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進化するイカと息子 - あるいは入手後1ヶ月陽の目を見ない僕らのamiiboについて

この文章は「スプラトゥーン Advent Calendar 2015」のための記事です。

これは6歳になる僕の息子の話である。

彼がある日「このゲームがほしい」と言いながら今では見慣れたイカのアイコンを僕に見せてくれたのは今年の春のことだった。それからSplatoonなるゲームの名前を知り、デモ動画を見つけ、そしてゲーム好きの友人の話を聞き、そして発売時のTwitterの狂騒…子どもに買ってあげる名目でその実親が一番ワクワクしながらダウンロード版を購入したのは、ガチマッチがお目見えした、発売後間もない頃だった。

僕はさっそくヒーローモードをクリアし、数日に一度のバトルを楽しんでいた。息子は購入当時5歳、iPadなどのタッチパネルでのゲームはまだしも、スーパーマリオもロクにできない、コントローラーに慣れぬゲーム初心者であった。

息子がSplatoonをやっている横で、僕は大人気なくも「下手やのう」「その行動意味が分からんぞ」「あーなんでわざわざボムに突っ込む」などと心の中を隠さずつぶやいていた。ヒーローモードではすぐに行き詰まり「パパ代わりにやって」と頼まれたが「そんなことをしても上手くはならん、自分で考えてできるようになれ」とつっぱねた。彼はヒーローモードをあきらめ、頬を膨らませながらも黙々とウデマエC-のガチマッチをやっていた。

そのうちに私は仕事が忙しくなり、数ヶ月Splatoonから遠ざかることになる。その数ヶ月の間、息子は毎日6時に誰よりも早く起きてずっとガチマッチをやっていた。1日に1時間、7日で7時間、徐々に彼のウデマエは上がっていき、もうB-を伺うようになっていた。

ある休日「そろそろタコツボバレー(ヒーローモード)をもう一度やってみなよ、今ならできる」と彼に言ってみた。思った通り、もうC+で立派に戦えるようになっていた彼は、ラスボスのタコワサ将軍をのぞくすべてのステージを難なくクリアできるようになっていた(なお現在は独力でラスボスも倒している)。

そんな数ヶ月のうちにSplatoonは凄まじい勢いで進化していく。繰り返されるアップデート。新しいブキやギア、魅力的なステージたち、そして毎回お題に驚かされるフェス…。1ヶ月も間もあけてログインすると、シオカラニュースがアップデート情報で埋まってなかなか終わらない。

その頃私はウデマエB-にいたが、しばらくやっていない間にプレイヤーのレベルの平均は実感として上がっていた。私のウデマエはB-で頭打ちとなり、現在に至るまでB以上には上がっていない。そして息子は今、私よりも上、Bの戦場で毎日戦っている。

彼は間違いなく私よりも上手くなっていた。エイムの速度が私よりはるかに速い。また劣勢にあっても諦めず、背後にぴったりついた相手に振り向きざま照準を向けて勝ちを拾うタフな場面や、3人もの相手を動き回りながら翻弄し、まとめてボムで沈める場面も見かけた。状況判断など戦略的なことはまだまだ弱いが、局地戦なら間違いなく彼のほうが強い。つい数ヶ月前までコントローラーの操作もおぼつかなかった息子が、狭い塀の上面をイカダッシュで駆け抜ける様を見て僕は目を細めた。

「下手やなあ」「横から敵が来てるのになんで気づかへんの」今は私が息子にそう言われるようになった。正直悔しい。頭から湯気が出るほどに悔しい。妻が「お父さんにそんなこと言わんの」とたしなめたが、僕は「かまへん」と言った。言われたことを言い返す権利が彼にはある。Splatoonをしてるとき、見てるとき、私たちはもう同じゲーマーなのだから。

一家で出かける時、車の中でかけるのは大体「Splatune(10月発売のサントラ)」である。家族の誰もが同じく親しんだ音楽がある、これはとても素敵なことだ。息子はもう「シオカラ節」だって「ハイカラシンカ」だって歌える。

品薄だったAmiibo3種は11月の中旬に手に入れたが、まだ使っていない。そう、息子はサンタクロースからのプレゼントにSplatoonのAmiiboを希望していたからだ。これは私たちの手からではなく、サンタのおじさんを介して渡してもらわないといけない。そんなわけで入手後1ヶ月が経とうとしている僕らのAmiiboは、サンタクロースの袋の中で息子の枕元に置かれるのを静かに待っている。

実に半年もの間、そして今も僕たち家族をワクワクさせてくれているSplatoonに感謝を表してこの文章を終わらせようと思う。マンメンミ!

スプラトゥーン Advent Calendar 2015、次回はmah_deathさんの二度目のエントリですよ。お楽しみに。

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