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ウィト家のつなぐものがたり #3【リレー小説】

わたしたち、ウィトゲンシュタインズが
1枚の写真をテーマに、リレー形式で紡いでいく、ものがたり。
今回は7名で1つのものがたりを完成させました。
どうぞ、お楽しみください。

私は野良猫。名前はない。
年齢はいくつだろう、猫だから数える能力がない。

でも感情はある。そして最近おもしろいと感じるものがある。

人間だ。

黒服を身にまとい忙しそうにしている人間もいれば、時間に縛られずゆったりと私を撫でてくれる人間もいる。
ある日、私は1人の少女と出会った。

『ニャ〜ゴ』

少し離れた場所から、じっと私を見つめたまま動かない。

『ニャ〜ゴ』

1歩少女の方に歩み寄る。

少女も1歩後ろへ下がる。

笑いもせず、ただただじっとこちらを見ている。

『ニャ〜ゴ』
ポカポカ陽気で眠くなった私は、隣にあるいつものベンチで丸くなる。

気持ちよく眠っていると、ふとお腹に柔らかい感触。

思わず、ゴロゴロと喉がなる。

「···ぐすっ」

うっすら目を開けてみると、先ほどの少女が俯きながら私を撫でていた。
「友達とケンカしちゃったんだ…」
少女がゆっくり話し始めた。

人間は本当に面白い。時々こうやって私に悩みを打ち明けてくる。
私に話しても何も変わらないのに。

『ニャ〜ゴ』
私は起き上がり、少女を見た。

「あっ、ハート」
少女が私を見てこう呟いた。
ハートを見ると少女の顔がパッと明るくなった。
夢中になってお腹を撫で回してくる。

「…うん、ありがとう。元気出てきた」

気持ちの整理がついたらしい。
彼女には笑顔がよく似合う。

私は何もできていないのに。
彼女が触れ続けたお腹に、温もりが残る。
「あなた、名前はなんて言うの?」

少女がそう聞いてきた。
名前はない。
そう伝えようと、

『ニャ〜ゴ』

と返す。

「そう!あなたハッピーって言うのね!
お腹がハートだし、私に元気をくれたからピッタリの名前ね!」

……人間はつくづく面白い。
「もう帰らなきゃ、またねハッピー!」少女は元気に走り去っていった。

人間とは実に面白い。ハッピーやハートとは、人間を元気にするものらしい。
また一つ、人間を知れた。

私は野良猫。名前はハッピー。

意味は分からないが、少しだけ、気に入っている。

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お読み頂きありがとうございました(o´▽`o)ノ

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