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苦手な紙版画で

 月・火曜は学校教育の話です。今回は紙版画について書きます。
 私は紙版画が苦手です。
 まず、版下を作る際に接着が甘いと、ローラーでインクを付けた時に壊れてしまうのが困ります。「しっかり糊をつけるんだよ」と指導したくらいでは、接着の甘い子が皆無になる事はありません。
 次に、画用紙を版下に使うため、最初に付けたインクの大半が版下に吸われてしまい、1枚目が薄くなりがちなのも困ります。「2枚目を刷りゃイイじゃん」と思われるでしょうが、先程も書いた通り、既に版下が壊れている事も少なくありません。リカバリーが大変なのです。
 でも、苦手でも何でも授業しなくてはなりません。
 令和5年度の指導では、以下の4点に注力しました。

   1.題材は「剣玉」に絞る。
   2.ハサミを使う。
   3.関節を可動式にする。
   4.目玉は剣玉を見させる。

 まず1です。学年で打ち合わせた結果、今回の紙版画では、動きのある上半身を作って刷る事となりました。これだけだと様々な動きが考えられ、指導する難易度が恐ろしく上がってしまいます。そこで色々考え、今回は剣玉をしている様子を全員に作らせる事としました。幸い、勤務校には30人分ほどの剣玉があったので、全員で剣玉遊びを行ってから、今回の図工に取り組む事が出来ました。
 次に2です。最近の紙版画では、手で千切った画用紙を使って、版下を作る方法が人気となっています。仕上がりが柔らかい感じになる事が、大きな要因ではないかと思います…が、この方法は大変です。前述した通り、紙版画の版下作りには「接着」と言う大きな壁があります。そこに、不器用な子が多い現代では更に大きな壁となる、「千切る」と言う活動が入るのです。版下作りに必要な時間が増えすぎると予想されたので、ここはハサミで行う事としました。
 それから3ですが、腕を上下2つのパーツにし、関節の角度を自由に決められる様にする事で2つのメリットがある…と、私は考えました。
 1つ目は、各自の個性(違い)を出しやすくなる事です。肘の角度が個々人で変化する上、左右の腕なので2本あります。完全に同じポーズになる可能性は、まぁ、ほぼ皆無と言って良いでしょう。
 2つ目は、版下が大きくなりやすい事です。最近の子供たちは、作品を小さく作ってしまう事が多いのです…が、上下2つの腕をつなげて片腕に仕上げるなら、かなり小さくなりにくいです。肘の角度とポーズの様子によっては、版画紙をはみ出す可能性だってあります。きっと、大胆で面白い作品になるでしょう。
 そして4です。目を作る時、黒目を入れなくても作品としては成立します…が、それだと剣玉に集中している感じがしません。接着が甘くて取れやすいので、正直させたくはないのですが、黒目を入れて剣玉の方を見させる事で、ぐっと迫力のある作品に仕上がります。
 こうやって頑張って指導した結果、それなりに迫力があり、割と生き生きと活動している雰囲気の作品に仕上がりました。まぁ、予想通り、インクを付けている時に壊れてしまった版下が多々ありましたが…。

取り敢えず、2枚ほど作品を紹介します。


この2枚は、かなり上手に刷る事ができた作品です。


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