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変な家と建築基準法

巷で話題の変な家。
とてもしょうもない点ですがつい突っ込んでみたくなったので
なけなしの法知識を引っ張り出してみようと思いました。
法律の専門家でもなんでもないので箸休め的記事としてお楽しみいただければ幸いです。

もしかしたら、怖さを和らげる一助になるかもしれません。


変な家については上記リンクをご参照ください。
ちょっとした怪談というか怖い話というか...…。オカルト系ではありません。
2階建て一軒家に関するミステリーです。

私が気になったのはこの変な家の2階部分です。

真ん中に子供部屋があるのですが、窓がないんです。
そこです、気になったのは。
窓がない部屋自体は違法でもなんでもないのですが。
窓がない部屋を子供部屋として使う点にイリーガルな匂いを感じたのです。

下記の条文をご覧ください。

住宅、学校、病院、診療所、寄宿舎、下宿その他これらに類する建築物で政令で定めるものの居室(居住のための居室、学校の教室、病院の病室その他これらに類するものとして政令で定めるものに限る。)には、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、五分の一から十分の一までの間において居室の種類に応じ政令で定める割合以上としなければならない。ただし、地階若しくは地下工作物内に設ける居室その他これらに類する居室又は温湿度調整を必要とする作業を行う作業室その他用途上やむを得ない居室については、この限りでない。

建築基準法28条1項

早い話が、人が生活する部屋には窓を付けろよ、というわけです。
窓のない部屋はただの物置なのです。
居室ではありません。
ちなみにトイレやお風呂は窓が無くても問題ありません。

そしてそして。

第十九条、第二十八条第一項若しくは第二項、第三十一条、第四十三条第一項、第四十四条第一項、第四十七条、第五十二条第一項、第二項若しくは第七項、第五十三条第一項若しくは第二項、第五十三条の二第一項(第五十七条の五第三項において準用する場合を含む。)、第五十四条第一項、第五十五条第一項、第五十六条第一項、第五十六条の二第一項、第五十七条の四第一項、第五十七条の五第一項、第五十九条第一項若しくは第二項、第六十条第一項若しくは第二項、第六十条の二第一項若しくは第二項、第六十条の二の二第一項から第三項まで、第六十条の三第一項若しくは第二項、第六十七条第三項若しくは第五項から第七項まで又は第六十八条第一項から第三項までの規定に違反した場合における当該建築物又は建築設備の設計者(設計図書に記載された認定建築材料等の全部又は一部として当該認定建築材料等の全部又は一部と異なる建築材料又は建築物の部分を引き渡した場合においては当該建築材料又は建築物の部分を引き渡した者、設計図書を用いないで工事を施工し、又は設計図書に従わないで工事を施工した場合(設計図書に記載された認定建築材料等と異なる建築材料又は建築物の部分を引き渡された場合において、当該建築材料又は建築物の部分を使用して工事を施工した場合を除く。)においては当該建築物又は建築設備の工事施工者)

建築基準法第101条3項

同法101条には、
窓のない部屋を建築した奴は100万円以下の罰金だぞ、と書かれています。
物置部屋としてではなく居室としてですね。

しっかしなぜ条文は一息で全てを説明するのだろう。
一般国民に法律理解させる気ないだろ。
例えばだけど「電子式金銭登録機」って何。聞いたことないよ。
誰が命名したの。中二病卒業できてないよね。
レジスターって言ってください。
答弁の時なんかはイノベーションを大事にDX化しながらコンセンサス目指してるのになぁ?

閑話休題。
まあ実際には窓のない部屋(≒物置)がどう使われているかなんて家主しか知り得ませんし適用されることなんて無いに等しいとは思いますが。
ロフトって法律上部屋じゃないけど(厳密には「小屋裏物置等」となる)
ぶっちゃけ寝室として使ってるよね、無問題だよね、理論です。

今回の変な家では、窓のない子供部屋にトイレが備え付けられています。
物置にトイレを備え付けるでしょうか。
トイレがすぐそばにある便利な部屋なら居室として使われると推測するのが妥当です。

さて設計士。
彼らは100万円以下の罰金というリスクを負いながらこんな変な家の建築を承認するのでしょうか。
相当袖の下送られたんかな。

仮に設計士が納得したとして建築士。
彼らは100万円以下の罰金というリスクを負いながらこんな変な家を建てるのでしょうか。

どこかでストップがかかるはずです。
そうじゃないならその不動産業者終わってる。

よく建築できましたねこんな変な家。
建築したのはブラックパワハラワンマン企業に違いない。
……というのが今回つっこみたくなった個所です。
コンプライアンス無視の不動産会社がのさばっているのが一番怖いポイントかもしれない。


もちろんフィクションでしょうし(であってくれ)ホラーにマジレスなんていうのは野暮かもしれません。
ただ、この記事を読んで「なんだぁ、こんな家建てられる訳ないのかぁ、フィクションかぁ~」と若干でも恐怖心を和らげられた人がいたら嬉しいです。
「急に現実ぶち込んでくんなよこれは現代日本の出来事じゃねぇんだ」勢の皆様ごめんなさい。

ゾッとした恐怖を味わえるミステリーには久々に触れました。
文面で読んでも面白いですし、動画は内容と声のギャップでまた違った趣を楽しめます。

今回引き合いにだした建築基準法はもちろん日本においてのみ適用されるルールです。他国の法律は存じ上げませんが、窓がない部屋が法に触れない国も当然あることと思います。ヨーロッパは窓税対策で窓を無くしていたくらいですし。
そういった国でなら、この変な家を見つけられるのかもしれませんね。



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