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Eternal Weekend Vintage4位Mono Artifact Storm徹底ガイドとマジックの勝ち方

みなさん、こんばんは。
今回のエターナルウィークエンド(以下EW)2019ヴィンテージで4位となりました十文字です。
前回EW2018優勝からの2連覇とはなりませんでしたが、以前のヴィンテージ神挑戦者決定戦の3連続トップ8よろしくEWでも連続での入賞ができたので一筆とってみました。
ヴィンテージに限らず、マジックそのものの勝ち方に悩む方へのお話も書きますので、お読みいただければ幸いです。

目次
1、自己紹介
2、Mono Artifact Storm
3、現ヴィンテージ環境
4、調整
5、出会い
6、本戦
7、プレイガイド
8、サイドボードガイド
9、ヴィンテージの勝ち方
10、デッキの作り方
11、マジックの勝ち方

1、自己紹介
ヴィンテージをされておらず、誰やねんこいつって人のために自己紹介としてマジックの経歴をお話しします。知ってるよ、とか、興味ないわって人はデッキが出てくるまでスクロールしてください。笑

始まりはテンペスト〜ウルザブロック、幼少期にカジュアルに触れただけで、第7版で1度マジックをやめました。その後、時のらせんローウィンブロックで復帰。競技マジックにも挑み始めるものの、参加したグランプリにおいて、ここを勝てば初日抜け、もしくは、ここを勝てばIDできて初日抜け(当時は初日抜けが7-1-1とかでした)というバブルマッチに10回挑むも全て負け、10回連続でグランプリ初日ポンするような、まぁ贔屓目にみても私はマジックの才能があるタイプではありません。

そんな私の転機が2011年、メインに躁の蛮人を4枚積んだ赤単(当時の赤単は白単鋼が鬼門であり、赤単同系には燃え上がる憤怒の祭殿が入っているなど不利〜五分マッチに干渉するキーカードだった)を使用して日本選手権で9位オポ落ちすると、その年の世界選手権で36位に入賞(なお、当時の次のプロツアーの権利獲得である25位内にまたしてもオポ落ち)しました。
その後は2016年のグランプリ東京で13勝2敗からのプロツアー異界月で60位には入るものの、それ以外鳴かず飛ばずで競技マジックを引退。

そんな私が前回のEW2018で優勝、今回は4位と連続で入賞できたヴィンテージにおけるコツやデッキの調整方法、さらにはヴィンテージに限らず、才能に恵まれないなりにもう少しマジックで勝ちたい、もう一歩進みたい、そんな人の手助けになれそうなことを書きます。

2、Mono Artifact Storm
では、今回使用したデッキがこちら。

MUD・・・ではなく、Mono Artifact Stormです!
このデッキの柱は2つ。

Time Vault+通電式キーによる2枚コンボを1枚でもたらす大いなる創造者、カーン。

そして、ライブラリーを掘り進めつつ、師範の占い独楽+鋳造所の検査官or覚醒の兜を揃えれば無限ドローをもたらす神秘の炉。
どちらも揃えれば即勝ちながら実質1枚コンボであり、1ターン目からこの2柱を唱えることに特化した茶単ストームなのです。

もともと、茶単といえばMUDというマナ嵌めを主軸にしたアーティファクトアグロ〜ミッドレンジでした。
その固定観念は強く、最新セットM20において神秘の炉という強烈なカードを得たにも関わらず、MOや大会の上位デッキはそれとはアンチシナジーをもたらす抵抗の宝球や、クリーチャーを生成するウルザの後継者、カーン等のぼんやりしたカードが満載。
墓荒らしに幾度も王座は譲りながらも、そんな構成の神秘の炉MUDが大会の上位に常におり、神秘の炉のポテンシャルは十分であることがひしひしと伝わってきます。

そこでこのデッキを自分流にアレンジした上で、改めて環境のデッキ達と戦えるかを測ってみます。

3、現ヴィンテージ環境
と、その前に現ヴィンテージ環境を整理してみましょう。

いの1番に考えるべきは、今回のEWでも優勝したドレッジ。ロンドンマリガンの恩恵を1番に受けており、初手に必須のBazaar of Baghdadを引けないということがほぼなくなったこと、そしてモダンホライゾンにおいて活性の力という墓地対策の対策としてこれ以上ないものを得たこと、それにより全てのスペルをマナを必要としないものにすることができる安定性から一躍ヴィンテージ1番のパワーデッキとなり、ドレッジと戦えないデッキは現環境やっていけないという環境定義ともなりました。

2番目に意識すべきは、カーンフォージと呼称される神秘の炉MUD。日本ではサバイバルが流行っており、活性の力と溜め込み屋のアウフの採用枚数が多いことから下火ですが、アメリカやMagic Onlineでは似たレシピが上位に固まっています。1番手のドレッジに対してほぼ全ての妨害をシャットアウトできる防御の光網の採用が増えており、盤面を無視できる勝ち筋の存在から微有利がつくことが大きそうです。

3番目といいつつ派生も含め数だけなら1番多いBUG墓荒らし。ドレッジに対して効果的な死儀礼のシャーマンや不毛の大地、MUDに効果的な活性の力や溜め込み屋のアウフを無理なくつめることから、それらへのキラーデッキとして台頭してきました。アンチカードが多く、噛み合わないキラーカードやフェアデッキ対決で何するかよくわからないカードばかりなこともままあり、デッキパワーそのものがズバ抜けて高いわけではないものの、上位2つにメインから戦えることから、よく優勝をかっさらっていく様子。

4番手に位置するのは各種ストーム。以前は逆説的な結果型が主流でしたが、ポンポン撃たれる活性の力に加えて、ドレッジ封殺用なのかちらほら見られるアゾリウスの造反者、ラヴィニアの存在も向かい風となって数を減らしていました。代わりに復権したのが暗黒の儀式を用いた昔懐かしのTPS。ボーラスの城塞という相方を得たことによって修繕1枚からそのまま勝ちに行けるようになったことも大きいようです。

概ね安定して上位入賞していたデッキはこの4つであり、そこに日本限定で勝ち上がるフェアキラーのサバイバルやクリチャーメタのオース、更にMagic Onlineでは墓荒らしミラーを有利にするためにティムールと化したBUGや、赤緑の血染めの月ストンピィのようなデッキも姿を見せていました。

主要なデッキを一通り回してみると、墓地を活用するドレッジとアーティファクトを活用するMUDがやはりデッキパワーは飛び抜けているように感じます。そのどちらもが驚異的な速度で襲ってくることから、双方へは噛み合わない対策を求められることが、現在のヴィンテージ環境で受け手に回ることを困難にしていました。墓荒らしのようにメインサイドから対策カードの嵐で徹底的に負けないよう引きこもる以外は、4番手につけるストームのように、速度勝負を仕掛ける方がドレッジやカーンフォージを見据えた戦い方としては無難なことが伺えます。

特に、ヴィンテージというゲームは先手後手が非常に大きく、メインを確定で落とすとなると、3本目に迎える後手を乗り越えることが非常に難しいため、墓荒らし以外の青いフェアデッキは軒並みドレッジと戦える墓荒らしに乗り換えていっている様子。
それを顕著に表すのが、墓荒らしが墓荒らし同型に強いプレインズウォーカーの枚数を日に日に増やしていること。特に、色を足して定業を抜き、安定性を落としてまでレンと六番を採用した墓荒らしが増えていることから、みながどことどこを意識しているのかは想像に難くありません。

サイドボードにThe Tabernacle at Pendrell Valeを見ることが日に日に増えていることからもそれは明らかで。そして、その結果としてガードが下がっていたのは対アーティファクト。
それもそのはず、活性の力の枚数は減るどころかドレッジと墓荒らしの両者に目一杯積まれており、ウルザの後継者、カーンが必死に出したトークンや抵抗の宝球といったカードは殆ど何もすることなくパリンパリンしており、それだけで従来のMUDは十分に苦戦を強いられていたからです。

当然MUD側もやられてばかりではいられず、防御の光網を4枚フル採用に踏み切った結果、さらに環境はどっちが先に勝てるかよーいどん、になったわけです。
それならば、と、よーいどんをまずはとことん突き詰めることにします。

4、調整
当初のレシピがこちら。

神秘の炉を置いたらそのまま勝てるように繋がることを優先していました。
ネットレシピからは、ウルザの後継者、カーンや歩行バリスタといったクリーチャーに関するもの、爆発域や不毛の大地といった1マナしか出ない土地を抜いて、血清の粉末やオパールのモックス、多用途の鍵を4枚投入し、土地を裏切り者の都等の複数マナ出る土地だけにしました。

早速これで1人回しや他のデッキと回してみることに。

対ドレッジ
速度勝負。防御の光網が強く、ドレッジ側が先手をとれないと手札の整理もままならないことから、先手有利が大きいものの、マッチを通してこちらが有利。

対墓荒らし
メインは相手の妨害札が少なく大体取れるものの、サイド後にひたすら妨害マシマシで引きこもられると厳しい。メイン有利だが、マッチを通すと不利。

対ストーム
速度勝負。先手ゲーではあるものの、巷のストームのレシピなら初手に修繕がないと1ターン目から仕掛けるのが難しいことから有利だと思っていた。ただし修繕を撃たれた場合ほぼ負けなことから、先手後手が大きい。

対サバイバル、オース
どちらもキルターンがこちらより明確に遅く、墓荒らしからForce of Willや溜め込み屋のアウフが抜けてぼんやりしたカードが増え、ガードが下がった状態という印象。マッチを通してゲームが楽。かなり有利。

速度勝負となるマッチが非常に多く、速度と安定性の向上がデッキパワーの上昇に繋がると確信しました。

ただ、墓荒らしとのサイドボードプランができなければ厳しいようにも感じます。二種のForceシリーズと溜め込み屋のアウフという明確なアンチカード、こちらになんでも触れる暗殺者の戦利品とそれらを探すドローソース、そしてコンバットでどうこうしようにも立ち塞がるタルモゴイフ。最後は不毛の大地で蓋をされる、と、サイド後の墓荒らしはこちらに最適化してくることから、それを打倒することは非常に困難でした。唯一の救いは、日本ではレンと六番というこのデッキに対しては誰やねんこいつがとられるようになったお陰で、色が足され、定業が抜けたことで不安定性も上がっていたことです。(定業によりサイドカードを探しに掘り進められることが減ったので、グダったトップ勝負ならこちら有利)

さて、己を知るには相手を知るところから、墓荒らしを回してみます。あれ?思ったよりカツカツ?それもそのはず、二種のForceシリーズで自分からアド損を仕掛けるのですから、攻められるほどにリソースを消耗し、手札が枯渇していきます。そのため1枚で機能不全に陥らせるサイドカードで蓋をすること、もしくは、Ancestral Recallのような強力なドローに依存している模様。

パワーカードの連打、特に出せばアドバンテージがとれるカードをプレイされると、受けきることは難しく、サイドカードによるお願い止まって戦法をするしかない、ということがわかりました。

ならば当然相手の嫌なことをしてあげれば、こちらの勝ちは近づきます。
入れるべきは、出せばアドがとれてプレッシャーになるパワーカード、相手のサイドカードを返せるカード、です

後者の、特にアウフに対抗するカードはすぐ見つかります。四肢切断、もしくは、次元の歪曲です。どちらもMishra's Workshopからは唱えることができないため、構えておけばMoxからも唱えられる四肢切断か、神秘の炉でライブラリーから唱えられる次元の歪曲か、おいおい検討でもいいかなというところ。

問題は前者のアドがとれるプレッシャー。
前者としてまず上がったのが、私が抜いていたウルザの後継者、カーン。メインにはこんな不純物と思っていましたが、泣く泣く入れてやってみることに。すると…
突き刺さる活性の力。
なにこれ?トークンを出して攻めたてようにも、プレッシャーが低く、相手に一度タルモゴイフを出す猶予を与えます。しかも、2ターンかけて出したトークンがまとめて活性の力で流されて返しに殴られて落とされる、活性の力やめてお願い、なこっちがお祈りするカードでした。はい没ー。

とはいえ、無色だけでプレイできて出せばアドバンテージとれて、相手にもプレッシャーになる、そんなカード、ないなぁ?見つからない…
そんな諦めムードの中、エターナルウィークエンド前週のバトロコ高田馬場で行われたトライアル、墓荒らしで出て実戦感触を得たいと思います。
はい、0-2。笑
オースに実物提示教育連打されたり、ミラーで相手だけ基本土地入っててこちらの暗殺者の戦利品はアド損だわ、と、墓荒らしはパワカの連打とアドバンテージゲームが厳しいということを再確認できたものの、茶単でそんなもの見当たらず途方にくれます。
しかし、その大会の上位を見渡して目にしたものは…

5、出会い

難題の予見者!!
君だー!!!
活性の力なんのそのタルモゴイフ以外では止まらないプレッシャーある4/4のスタッツ、出せばサイドカードをハンデスするアドバンテージ、え?もしかして墓荒らしに強い要素、揃ってる?
早速入れてやってみると…つえー!なんだこいつ!墓荒らし相手に普通に1人で殴りきるわ、各種サイドカード全く効かないわ、Forceで擦り減った手札を鋭角に狙い撃つわ、八面六臂の大活躍!

墓荒らしを倒しにいくからにはもういいから4枚だ!!!
また、難題の予見者を入れたことでサイドの除去を四肢切断にすることが決まります。というのもやはり次の壁は越えられないタルモゴイフ。アウフだけを狙い撃ちするなら次元の歪曲ですが、難題で押し切るゲーム展開でタルモゴイフを退かせる優位性が勝りました。

また、墓荒らしに対して常にサイドアウトしていたオパールのモックスやライオンの瞳のダイアモンド(LED)の採用に疑問が生じます。
1人回しにおいても、確かにオパールのモックスやLEDは神秘の炉からトップで捲ると嬉しいカードではあるのですが、そもそも神秘の炉が繋がるかどうかはトップからプレイしてマナに余裕があるかという問題よりも、如何に重いカードや土地を複数めくらずにさっさとコンボが揃うか、です。
それでいて、初手に引いてもほぼ貢献しないこのカード達、さよならっ。

そこで採用することとしたのが覚醒の兜。
自分のことだけを考えるなら、カーンについても神秘の炉についても貢献し、後続のプレイするカードまで考えれば実質マナが複数増えているのです。それでいて、神秘の炉+師範の占い独楽+鋳造所の検査官のコンボの水増しにもなることから、1マナ重い鋳造所の検査官よりも正直使い勝手はよかったまであります。

また、ライオンの瞳のダイアモンドの枠については、活性の力や暗殺者の戦利品を避けれる溶接の壺を採用することとしました。

6、本戦
それでは、本戦結果です。
1回戦、ドレッジ(テキストカバレージ)
×○○
2回戦、ドレッジ
○○
3回戦、赤単ストンピィ
×○×
4回戦、サバイバル(フィーチャー動画)
○○
5回戦、ジェスカイ
○×-
6回戦、墓荒らし
○○
7回戦、墓荒らし
○×○
8回戦、4C墓荒らし(フィーチャー動画)
×○○
6-1-1の19点8位通過
準々決勝、4C墓荒らし
○○
準決勝、カーンストーム
×○×

というわけで4位でした。

3回戦目については、先にカーンを出され、カーンで返したものの、忠誠値能力の起動を誤った(+で相手のカーンに攻撃すべきだった)ことから敗北しました。

5回戦のジェスカイ相手には魔力流出と石のような静寂を貼られ、罠の橋を維持しているだけの負け試合だったので、サイドにそれらを割れるカードを取らなかったのが敗因です。

準決勝は、お互いに1ターン目カーン、もしくはそれに類するハンドを常にキープしていたことから、毎ゲーム先手1ターン目で実質勝敗は常に決しており、先手後手の決定権を有する高順位で抜けられなかったことが全てでした。

と、まだまだプレイングが怪しい中での4位なのでこれ以上望むのは自分を咎めてから。

来週末に控えた日本選手権に久々に参戦してみようと思っています。

ここからはこのデッキのキープやサイドボーディング、そして、ヴィンテージで勝つためのデッキ選択や調整の仕方、自分がヴィンテージのデッキを組むにあたって重要視していることを書きます。
また、スタンダード等の他のフォーマットのデッキ調整にまで使える自分のマジックにおける考え方や手法をお伝えします。

以下有料ですが、できたら読んでくれると嬉しいです。

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