【読書感想文】「フルーツバスケット another」

※ネタバレが嫌な方は読まないでください。

フルーツバスケットanother、読み終わりましたー!
彩葉ちゃんを最初に見たときは、透くんに似た雰囲気の女の子だなぁと思ったけど……
元ヤンでも優しくて子ども思いなお母さん(今日子さん)に恵まれた透くんに比べると、彩葉ちゃんは同じ母子家庭でもその頼みのお母さんが厄介な、今で言う「毒親」だから……対称的といえば対称的。

透くんは今日子さん仕込みの包容力に溢れた言葉がポンポン出てくる奇跡の人でしたが、その点、彩葉ちゃんはそうではないから、本当の意味で平凡な女の子というか、主人公の目線が読者に合わせられた感じを受けました。
透くん(今日子さん)みたいに酸いも甘いも噛み分けた言葉は一般的な女の子からはそうそう出てこない……。

フルバは草摩家の人々がそれぞれ重いものを抱えていて、だから、それを一つ一つ救いあげる透くんは女神のような存在感を放ってたんだけど…
フルバナは親世代ほど心の闇に呑み込まれていない草摩家の子供世代達が、かつての親世代のように苦しんでいる彩葉ちゃんに手を差し伸べる話でした。
これもフルバと対称的。
草摩の人達を助けるフルバ⇆草摩の人達から助けられるフルバナ

そして、

今日子さん→透くん→草摩家の人々→その子供世代→彩葉ちゃん

と、優しさがバトンのように受け継がれていっているんだなぁと思いました。フルバナの子供達の向こうに透くんの気配を感じたんですよね。
多分今度は彩葉ちゃんが誰かに優しさを伝えていくんだろう。

ところで今回、いかにも子供世代の話らしく親と似てる似てないの話が沢山出てきました。
登場した子供世代の子達も、親世代に似てる子、似てない子イロイロでしたが……

草摩の子達は、親に似てると言われると嬉しくなる(一部に嫌がる子もいるけど、大体は)。
でも主人公の彩葉ちゃんは、母親に似てると言われると複雑な気持ちになってしまう。
分かる……

親に似てると言われて嬉しいかどうかは、そのまま子供からの親への好感度を表してるよね。
だから、複雑な家庭環境だったり、曰く付きの親を持つ子に迂闊に「親に似てる」なんて言うと地雷になる。人によっては傷つく言葉になりうる。
私も複雑な家庭育ちですが、母子依存の人が何の疑問もなく抱きがちな「母と娘は似てるに違いない」「母と娘は分かり合えるに違いない」「母と娘は一心同体」みたいな考えそのものが、私にとっては心を深く抉ってくる鋭利な刃物です。
そのまことに無自覚なまま振るわれる刃物の痛みを、感覚を鈍らせてやりすごそうとしても、同じ人が放つ「繊細な私達と違って貴方は鈍感だから良いわね」という追い討ちの一言に逃げ道を塞がれているのが現在の天邪鬼(私)です。
鈍感なのはどっちだよ本当無神経だな!とそのたび思ってしまう。

ともかく。
親に似てると言われて嬉しいという睦生くんやはじめくんが、羨ましいと思いました。

あ!
睦生くんと言えば、志岐くんへの庇護欲! 仲間意識というのかな。
なにかと志岐くんを気にかけて、志岐くんを困らせる人は許さない、みたいな姿勢が……
親世代のいざこざを思い出して勝手に感動してました。

睦生くんの父親は由希くん、志岐くんの母親は慊人さん。
由希くんは慊人さんに長期間部屋に閉じ込められて、精神的な虐待をされていた訳なんだけど(慊人さんのお気に入りの玩具のようでした)。
その後も由希くんは十二支の呪いもあって慊人さんには逆らえず、慊人さんが現れるだけで怯えるほどトラウマになってました。
普通に考えると、睦生くんにとって慊人さんは親の仇。それも睦生くんは両親の事を手放しに「好き」と言えちゃう子なんだから、大切な父親を昔酷く虐げた相手(慊人)の子供の志岐くんなんて…それもかなり見た目が慊人さんに似てる志岐くんなんて……慊人さんと引っくるめて嫌いになっててもおかしくないだろうに、子供世代は子供世代で新しい関係を築けているのが感動しました。
そんな簡単に清算できるような過去では無いだろう。
同じような事をはじめくんと睦生くんの仲の良さを見てても思います。
父親同士が殴り合いの(由希くんが圧倒的に強かったから、殴り合いとは言わないのかな…)喧嘩をしていたとは思えない、とてもとても平和な二人です。

フルバナのテーマの一つに「親は親、子は子。親と子は別の存在」というものがあると思う。

だから子どもは親に囚われず、自分で新しい関係を築いていける。
それを実現してる子ども世代達の姿が、とても良かったです。

あと「許せないと思う人を無理に許そうとしなくていい」「酷い性格は変わらない人は死ぬまで変わらない」とか。

その価値観が、私にはたまらなく優しく感じました。
キャラ別に感想をまた書きたいなぁ。



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