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Lyricon driverとMWiCをくらべてみる(音源:behringer NEUTRON)

behringer NEUTRONを音源として使用して音源の設定は同じままLyricon driverとMWiCを吹き比べてみたというお話です。

 Lyricon driverはご存知の通り全てアナログ回路の機器でして音程情報、息の強弱の情報、全てアナログでセンシング&CV出力されます(フルアナログ)。かたや現代のウィンドコントローラーは全てデジタルセンシングでMIDI信号で出力されます。NuRAD/NuEVIは本体からCV出力できますがこれもデジタルセンシングした信号をCV変換しているので厳密にはフルアナログではありません。で、behringer NEUTRONですが音源部分はフルアナログのシンセです。CV INだけを利用してフルアナログだけで鳴らすこともできますし、NEUTRON内部のMIDI-CV変換を利用してMIDI信号ソースだけで鳴らすこともできます(こんなことが単体でできる音源は少ない)。

Lyriconの奏法上の大きな特徴は「リップベンド」であることでリップベンドができる現代のコントローラーはRolandのAE-30, AE-20か、MWiCということになります。今回はNEUTRONを音源に使って、Lyricon driver(フルアナログコントローラー)と、リップベンドモードのMWiC(フルデジタルコントローラー)で違いがあるのか否か、実験してみました。

結果と考察

吹き比べた動画がこちらです。前半Lyricon driver、後半MWiC
(MWiC詳細:https://teefonics.jp/ )

あからさまに練習不足ですみません。実験の初期にとりあえずテスト的に記録してみた動画して本当はもっと練習してから記録したものを掲載するつもりだったのですがこのテスト記録の後すぐにLyricon driverを本来のオーナーである、よしめめ氏にお返しすることになりまして、これしか記録できませんでした。演奏はダメダメですがそこは脳内で補完していただくとして、音色の感じだけ効いて比べていただければと思います。

ちなみにもう少し練習して音色の設定も少し変えて、MWiCで演奏したものはこちらです。

どうでしょうかね?

音色の感じについて

音源はアナログ音源で、その設定は同じ(1OSCノコギリ波、ブレスでLPフィルターとVCOをコントロール。ブレス最大のときのフィルターの開きは同じになるよう調整済み)ですので、
少なくとも全く一定でブレない音程・息の量でロングトーンしたときの「音の太さ」はコントローラーの差はなく同じはずですよね。コントローラーがアナログだから・デジタルだから、という理由で「太さ」は変わらないと思います。

音の吹き始め・立ち上がりのところの音の滲み感、リップビブラートをかけたときの音の広がりや滲み感、差を感じる箇所と感じない箇所があるかと思います。滲みや広がりの大元はアタックのところの音程とブレス信号の立ち上がりやカーブ、音程が揺れたときのリバーブ(および今回使っていないけどディレイやOSC間のデチューン)による変調の具合によると思っています。

で、いわゆるLyriconっぽいというのは、リップでピッチを安定させにくい、というのが大きな要素の一つと思っていましてリップベンド機は音程を不安定にしやすいのでLyriconには似せやすいと思います。かといって全体的に音程が不安定ですと、そもそも音楽にならないですからね、今回の最初の動画の音程も結構ひどいです(お聞き苦しくてごめんなさい)。
一方EWIはピッチが安定しているのが特徴ですからLyriconっぽくやるのは結構難しいコントローラーなのだと思います。

Lyriconっぽさのもう一つの要因にはアタックのところの信号の出方(立ち上がりかたやブレスカーブ)も影響あるような気もしていますが、今回そこはあまり追求できていません。でもMWiCでもブレスカーブ設定と演奏上の奏法(息の入れ方、アタックの強さ)の練習で、今回よりもう少しLyriconっぽく演奏するのは可能かな、とは思いました。
個人的にはLyriconはLyriconだから特に意識せずともLyriconのコントローラーの特徴(個性)に従った出音になるので、Lyricon現物を使えばそこは苦労なく表現できる。けれどもメンテナンスや演奏現場の電圧や気温によるトラブル、音程の不安定さを克服するのが大変。デジタルコントローラーならLyricon表現するにはある程度のそれに寄せた設定と演奏技術の練習が必要になるけど同じ音楽表現はできて、デジタルだからメンテナンスやトラブルリスクのメリット大なので、そのほうが良いなあ、という感想です。

明確に違った点

今回Neutronを音源として使用した場合について明確にここは違うと気づいた点は、スラーで音を吹いたときの、音のつながりかたでした。
Lyricon driverでは今回、Gateは使っていないので「常にある基準の音程の音がON(鳴りっぱなし)だが、その音程と音量と音質(Filter)を、CVで無段階でコントロールしている(音量がゼロだと、ONのままだが音は聞こえない)という設定にしています。
MWiC(MIDI)の場合も同じですが、音程についてはMIDIのnote Noと、note on/offを利用しています。
この差により、MWiC(MIDI)の場合はタンギングせずスラーで吹いてもわずかに音の移り変わりに切れ目が聞こえますが、Lyriconの場合はこの切れ目がありません。MWiC(MIDI)でこの切れ目をなくすには、わずかにグライド(Neutronの設定ではPORTA TIMEノブ)をかければ良いのですが、例えばオクターブで音を移動するとわずかにポルタメントがかかった感じになってしまいますが、Lyriconの場合、切れ目が無いがオクターブ移動してもポルタメントがかからない、という挙動になりました。まぁ、わずかな差ですが、そういう差は確かにありました。外部のMIDI-CV変換モジュールを使用して音程情報もCV化した場合はどうなるかは検証できていません。

まとめ

まとめると、確かにLyricon実機であればLyriconっぽくなりますが、リップベンド機ならちょっと工夫と練習すれば実質Lyriconっぽい表現が充分できる、とあらためて思いました。
今回使ったMWiCは簡単なボタン操作だけでリップベンドモードとEWI的ビブラートのモードを切り替えられて、EWI的な運指の速さ・オクターブ操作・親指ベンド奏法も使えるので、LyriconとEWIの良いとこ取りでどちらの奏法の特徴も演奏表現に取り入れられる優れたコントローラー・楽器だと思います。

補足:実験条件

■Lyricon driver - Neutron接続
Wind 2 → ATT1 → 分岐→VCA CV & FREQ MOD Lip Down→ OSC1+2

■MWiC - Neutron接続 MIDI接続のみ
ASIIGNをAftertouchに設定、MWiCのブレスセンサからAftertouchを出力。NeutronのCVパッチは ASSIN OUT→SLEW→ATT1→分岐→VCA CV & FREQ MOD
■Neutron音色 OSC1のみ、SAW Wave LP Filter 0 Resonance 10%


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