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ボーイ・ウェイツ・ガール(『君の名は。』の思い出し感想)

地上波で『君の名は。』を放送中らしいので、当時ものすごく(あああーーー瀧ぃ~~~おまえ~~~~ッ!!)って思ってもだもだしていた感想を、せっかくなので書こうと思います。

※以下、容赦なくネタバレしますので、まだ見ていない方はご注意くださいね※

『君の名は。』がとてもきれいにまとまった少年少女の恋愛SFだというのは間違いありません。謎の小出し感、小道具の使い方、魅力的です。歌もすごくいい。映像の美しさについても、改めて語る必要もないでしょう。わかる。人気あるのも売れるのもわかる。

でも、私はこの作品を、ボーイミーツガールとはいいたくないんですよ。

瀧くんがね、記憶を失うのはわかった。

オッケーわかってる。

タイムパラドックスが大変だからね。

それでも心の奥底で誰かを探している。いつか過去に出会ったはずの未来の誰か、名前も知らない誰か。

一度きりしか行かなかった日本アルプスの風景が、狂おしいほど懐かしい。

……その切なさはわかる。いいよね。ふと電車ですれ違って、視線が瞬間交わった、それだけでも、思い出せないのに全力で駆け出してしまう。会いたくて会いたくて、憶えてないけど、そのくらい好きだった。

オッケー、わかったよ。

じゃあなんで何もしないで何年間も東京で待ってたのかなーー!?!?

探しに行けよ!!!!

岐阜県に!!!!!!

がむしゃらだった高校生の頃のように、理由なんてわからなくても糸守の近くに、心惹かれて何度も通うとかさあ、そういう焦燥の月日を!!!

ください!!!!!!!!!!!!

心惹かれる理由もわからない、『誰か』にも会えない。
俺なにやってるんだろ……みたいに自嘲気味に笑って登山趣味に目覚めたけど就活でやめたとか、田舎暮らしに興味を持ったりもするけど、やっぱり田舎生活って柄でもないからと中部地方の大都会N市で就職してようやく偶然三葉と再会~~~~ふたりのあいだ通り過ぎた風は(うろおぼえ)~~~とかならまだ納得がいったが!!!

瀧くんは彗星が降って記憶を失ったあと、これまで通り東京で暮らし東京でバイトし東京で進学し就職し、とにかく東京生活を継続しているだけなんですよ。

いやいやいやいや、そりゃ記憶を失ったけれども。

だからってもう、魂は三葉と出会う前の瀧くんじゃないんだからさあ。今まで通り生活してどうするんだよぉ……。

今までと同じ世界でのんべんだらり(ってほどでもないだろうけど)と過ごしていたら、かつて壊滅して町ごと避難移住したであろう糸守町の町長の娘が、それだけでなく故郷を失った田舎町の人々にとっては確実に精神的な支柱となっているだろう土着信仰の跡継ぎ娘が、なぜか「東京」で就職して一般OLになっているって、それで再会してすごーい!!!……て、私は納得しない!!!

納得しないぞ!!!!!

いくら二人の間を風が通り過ぎても、よかったね―とは思いますよ、思いますけど瀧くん待ってただけじゃねーかという憤りもすごくある。

だからボーイ・ミーツ・ガールって書くのには違和感がすごくて、ボーイ・ウェイツ・ガールじゃんって気持ちになる。

ずっとこれが言いたかったんでした。
はー、すっきりしました。

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