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MWiCメモ05 バイトセンサー調整-3 最近の自分の設定(リリコン的)と、ベンドセンサーゼロ点ズレの対処法

先行テスター(私)の経験談としてのMWiCのバイトセンサー関連の反応とその設定関連のメモ・その3です。リップベンド挙動のReed Bendモードで半年ほど使ってきまして、少しずつ自分のデフォルト設定が変化してリリコン的な設定になってきたのそのメモです。またReed Bendモード特有の問題である、使い始め時のベンドセンサーゼロ点ズレ(ドリフト)の対処についても書きました。(2024年1月30日作成)

MWiC詳細は開発・販売メーカーであるTeefonics社のサイトを御覧ください。

https://teefonics.jp/

はじめに

 MWiCのバイトセンサーの設定はMWiCメモ3と4に書きましたが、その後半年ほど使ってきて、自分の最もよく使う設定が変わってきましたのでそれを公開というか共有というか自分向けの日記を兼ねてメモします。また半年くらいしたら変わるかもしれません。この設定が正しいとは全く言いません。あくまでもこういう設定をしている人もいるんだなぁということで。
 またReed Bendモードでの、その日の吹き始め短時間(1分間とか)に発生する、ベンドセンサーのゼロ点ズレの対処運用についても書きました。

設定コンセプト

 前回まで私はバイトセンサーについてYAMAHA WX5的な設定を最も使っていました。バイトセンサーで、正しい音程から上下とも全音(2半音)、バイトで動かす、というものです。
 しかし最近はリリコンでよくある設定に似てきていて、つまり「正しい音程から、下は半音くらい、上は1/4〜1/2半音くらい」のベンド幅の感じの設定です。

 理由としては、MWiCでWX5的な上下全音幅で、かつ基本的には正しい音程を出そうとすると、フラットポイント(バイトセンサーのカーブの平坦領域)を結構広めに取らないと(例えばセンサーカーブNo.12)音程が安定しなくて、そうするとリップビブラートの滑らかさがなんとなく不足している感覚があったためです。ですのでフラットポイントをできるだけ小さくしつつ、全体のベンド幅を狭めて音程の安定化を図ろうと。幸いMWiCはEWIやNuRAD同様の操作性の良い親指ベンドセンサーもついているので、全音幅のベンドが欲しいなら親指ベンドでやれば良いかなと。あれこれいじって結局ベンドセンサーはリリコン的設定になったというわけです。

自分の現在の設定値

というわけで現在の設定のメモ書き。

ハードウェア設定

・MWiC円筒形(角型でも同じです。円筒と角型の違いはありません)
・マウスピース:YAMAHA アルトサックス4C (4CAS)
・リード:中国製の安価な無印のプラスチックリード(透明・硬さ2.5)
・マウスピースパッチ:中国製の安価なパッチ、厚み0.8mm
(記事最下部にamazonへのリンク貼りました)

外観はこんな感じ。

外観 マウスピースとリード両方にパッチを貼っています。

バルーンの差し込みの高さがかなり重要です。ストッパーをうまく活用します。バルーン高さの最適値はマウスピースの種類によって大きく変わり、リードの種類によっても多少変わるので、あくまでも参考ということで。

バルーン差し込み高さ(バルーンストッパー位置)

・パイプ上端からバルーンストッパー上部までの距離::15mm
(ちなみにパイプ全長は42mmに固定されています)

これでバルーンをストッパーの位置まで入れてマウスピースに装着するとこんな感じ。繰り返しますがこれはマウスピースがヤマハ4CASの場合で、マウスピース種類によって見た目は大きく異なります。

マウスピースとバルーン

ソフトウェア設定

08 Bite-1  https://teefonics.jp/mwic_settings/08_Bite-1
Responce:  1(Fast)
B.Compemsate:   17%
Function:   Reed Bend
BiteBendAdj:   65%
U/D Ratio:   50%
Calib.Trig:   L-Hand

10 Bite-3  https://teefonics.jp/mwic_settings/10_Bite-3
Curve: 14
FlatW:  0
Lin%:  40
Min:  10
Range:  1700

14 Key&Roller  https://teefonics.jp/mwic_settings/14_Key_Roller
Zero Roller:  Suppress

18 Misc   https://teefonics.jp/mwic_settings/18_Misc
G&B LEDs:  P.Bend

 この設定だと、ダウンリップベンド最下限が半音より少し下(PB値22)、アップ最大値が1/2半音程度(PB値78程度)になり、正規音程より高い側は噛みに対して音程が上がりにくい(U/D Ratioが100%より小さい)状態となります。Curve: 14にしてFlatWをゼロにしているので、リップビブラードがカクカクしにくくなります。ただし音程安定性との兼ね合いでLin%を100より下げて、正規音程に近い領域を広げています(リリコン実機の場合はLin%100相当と推測しますが、音程安定性を重視)。
 バルーンの位置と、Rangeを1700にするというバランスポイントが一番時間がかかったところでしょうか。Rangeが小さすぎると、次に述べるその日の吹き始めに短時間に発生するベンドセンサーのゼロ点ズレ(ドリフト)の影響が大きく、演奏しにくくなります。
 なお、上記設定でリードをつけて、噛むかわりに手でリードを限界まで強く押さえたときのセンサーの数値(10 Bite-3の画面下側に出る値)は約1300です。マウスピースやリードが変わると、バルーンの位置を上記と同じ(上端から15mm挿し込む)にしても、この値が変わりますので、異なるマウスピースを使った場合のバルーン位置の目安はリードを手で強く押したときの最大値が1300位になるように、ということになろうかと思います。

ベンドセンサーのゼロ点ズレ(ドリフト)の対処

MWiCはバイトセンサーが「空気圧センサー」である原理上、「その日の使用開始から短時間(1分〜数分程度)、センサーのゼロ点が動いてしまうという現象(以下、ドリフトと呼びます)」が避けられません。バイトによるベンドのモードがSwingモード(一般的なEWIと同じ挙動)の場合は、ゼロ点が動いても実質演奏に影響は無いのですが、Reed Bendモードだと演奏に影響が出てきます。

Reed Bendモードでのドリフトの影響
・吹いていると、徐々にリップダウンベンドが設定値まで下がらなくなる(前述設定の場合PB最低値が22だったが、これが30以上まで上がる)
・正規音程にするための噛みの量が変わる(だんだん少なくなる)

Reed Bendモードで正しい音程で演奏するためには、噛みの強さ(身体のコントロール)と音程の変化を体感として一致させるトレーニングが必要なわけですがドリフトが起こるとこれがズレてしまって演奏しにくいわけです。
ドリフトは演奏中のバルーン内圧が吹く前より高くなってしまうことにより発生します。次の3つの原因によるものです。
1. 気圧の変化
2. 温度による影響(例:寒い場所にあったMWiCを吹き始めると息でバルーン内部が温まり内圧が高まる)
3. 演奏中は吹奏によりバルーン内に対して外側のほうが圧力が高くなるため、バルーンとパイプの界面等からわずかに息が入りバルーン内圧が高まる

気圧や気温は対策のしようが無いのですが、安定性向上のためには少なくとも吹き始めの内圧は外圧と同じにしておいたほうが良い良いということで、ハードウェア的には「リリースバルブ」の装備が対策されました。
詳細公式リリース↓
https://teefonics.jp/mwic_introduction/mwic_technology#bite_sensor_valve

3.はシール性を高めるなど改善は試みたのですが効果が無く、「バイトセンサーのRangeの設定値を高くする」ことで実質的に問題ないレベルにすることが最も効果的でした。

ドリフト影響を問題ないレベルにするための設定

これを理由として自分の設定値では前述の通り、

・パイプ上端からバルーンストッパー上部までの距離:15mm
・10 Bite-3のRange :1700
 (どちらも出荷時設定よりはバルーン出し気味、Range大きめの設定)

となっています。ドリフトは避けられないが、ドリフトの変化量に対しRangeを大きくすることでドリフトの影響量を小さくするということです。
Range値が1000以下だとかなりドリフトの影響が出てしまうと思います。Rangeが大きいほどドリフト影響は小さいのですが、Rangeを高くする=バルーンをかなり出すということになるので、マウスピース形状との兼ね合いや、マウスピースとリードの隙間から漏れてしまう息の量との兼ね合いで最適ポイントが決まると思います。

ドリフト影響を問題ないレベルにするための運用

この設定値にしてもなお実際には、「その日の吹き始めの最初、または数時間放置したあとの最初」においては、若干のドリフトが発生します。ただしドリフトは吹いていくに従って小さくなってどこかで安定します(吹くに従ってバルーン内圧と外圧のバランスがとれてきて定常化する)。体感的には「吹きはじめの最初の最初の1〜2フレーズ」は気になる影響が出ますが、その後はそんなに問題になりません。これを利用して、実際の「運用」を工夫して問題を無くしています。現在の自分の実際の運用としては

1.その日に使い始める前に1回リリースバルブを押す(気圧の変化などの影響を一旦無くして、ニュートラルな状態にする)

2.実際に本番として音を出す前に、「強く息を吹き込みながら、リードを強めに何回か噛む動作を繰り返す」操作を何回か行う(14 Key&RollerのZero Roller:  Suppressにしていれば、オクターブローラーに触れなければ吹いても音が出ないので、この状態で息を入れてなるべく定常化させる)

3. それでも多少ドリフトの影響が残ることもあるので、最初のうちは08 Bite-01で設定した「Calib.Trig:   L-Hand」=左手を全てキーから離すとセンサーをリセット(ドリフトしてしまったぶんをゼロにもどす)をマメに行うことを心がける

という運用を行うことで、演奏に問題なくなりました。ちょっと面倒ではありますが、生の管楽器でも吹く前にリードを濡らしたり、寒い時期は息を入れて楽器を温めたりという準備が必要でもあるので、それと同じと思えば・・・・大した手間では無い、、、ですかね。これなんと呼びましょうかね、暖機運転とかアイドリングとか言えばわかりやすいでしょうかね・・・

吹奏例

その1

上述の設定で吹いてみました。音源はArturia Pigments 5(ソフトシンセ)です。

その2

2023年11月26日に録ったものでこの時はリリコン寄り設定を試し始めたときで上述の設定とはちょっとだけ異なっていましてReed Bendモードで
 Curve:14, FlatW: 1, Lin%: 50
 BiteBendAdj: 80%
 U/D Ratio: 25%
 Min.: 10,   Range: 1800
の設定です。
現在の上述の設定はこれよりさらに音程安定性重視の設定になっていますが、演奏としては同じような演奏になるかなと思います。

以上、自分のためのメモですが参考になるとしてもMWiCでReedBendを選択している方のさらに一部の方が対象というニッチ記事でございました!


参考までマウスピース/リード/パッチのamazonリンク。

・マウスピース:YAMAHA アルトサックス4C

・リード:中国製の安価な無印のプラスチックリード(透明・硬さ2.5)

・マウスピースパッチ:中国製の安価なパッチ、厚み0.8mm



【ご注意】2023年7月スタートアップ企業Teefonics社より、日本発の新しいWind Midi ControllerであるMWiCの販売予約と貸出試奏受付が開始されました。私は先行してテスターをさせていただいておりましたのでその経験メモをここで共有しております。というわけで本記事の内容は単なる一人のユーザーの経験談でありTeefonics社の公式見解とは無関係です。また速報的なものですのでこれからどんどん変わっていくこともあり得ます。その点ご理解の上、参考になれば幸いです。


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