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担任外はツラいよ

 月・火曜は学校教育についてです。今回は、担任外…つまり、学級担任を離れ、主に職員室で仕事をする教師…はツラいと言う話を書きます。『ロスト・ドッグ』の感想に続く、noteオリジナル記事の第二弾で、4000文字近くあります。まぁ、「だから何なの?」と言われたら、その通りですが…。


この記事のきっかけ

 私は基本、noteでは前向きな内容の記事を書いているつもりです。愚痴めいた記事を書いても、読みたい人は少ないだろうと思うので、読んだ方が楽しくなったり、元気になったりしそうな内容を目指している訳です。
 そんな中、今回は「担任外はツラいよ」等と言う、あまり前向きではない内容です。コレを書こうと思ったのは、私と相互フォローしてくださっている雄剛先生の記事に、私がコメントを書いた事がきっかけです。

 コメントを書く時間を短縮するため、私は音声入力をしていました。それを横で聞いていた妻が、「今、述べた内容は、民間の方には通じない話が多いんじゃないかな。補足した方がイイと思う」とアドバイスしてくれたのです。「成る程」と思った私は、コメントに書いた内容を補足しようと考えました。
 それが、この記事な訳です。

小学校教師は「ショッピングモールに出店している商店の店長」

 上記の記事のコメントで私は、担任外をする上でのデメリットとして、以下の4点を列挙しました。

担任外のデメリット
①自分の教室がないので、1人になれる時間がない。
②上司の人柄によって、仕事のやりやすさに影響が出る。
③自分のやりたいペースで仕事を進める事ができない。
④信じられない位たくさんの仕事があり、残業や休日出勤が普通となる。

 妻に言わせると、少なくとも①から③は、普通の会社なら当たり前の事で、それをデメリットと感じる人はいないだろう…と言う事です。確かに、その通りかもしれません。ここには、小学校教師の仕事上の特殊性があると言えるでしょう。
 小学校教師は小学校という「組織」で働いています。だから、組織で仕事をする意識はあります。
 ただし、勤務時間の大半は自分が担任する学級で授業を行ったり、学級指導したりしています。その間は、かなりの裁量権が与えられています。そのため、「個人」の責任で仕事を進める意識も強くなります。
 これを、出来るだけ一般の方にも伝わる様に言うとすると、おそらく「ショッピングモールに出店している商店の店長」が最も近いのではないでしょうか。そのショッピングモールの一員として、モールのルールに従ったり、イベントに協力したりする必要はありますが、店の営業については自分に任されている…のですよね?
 そうだとすると、小学校の教師は極めて似ています。組織で働く感覚をもちつつも、仕事の大半は個人の責任で進める意識が強いからです。

一人になれる事の重要性

 ここからは個別に説明していきます。まず「①自分の教室がないので、1人になれる時間がない」についてです。
 小学校の学級担任をしている教師には、職員室の自席と、自分が担任する教室の2ヶ所、働く場所があります。中でも主に使うのは、自分が担任する教室です。
 職員室の自席は、子供たちが登校する前や下校後に使う事が多いです…が、あまり利用しない教師も沢山居ます。私も、その一人です。
 他の方の理由は分かりませんが、私の場合には、自分の心を調整する為に一人の時間が必要だからです。
 いずれ詳しく書きますが、日常的に子供たちと接すると言う事は、子供たちの発する剥き出しの欲望に晒され続ける…と言う事です。知らず知らずの内に、それによるストレスがたまってしまうので、心を調整する時間が必要な訳です。
 また私は、あまり信じてもらえないのですが、割と人見知りなのです。そのため、対人関係を良好に保つための心理的負担が大きいです。保安の関係上、職員室には常に人が居なくてはなりませんから、職員室で仕事をするとなると、常に誰かと一緒に仕事をする事になります。これが、かなり私にはストレスとなります。
 学級担任であれば、自分の教室に引き籠もってしまえば、自分一人きりで仕事を行う事が出来ます。これが担任外になると、自分の教室がありませんから、常に職員室で仕事をしなくてはなりません。逃げ場が無い事は、私的には、かなりキツイです。

管理職の直属になる危険性

 次に、「②上司の人柄によって、仕事のやりやすさに影響が出る」です。
 これも、縦割りの組織(例えば、部長→課長→係長→主任→ヒラ…など、関係性が明確な組織)で仕事をしている方には当たり前の話です。上司がパワハラな方なら直接的にパワハラを受けるでしょうし、上司が優秀なら仕事もし易いでしょう。
 小学校の教師は、一応、縦割りの組織っぽくなっています。校長→教頭→ヒラの関係性がありますから。
 ただ学級担任は、校長や教頭と言った管理職の「直属の部下」と言う意識は低いです。あくまでもイメージ的なものですが、「管理職から委任されて仕事をしている」意識が強いと思います。管理職も、何かトラブルでもない限り、校長室に学級担任を呼んで指導する…などの行為は行わない事が多いです。
 ところが、これが担任外になると、実質的にも意識的にも「管理職の直属の部下」となります。当然、校長室に呼ばれて指示を受けたり、指導されたりが増えます。そのため、パワハラ管理職が転勤してくると、めっちゃパワハラを受ける事になります(これ、いずれ詳しく書きます)。

自分の仕事は放課後から

 今度は、「③自分のやりたいペースで仕事を進める事ができない」です。
 もちろん、どんな仕事だって、完全に自分のペースだけで進められる事はないでしょう。それは分かります…が、小学校の担任外教師は、その部分が極端なのです。
 担任外教師の主な仕事は、学校に関わる事務的な仕事です。教育委員会に出す書類を作ったり、校内の様々な計画を立てたり…そう言う仕事が中心となります。
 ところが、これら正規の仕事に取り組めるのは、ほとんどが、子供たちが下校した後です。何故なら、子供たちが在校している時間帯は、学級担任を支える仕事をしなくてはならないからです。
 まず、子供たちの安全を守る仕事があります。玄関に立って不審者が入らないよう見張ったり、休み時間の体育館やグランドを見守ったり…などの仕事です。
 また、学級担任が休む時には、その学級に入って授業を行わなくてはなりません。例え、タブレット端末やプリントによる自習の予定だとしても、子供たちの安全を守るため、教室に入る事が必要となります。
 そして、学級でトラブルが発生した時です。関係する児童から担任が話を聞いている間、教室を監督しに入る事は多々あります。あるいは、担任の代わりに話を聞く事もあります。
 札幌の一般的な学校では、8時15分から16時45分までが、正式な勤務時間となっている事が多いです。その内、8時15分から15時30分くらいまで、ここまで書いてきた様な仕事をしなくてはなりません(もちろん、しなくてもイイ日もあります)。つまり、勤務時間内で自分の本来の仕事が出来るのは、下手すると75分間しかない日もある…訳です。

小学校でブラックなのは「担任外」

 最後は、「④信じられない位たくさんの仕事があり、残業や休日出勤が普通となる」です。これは、先程書いた③を考えれば、もう当然の結果です…が、とにかく仕事が多い事も影響しています。
 教育委員会からは、じゃんじゃん仕事が入ってきます。議会対策のアンケートもあれば、通学路の確認、校区内の児童の人数報告、行事の予定報告、行事の終了報告…多種多様です。学級担任に確認してもらわなくてはならない内容もあり、片付けるのに手間取る仕事も沢山あります。
 その他に、校内の教育課程を計画したり、PTAの対応をしたり、給食費や用紙費などの会計事務をしたり…校内の仕事も多いのです。会議を行う前には、色々と根回しする事も必要ですし、学級担任から相談を受ける事もあります。
 更に、校外に出ての会議も色々とあります。ALTの割当を決める会議だったり、幼稚園からの引き継ぎを受ける会議だったり…これらの会議も多種多様です。
 こう言った会議の際、他校の担任外と話してみると、皆さん、時間外勤務が当たり前な働き方をしています。20時や21時まで残業する方は多いですし、休日出勤して仕事を片付ける方も多いのです。因みに、私の連続出勤の最高記録は62連勤です。ラノベなら、死んで転生している事でしょう(笑えない…)。
 「小学校教師はブラックだ」と言われますが、担任外から見れば、学級担任はまだまだホワイトです。真にブラックなのは担任外と教頭でしょう。

おわりに

 以上、雄剛先生の記事に書いたコメントを補足してみました。
 担任外は、管理職になる為の大きなステップと位置付けられてきました。担任外をしながら学校を動かす事を学び、自分が管理職になった時、その経験を活かしていく訳です。
 でも、昨今、管理職を目指さない教師が増えてきました(私も、その一人です)。そのため、担任外を希望する教師も減ってきており、少なくない学校で、担任外を決める事が出来ず苦労しているようです。
 私は、担任外を3年間勤めた後、学級担任に戻る事が出来ました。正直に書きますが、戻る事が出来てホッとしています。もう絶対に、絶対、絶対、ぜ~ったいに担任外を引き受けるつもりはありません。
 その理由が、この記事に書いた内容な訳です。
 あくまでも、私個人の考えなので御批判などもあると思います。その様な方は、是非、コメントしてください。宜しく御願いします。

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