところに踏み込むことが、あなたがたのプレゼンス(存在意義)向上につながります。是非、踏み込んでください。

NHK党さん、「NHKを、ぶっこわす」の調子で、「電安課も、〇〇〇〇〇」!

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